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- 2020/07/30 掲載
尾原和啓氏:「15分だけ打ち合わせ」が当たり前に、これからの仕事で起きる大変革
202X年 ぼくらの生き方・働き方 Vol.01 尾原和啓さん 後編
1970年生まれ。京都大学大学院工学研究科応用人工知能論講座修了。マッキンゼー・アン ド・カンパニーにてキャリアをスタートし、NTTドコモのiモード事業立ち上げ支援、リクルー ト、ケイ・ラボラトリー(現:KLab、取締役)、コーポレートディレクション、サイバー ド、電子金券開発、リクルート(2回目)、オプト、Google、楽天(執行役員)の事業企画、 投資、新規事業に従事。経済産業省対外通商政策委員、産業総合研究所人工知能センターア ドバイザーなどを歴任。著書に『モチベーション革命』、『アフターデジタル』(共著)、『ザ・プラットフォーム』、『どこでも誰とでも働ける―― 12の会社で学んだ“これから”の仕事と転職のルール 』『IT ビジネスの原理』『ネットビジネス進化論: 何が「成功」をもたらすのか』などがある。
前編はこちら(この記事は後編です)
「オーケストラ」ではなく「ジャズ」的に生きる
先日、独立研究者・著作者・パブリックスピーカーの山口周さんと「コロナによる変化でよかったことのひとつは『オーケストラ型』の社会から『ジャズ型』の社会に変わってきていることだ」という話をしました。これまでの世の中は「会議は週1回、この曜日に全員集まろう」とか「1人何分ずつ話そう」というように決まったことをきちんとこなすことが大切でした。それはまるでオーケストラのように、前もってしっかり準備して、きちっと実行して、また1週間準備する……というのが仕事のやり方でした。
一方、リモートが前提となった社会では「いま空いてるから15分話そうか」というように、世界中の人との距離が、隣の席の人との距離と実質同じになります。
今まではなんとなく「リアルで会わないと失礼」「わざわざ30分かけて会社まで来てくれたから、15分で打ち合わせを終わらせたら申し訳ない」という暗黙の了解がありました。往復30分とか1時間かけて先方に行っていたし、30分かけて来てくださったから「1時間は話さなくては」と思っていた。「1時間をブロックするためには再来週しか空いていないから、次の打ち合わせは2週間後に」ということも多かったでしょう。
でも、リモートでは「俺は、この人とならいつでも仕事をしたいんだ」という人同士であれば「いま空いてる? じゃあ15分だけ打ち合わせしようか」というように即興で仕事ができるのです。
ジャズはアドリブで演奏しますよね? グルーブ感を大事にして、演奏したい人がどんどんパートに入っていって、自分が黙ったほうがいいときは控える。今後は仕事もまるでジャズセッションのように進んでいくようになります。
肩書きではなく役割で見られるようになる
オーケストラ型社会は、どうしても「肩書き社会」になりがちでした。課長や部長という肩書きがきちっと決まっていて、誰が何を判断し、どう動くかが決まっていた。一方ジャズ型社会では、ドラムパートが足りないときは「俺、ドラムできる人知ってるから呼ぶよ」となります。肩書きがなくてもドラムが叩ける人間なら仕事に呼ばれる。「ちょうど、いまドラム欲しかったんだ!」というように。
今後は、肩書きではなく、役割で判断されるようになっていくでしょう。すると、知らない人に対しても「あなたは何者なの? 何を今したい人できる人なの?」というところから始まります。自分とまったく違う人と「会社名」ではなく「個人」として接するようになるのです。
オーケストラは答えがかなり見えてます。その答えをきちっと実行できるように、しっかり準備しないといけない。大きな舞台も必要です。一方ジャズは、街中でノリとグルーヴがあればできます。自分のドラムのレベルがあまり高くないならば、自分とレベルの合う仲間を見つけて、街中でセッションをすればいいわけです。
そうやって腕を磨いていくと、たまたま通りがかって演奏を聞いた人に「お前けっこう腕がいいから、うちのステージでやってみない?」と声をかけられます。そうして「わらしべ長者」のように、最終的にはブルーノートで演奏できるようになるかもしれません。ジャズ型社会はストリートジャズから始められて、上に行くまでの階段が緩やかになっているところがいいところなのです。
【次ページ】「バーベキュー社会」のすすめ
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