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  • 2022/06/27

AIとロボットは「労働集約の食産業」を変えるか?おにぎりロボットに感動した理由とは

ロボット活用が大いに期待されている分野の一つが食品製造だ。2022年6月初頭に行われた「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」では従来よりもさらにロボット活用が押し出されていた。AIと組み合わされることでより柔軟になりつつあるロボットは、以前と比べると「頑張って使う」ものではなく、より自然に、各工程のなかに取り込まれつつあるようにも見えた。現場とメーカー、それぞれの歩み寄りがだいぶ進んできたのかもしれない。

サイエンスライター 森山 和道

サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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安川電機が出展した簡単に移設可能な食品仕様の協働ロボット

食品業界でもロボット活用は徐々に当たり前に?

 少子高齢化に伴う生産労働人口の減少、市場の多様化に伴う少量多品種・変種変量への対応、そして質の担保や一定化。もはやおなじみのフレーズだ。これらはあらゆる領域の課題だが、中でも状況が厳しいのが食品業界だ。コンビニに行くと早朝からお弁当が並んでいる。その弁当は、当然のことながらもっともっと早い時間、深夜・未明に作られ、各店舗まで届けられている。工場では衛生面も厳しく、作業の温度帯も低い。コロナ禍もあって、人手はさらに集まりにくくなりつつある。

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ユニバーサルロボットによる食品取り扱いのデモ

 この領域へのロボット活用が現場からもメーカーからも、そして国からも模索されていることは、本連載でもたびたび触れてきた。


 食の分野では各社が対象としている商圏が現場ごとに大きく異なり、それぞれに適した方法がある。設備投資にかけられる金額や想定規模もだいぶ幅がある。そもそも目指している目標も違う。一概に「こういう方法がベストだ」とは言い切れないところがある。

 単一の商品を大量に作り続ける大規模な工場では、既にさまざまな専用機が使われており、間の搬送も含めて無人化が進んでいる。一方、さまざまな商品を日々異なる分量作らなければならない小規模な企業では、まだまだ人海戦術による製造が続いている。専用機と専用機の間を繋ぐ作業を行っている人も多い。だが食品サービス業の欠員率は他の業種に比べて高い。

 そんな状況のなか、ロボットを含む自動機械に期待されていることは何だろうか。2022年6月7日から10日の会期で東京ビッグサイトにて食品分野における自動化・省人化技術が集められた「FOOMA JAPAN 2022(国際食品工業展)」が行われた。出展社数は過去最多の874社。今回はスタートアップゾーンが新設した。またロボットやAIを集めたエリアもあり、ファナック、安川電機やデンソーウェーブ、ユニバーサルロボットなどロボットメーカーもブースを構えて出展していた。


 食品分野でもロボットの活用は10年以上前から模索され続けてきており、多くの関係者の努力が積み重ねられている。その成果が出ているのか、筆者の単なる主観にすぎないが、今回の「FOOMA JAPAN2022」では、多関節アームのロボット、AGV/AMRなどの移動搬送台車など各種ロボットを見かけることが増えたように感じた。ブースで人目を集めるための物珍しい機械としてではない、もっと自然に、使って当たり前のものとして出展されていたように思われた。


 また、前述の経産省の「ロボットフレンドリー」に関しては2022年3月に2つのロボットが公開され、既に一部工場で使われ始めている。ポテトサラダを盛りつけたり、弁当を盛りつけたりするロボットだ。今回もコネクテッドロボティクスとアールティから、それぞれのブースで出展されていた。



 ユーザー側もロボットを使うことへの敷居が下がり、徐々に慣れ始めているのかもしれない。食品分野には扱う対象(食品)の形状の多様さや硬さ、異物混入の抑止や機器の洗浄など独自の課題がある一方、他業種と共通した業務も存在する。材料や完成品のデパレタイズやパレタイズ、搬送、専用機へのワークの投入などだ。ロボットは、まずはこれらの工程から先進的な企業に徐々に使われ始め、他へと用途を広げつつある。トレンドはやはりAI活用を含めた新たな工夫による人手の代替だ。


業界のデファクトスタンダード設備の「すぐ横」を狙え

 最初に一つ、スタートアップの取り組みを紹介しておこう。焼き鳥用の自動串刺機で知られるコジマ技研という会社がある。同社の串刺機は業界で圧倒的なシェアを持っている。Zen-Saiは、その串刺機に食材を供給するためのロボットを開発している。今回の FOOMA JAPANでもコジマ技研ブースに出展していた。


 ロボットはカメラで肉やネギなど食材の位置・形状を認識して供給する。先端はニードル(針)で、食材を刺し、重量センサーで確認して供給することができる。

 このように、既に自動化されている工程の「すぐ横」にある、まだ自動化されていない工程を狙うのは面白く、かつ手堅い戦略だと思う。

深層学習で肉の多様性に対応、ナイフを使って豚肉処理を行うロボットセル

 肉を切る作業は刃物を使うだけに危険が伴う。鶏肉を処理する脱骨ロボット「トリダス」で知られる前川製作所が出展していた「セルダス」は、さまざまな種類の骨つき肉を1台だけで処理可能な機械だ。


 セル化された一つのシステムで豚かた、うで、もも、ロース、バラなどさまざまな品種の処理に対応する。肉は個体によってさまざまで、決まり切ったプログラムでは対応できない。セルダスは肉の塊の三次元外形画像とX線画像を取得、ディープラーニングで個別の特徴を見いだして、肉によってカットラインを変えながら処理をする。途中の工程では補正も行って処理精度を保つ。

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実際に肉をさばいている様子はビデオで紹介されていた

 セルの中ではスイス・ストーブリ製のロボットアームが3台使われており、ロボットがナイフで肉を切っていく。実際に肉を切っていく様子はビデオで紹介されていたが、ものすごいナイフさばきだ。仕事を終えると、なかでナイフを軽く研ぐ作業まで行う。処理能力は最大90本/h(平均は40秒/本)。設置スペースは少し大きいが、機械1台で人1人の作業を代替する。これを数台並べてコンベヤーで繋ぎ、人を代替し、食肉処理ラインを完全自動化しようという提案の一部分である。

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各セルが一定の範囲を担当し、複数を連結して多機能ユニットとする

 肉を扱う作業は危険が伴うだけでなく、低温環境でもある。前川製作所 モノつくり事業本部 ロボットプロダクツ部門 専任次長の海野達哉氏は「無人化できれば冷蔵も機械のなかだけで済む」と話す。ロボットアームを3台入れている理由は、より幅広くさまざまな肉に対応する今後を視野に入れているためだ。なおこのセルダスは、第1回FOOMAアワード2022「最優秀賞」を受賞した。

独自ハンドで熱々の麺類も定量計量できるマッチング計量機

 麺を一定量盛り付ける作業も、人手が使われている労働集約作業の一つだ。複数のはかりを1台に搭載して組み合わせて定量商品を作る組み合わせ計量機で知られるイシダは、「マッチング計量機」を新たに出展した。従来の計量機では扱いが難しかった麺類やひじきの煮物などを指定の重さにそろえることができる。仕組みはこうだ。商品の入ったバットを装置にセットすると、16本のハンドが商品をつかむ。そしてマッチング計量を行う。個々のハンドでつかんだ商品の重量を計測して、目標の重量になるように組み合わせパターンを計算するのだ。計量範囲は20g~500g。計算能力は最大で50回/分。

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イシダ「マッチング計量機 GCW-V-216」。独自の「ツンモリハンド」で麺類を組み合わせ計量する

 バット内に残った商品の高さはセンサーで検知して、ハンドの開き量や把持位置を調整する。また、分離網という機構があり、1本の麺が複数のハンドにまたがることがないようになっている。

 ハンドは独自形状の「ツンモリハンド」と「トングハンド」。ロボティクス研究で知られる東京工業大学 遠藤玄研究室との共同研究成果が使われている。着脱が容易で、洗浄も簡単。ハンドを変えるだけでさまざまな麺類のほか、きんぴらごぼうや切り干しだいこんにも対応できる。機械なので商品を冷ますことなく作業を行える点もメリットだ。

 ではどんな効果があるのか。人手計量のラインを自動化した場合、従来5人で毎分30パックを生産していたラインを、1人で毎分40パック生産とすることができるという。また従来の組み合わせ計量機を入れ替えた場合も工程負荷の大幅な軽減、清掃時間を1/3にすることができるとのことだ。

レタスの芯のような不可食部を取り除くロボット

 数はそうでもないが、搬送以外のソリューションが目立ったのも今回の特徴かもしれない。スタートアップのロビットは、ナッツのような小さなものの異常を検知できる画像処理を使った外観検査ソリューション「TESRAY」のほか、レタスの芯を抜くカット作業を行える「CUTR(カトル)」を出展した。

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取り除かれたレタスの芯。不可食部を自動除去

 レタスの外観から芯の位置を推定して、ロボットで芯を除去する。熟練作業員が1個7秒のところ、5秒でカットできる。どれくらい芯を抜くかは設定ができる。葉物野菜のようなものの加工にもロボットが使えるようになり始めている。


「画像ベースの触覚」で食材をそっと掴むハンド

 盛り付けプロセスも大量の人手が必要な工程の一つだ。さまざまな食材を十分な速度で扱うことは人の手にしかできないからである。FingerVisonは食材を傷つけずにつかめるロボットハンドと触覚センサーを出展。


 ハンドの指先には透明な皮膚と小さいカメラがあって、指先の変形を画像処理で検知することで、指先の力や滑り量を検知して触覚とする。これにより、さまざまな食材を扱うことができる。

 指先部分はカメラはそのままで簡単に交換することもでき、安価に実現できるという。


【次ページ】デンソーウェーブはMech-Mind社の知能カメラとの組み合わせをプッシュ

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