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  • 2022/04/18 掲載

軒並み減収減益から1年、始まった「スーパーの逆襲」。業界トップ2社の挽回策とは

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2021年の春、中国の小売業界に激震が走った。既存の生鮮食料品スーパーの第1四半期の業績が軒並み減収減益になったのだ。その1年前の同時期はコロナ特需があったとはいえ、あまりにも悲惨な数字だった。もはや店頭販売だけのスーパーは生き残れないとも言われたが、スーパーはそのまま手をこまねいていたわけではない。中国スーパー業界1位の永輝(ヨンホイ)、2位の大潤発(RTマート)ともに反撃の手を打ち始めている。その反撃手法と勝算をひも解く。

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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既存スーパーはどのような挽回策を打ち出したのか? 写真は中国スーパー業界2位の大潤発(RTマート)が取り組む「次世代店舗」のバックヤード。詳細は後述
(出典:高鑫零售公式サイトより引用)


窮地から1年足らず。対抗策を打ち出した業界トップ2社

 2021年第1四半期に明らかになった中国既存スーパーの大幅な減収減益。もはや、店頭販売だけでは大手スーパーでも生き残っていけないと業界に激震が走った。その後も、業績が回復している兆候は見られない。

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主要スーパー各社の2021年第1四半期営業収入の前年比。比較対象となっている2020年第1四半期にコロナ特需があったとはいえ、かなり深刻な数字が並んだ
(出典:各社財務報告書より作成)


 しかし、業界1位の永輝(ヨンホイ)、2位の大潤発(RTマート)ともに、わずか1年足らずで対抗策を打ち出している。この反転攻勢の策が功を奏するかどうかはまだこれからのことになるが、このスピード感は素直に驚嘆するしかない。

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永輝超市の純利益の推移。2021年第1四半期は辛うじて黒字にしたが、第2四半期、第3四半期は連続して10億元規模の赤字を出している
(出典:永輝年度報告書より作成)

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RTマートの中国運営会社である高鑫零售(ガオシン)の純利益の推移。赤字転落はしていないが、黒字幅が急速に小さくなっている。なお、2021H1は会計年度期間が12月末までから3月末までに変更になった関係から3カ月分の業績となる
(出典:高鑫零售の財務摘要より作成)

既存スーパーに立ちはだかる強敵、4つの新業態

 既存スーパーが軒並み業績悪化したのは、ライバルがあまりにも多く登場したことによる。2016年以降、次のようなライバルが次々と登場してきた。

  1. 生鮮EC(宅配)
  2. アリババを中心とする新小売スーパー(店頭+宅配)
  3. ご近所同士でグループ購入をするECサービスの社区団購(前日注文+店舗受取)
  4. 会員制ホールセールクラブ(店頭まとめ買い)

 生鮮ECは、生鮮食料品をスマートフォンで注文すると30分で配達してくれるサービス。テンセント系の「毎日優選」(ミスフレッシュ)、独立系の「ディンドン買菜」が大手だ。消費者は実物を確かめずに買う形態ということもあり、新しいサービスが好きな若年層単身者を中心に利用されている。このような客層は、既存スーパーとは大きくは重ならないため、既存スーパーへの影響はさほど深刻ではなかった。

 しかし、2017年からアリババが展開した新小売スーパー「盒馬鮮生」(フーマフレッシュ)の登場により、既存スーパーの業績にも影響が出始めた。アリババは、スマホ決済「アリペイ」の購入履歴データの分析から、購買力の高い消費者が住む地域を割り出し、そこを選んで出店を進めた。対象となる消費者は、高収入でデジタルリテラシーも高く、店舗でも宅配でも自分の都合に合わせて生鮮食料品が購入できる新小売スーパーは受け入れられ、既存スーパーは購買力の高い消費者を奪われてしまった。

 さらにコロナ禍以降、「社区団購」というご近所同士でまとめ買いをするECサービスが急拡大した。これは、前日注文により配送量が確定するため、物流が簡素化されることで、商品を低価格で提供できることが強みだ。テック企業の参入が相次ぎ、結局、生活サービス全般を提供している美団(メイトワン)がリーダーになりそうな勢いだ。

 誰でもまとめ買いの代表者になることができ、代表者以外が注文した商品は代表者のいる拠点に配送されてくるので、そこに受け取りに行く。新型コロナの感染が拡大すると、マンションの有志で加入し、マンション事務室などに配達してもらうことが流行した。スーパーに行かなくても、マンション内の移動で食料品を手にすることが可能になったため、既存スーパーは店頭に来てくれるお客さんまで奪われてしまったのだ。

 さらに、コストコ、ウォルマート系のサムズクラブなどの会員制ホールセールクラブが大都市を中心に出店し始めている。ケース買いをすることで安くなるため、車を持っている人はまとめ買いや、ご近所とシェアをする。既存スーパーは、自動車で来て大量購入してくれるお客さんまで奪われ始めている。

 このようなライバルの登場に、既存スーパーは手をこまねいていたわけではなく、鋭敏に反応している。

【次ページ】コロナ禍ですべてが裏目に出た業界最大手「永輝」

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