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  • 2022/02/07

メタバースで5年後は1人1台? XRヘッドセットの未来をクアルコムに聞いてみた

連載:根岸智幸のメタバースウォッチ

メタバース関係でビッグニュースが飛び込んできた。マイクロソフトが大手ゲーム会社のアクティビジョン・ブリザードを買収すると発表したのだ(米国時間1月18日)。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは「メタバース プラットフォームの発展においても、重要な役割を果たす」と明言した。その時計を少し戻した1月4日、マイクロソフトはもう一つ大きな動きをしていた。スマートフォン用半導体において圧倒的なシェアを持つクアルコムと、メタバースならびにARの領域で協業を発表していたのだ。今回はメタバースの実現に重要な役割を果たすクアルコムに話を聞くことができたので、XRヘッドセットの未来を予測してみよう。

執筆:根岸 智幸

執筆:根岸 智幸

1963年生まれ。Webコンサルタント、プロデューサー、編集者、ライター、エンジニア。90年代のIT雑誌を皮切りにWebクチコミサイト、SNS、電子書籍出版システム、ニュースメディアのグロースなどで、時代を先取りしてきた。

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クアルコムの発表資料を元に、筆者が独自に試算したSnapdragonシリーズのCPUとGPUの性能比予測(後ほど詳しく解説します)

なぜXRヘッドセットは普及しないのか

 メタバースにおいてXR(AR/VR/MR)ヘッドセットやグラスは必須ではない。なぜかと言えば、XRヘッドセットがまだほとんど普及していないからだ。IDCの調査によれば2021年のVR/ARヘッドセット出荷台数は約970万台だが、2021年の世界スマートフォン出荷台数は約13億2000万台(DIGITIMES Research調べ)。ヘッドセットはスマホの0.73%にしか過ぎない。

 新しいデジタル機器が普及するには、複数の要素がある。(1)ハード+ソフト+サービスを合わせた価格、(2)ソフトウェアやサービスの利便性、(3)ハードウェアの利便性、の3つが主だろう。

 現在ヘッドセット市場70%前後のシェアと言われるMeta(旧Oculus) Quest2は128GBモデルが3万円台で買える。メタバースサービスのVRChatやHorizon Worldは無料で利用できるし、ゲームの値段もコンソールゲーム機やPCよりは安い。

 ソフトウェアやサービスの利便性は、まだ発展途上だが、たとえばアドベンチャーゲームの『Half-Life:Alyx』(2020年3月発売)はゲーミングPCの接続が必要ながら、SF映画の主人公になったかのような高度な没入体験ができる。

 問題はハードウェアの利便性だ。Meta Quest2の重量は503g。グラス部分の厚みは一番薄い中央部でも5cm以上あり、長時間の利用は体力的に厳しい。バッテリーの駆動時間も実際に使っていると2時間がせいぜいだろう。

 2021年1月21日にはユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の新アトラクション『モンスターハンターワールド:アイスボーン XR』がオープンした。人気ゲーム“モンハン”の世界を実際に歩き回り、手で武器をふるってモンスター狩りを体験できる。美麗かつ詳細なグラフィックスで話題のフリーウォークスルー型VRアトラクションだ。

 しかし、これを体験するための装備は約8kgにもなる。公式映像を見るとヘッドセットはHTC社の『VIVE Pro』もしくは『VIVE Pro 2』を元にしたカスタム製品のようで、これが約1kg。背中にバックパック型PCを背負うが、VIVE Pro 2と元になったと思われるPC版ゲームから予想するとハイエンドのゲーミングノートPCが使われているはずだ。これが本体だけで約3kg。ヘッドセットとPCだけで50万円くらいになりそうだ。

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USJで体験できるVR「モンスターハンターワールド:アイスボーン XR WALK」
(出典:USJ発表資料)

 ちなみにサングラスの重さは15g~30gぐらい。スキーやスノボで使われるゴーグルの重めのもので200g台なので、XRヘッドセットも200gぐらいにはなってほしい。価格は、低価格スマホのボリュームゾーンが2万円台から6万円弱なので、ざっくり3万円台ぐらい。非常に大雑把な試算だが、体感的にこのあたりがXRヘッドセットの普及の目安ではないだろうか。USJのモンハンがXR体験のひとつの到達点だとすると、XRヘッドセットがスマートフォンと同じように世界で数億台売れるためには8kgを200gに、50万円を3万円台にする必要があるだろう。その鍵となるのが「SoC」だ。


XRヘッドセット普及の鍵を握るクアルコムのSoC

 SoCとはSystem On Chipの略で、スマートフォンやPC、ヘッドセットなどのシステムを実現するのに必要な、CPU、GPU、映像や音声の処理、通信機能、センサーの入出力処理などをひとつのチップ上に実装したものだ。

 半導体の製造プロセスの微細化、高度化によって多数のチップに分かれていた機能がたったひとつの半導体で実現可能になり、消費電力も劇的に下がった。

 クアルコムはXRヘッドセットの軽量コンパクト化と高性能化において鍵を握る重要な一社だ。同社のSoC『Snapdragon XR2 Platform』は、XR市場で高い市場占有率を誇る。

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XRヘッドセットの市場シェア。Quest2値下げとMeta社の社名変更前のデータなので、Quest2のシェアはさらに伸びている可能性がある
(出典:米Counterpoint's社によるXRヘッドセットのマーケットシェア調査より)

 市場シェア70%台のMeta Quest2に加え、そのライバルとなるコンシューマ向けヘッドセットはHTC『VIVE Focus 3』や中国の『Pico Neo 3』、2022年3月に発売予定の380gの軽量スタンドアロン5Kヘッドセット『arpara VR オールインワン』にもXR2は採用されている。

 マーケティング理論(クープマンのシェア目標値)で言えば、「独占的市場シェア」73.9%以上だが、2021年第1四半期は、Quest2 75%+Pico 4%だけでも79%を超える。さらに言えば、2016年以降、Snapdragonを採用したヘッドセットは50以上にものぼるという。XR市場におけるクアルコムの存在感は大きい。

 では、Snapdragon XR2 Platformとは、どんなSoCなのだろうか?

 前身となるSnapdragon XR1 Platformは、2018年5月に発表された世界初の「AR/VR専用SoC」だ。内蔵するCPU/GPUの性能はスマートフォン用のSnapdragon 835相当とされる。835は、Galaxy S8+など、2017年から2018年のハイエンドスマホに採用された。なお、Oculus Questの初代はXR1ではなく835を使用している。

 Snapdragon XR2 Platformは、2019年12月に発表された。5G通信に対応し、Snapdragon 835に対してCPUとGPUのパフォーマンスは倍、ビデオ帯域は4倍、AI処理は12倍。ビデオ解像度は6倍の3000×3000ドット、90Hzのリフレッシュレートと報道された。これはXR2リファレンスキットの性能で、現在のMeta Quest2は120Hzを試験的に実現しており、前述のように5Kヘッドセットも登場する。

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XR2を従来製品と比較したパフォーマンス
(出典:クアルコム2019年12月のXR2の発表資料より)

【次ページ】クアルコムが目指す「1人1台」の未来

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