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  • 2019/07/22 掲載

【2019最新】食品業界のロボット活用レポ、今どんなことが可能になっているのか

森山和道の「ロボット」基礎講座

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日本食品機械工業会が開催する「2019国際食品工業展(FOOMA JAPAN 2019)」が7月9日から12日の4日間の日程で東京ビッグサイトにて行われた。筆者は、食品機械の技術製品・サービスのこの展示会に足を運び始めて10年余りになる。初めのころは自動機械こそ多かったものの、いわゆるロボット関連技術の出展はまだまだで、各ブースで訝(いぶか)しがられることも少なくなかった。だが今や「ロボット取材のために来場した」と言っても「ああ、なるほど」と返されるようになった。もはやロボット活用は当たり前となった。今回はこの展示会を改めてご紹介し、ロボット活用への期待を概観しよう。

執筆:サイエンスライター 森山 和道

執筆:サイエンスライター 森山 和道

フリーランスのサイエンスライター。1970年生。愛媛県宇和島市出身。1993年に広島大学理学部地質学科卒業。同年、NHKにディレクターとして入局。教育番組、芸能系生放送番組、ポップな科学番組等の制作に従事する。1997年8月末日退職。フリーライターになる。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。

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コネクテッドロボティクスによるホットスナック提供


食品業界でのロボットへの期待は「人との協働」

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 食品製造の現場は食品を扱うので、どうしても暑かったり寒かったりする。重量物を扱うことも多い。そして、慢性的に人手不足だ。

 2020年6月に施行される改正食品衛生法と、それに伴う国際的な衛生管理基準HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point、ハサップ)の制度化、すなわち原材料から出荷に至るまでの全工程における衛生管理・データ管理への対応義務化を背景として、ロボットと自動機械の活用は現場からも求められている。

 FOOMAの開催概要にも「エンジニアリング・ロボット・IoT」という分野が来場者ニーズに応じて今回から新設され、全体比8.9%に相当する61社が出展したとある。ロボットはまだまだ本格活用には至っていないものの、これからも徐々に、だが確実に活用の幅を広げていくと思っている。

 なぜなら、そもそも現在の食品業界は人手に頼っている部分が大きいからだ。だからこそ人手不足の影響をモロに受けているし、同時に、自動化による生産性の伸び代も大きいからである。HACCP対応のような衛生上観点からも、汚染リスクである人を使うよりも自動化のほうが良い。

 だが食品業界の現実を考えると、完全な自動化は困難であるというのも、また皆が広く同意しているところだろう。納品先の都合によって大きく変わる変種変量への対応や、工場規模などさまざまな課題、現実があるからだ。そこで近年、性能と安全性が向上しつつあるロボットに求められているのは、大規模な自動機械では対応できない部分を担っている人間の代替、そして人との協働にある。

モバイル・マニピュレーションによる人協働の時代が来る

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オムロンブース

 「FOOMA JAPAN2019」で人との協働を最もわかりやすく、かつ現実的なかたちで示していたのがオムロンブースである。提携している台湾TechMan社のビジョンシステム付きのロボットアームと、オムロンの移動台車を組み合わせた協働ロボットで、人の横で並んで弁当の検査、番重への積み込みと搬送作業を行うというデモを行っていた。

 ここまでならほかのブースでもしばしば見かけるものだが、今回オムロンは、このロボットと横に並んで作業している人間の位置を簡単に変えられるということをアピールした。食品製造現場では日によって作業負荷が異なることもあれば、作業者を十分用意できないこともある。季節商品対応のために、一時的に大量の人手が必要になるときもある。そういうときにロボットを助けに入れるというソリューション提案である。

 ロボットは基本的に据え付けで使うものだ。ほとんどのロボットがやっているのはアームを事前に指定されたとおりに動かしているだけだからである。だからちょっと動かしてしまうと何もかもうまくいかなくなるので、再度調整が必要になる。だが今回のオムロンのロボットの場合、「ランドマークナビゲーション」と呼ぶマーカーを使って位置調整を簡単に行え、再設定の手間が大幅に減らせるという。ロボットをニーズ変動に合わせて、任意のラインの任意の場所に投入することができるのだ。

 このような、作業ができるロボットアームと移動可能な台車の組み合わせでの作業は「モバイル・マニピュレーション」と呼ばれている。工場内外で今後大いに活用が期待されているモバイル・マニピュレーションだが、もともとロボットに対して単一作業よりも多能工的側縁が期待されている食品分野では、このような移動可能なロボットが求められている。ロボットの提供形態自体も、買い切りだけではなく、「RaaS(Robotics as a Service)」のような、必要なときだけロボットを導入し、そのぶんだけ支払うといった形態のほうが、適する会社もあるかもしれない。

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人協働ロボットが人と並んで、人の作業を代替する。マーカーは作業者の正面にある

肉まんもケーキも産業用ロボットで

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デンソーウェーブ。食品工場用ジャケットをつけたロボットが肉まんを掴んで移動させる

 また、デンソーウェーブは前回の展示では参考出展だったものを製品化した。アルコールや次亜塩素酸で洗浄可能な食品工場用ジャケットと、柔軟物をつかめるニッタ製ロボットハンド「SOFTmatics(ソフマティックス)」を販売する。「SOFTmatics」は駆動にエアを使った柔軟エラストマー製のハンドで、傷つけやすい肉類や、お菓子などを、はさんだりつまんだりできる。また、高速で動作可能なスカラー型ロボット「HSR」を使った袋麺包装工程の自動化をデモした(後述)。



 このほか、同社がプッシュしている卓上サイズの協働ロボットCOBOTTAと愛知工業大学とのコラボとして、フライドポテトとポップコーンを盛り付けるデモを行っていた。ちなみに前回は、ギョーザの餡(あん)を詰めていた。学生たちによる取り組みだ。このような、ちょっとした作業にもロボットが使われるようになるかもしれない。

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協働ロボットCOBOTTAを使ったポップコーン詰め

 安川電機は、食品工場用に無塗装の協働ロボット「MOTOMAN-HC10DTF」を参考出展し、ケーキのデコレーションをデモした。塗装していないので塗装剥がれによる異物混入リスクがない。清掃ももちろん可能で、拭き掃除しやすい構造となっているという。

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安川電機が参考出展した食品工場用に無塗装の協働ロボット

 このほか、小型ロボット「MotoMINI」を活用したトマトハンドリングなどもデモしていた。狭い場所でもやり方次第でロボットが活用できる時代はすでに到来している。

【次ページ】スタートアップも食品分野へ参入、千切りや食器洗浄も自動化へ?

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