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  • 2022/12/16 掲載

「リポD」が人生変えた、レッドブル創業者が“色々ゆっくり”でも大成功できたワケ

連載:企業立志伝

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2022年10月22日、レッドブル社の創業者ディートリッヒ・マテシッツ氏が亡くなりました。世界的大富豪の1人でもある同氏は、「翼を授ける」のキャッチフレーズで知られるエナジードリンク「レッドブル」を世に出した人物です。マテシッツ氏はなぜ、エナジードリンクという市場を開拓し、世界的ヒット商品を生むことができたのでしょうか? 「10年かけて大学卒業」「40歳で起業」「発売開始まで3年」など、色々とゆっくりに思える人生をたどると、その理由が見えてきました。

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

経済・経営ジャーナリスト 桑原 晃弥

1956年広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者を経てフリージャーナリストとして独立。トヨタからアップル、グーグルまで、業界を問わず幅広い取材経験を持ち、企業風土や働き方、人材育成から投資まで、鋭い論旨を展開することで定評がある。主な著書に『世界最高峰CEO 43人の問題解決術』(KADOKAWA)『難局に打ち勝った100人に学ぶ 乗り越えた人の言葉』(KADOKAWA)『ウォーレン・バフェット 巨富を生み出す7つの法則』(朝日新聞出版)『「ものづくりの現場」の名語録』(PHP文庫)『大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ』(ビジネス+IT BOOKS)などがある。

大企業立志伝 トヨタ・キヤノン・日立などの創業者に学べ (ビジネス+IT BOOKS)
・著者:桑原 晃弥
・定価:800円 (税抜)
・出版社: SBクリエイティブ
・ASIN:B07F62BVH9
・発売日:2018年7月2日

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レッドブル創業者のディートリッヒ・マテシッツ氏(左)。写真は2018年F1オーストリアグランプリで撮影されたもの
(Photo/Peter Fox/Getty Images)

10年かけて大学を卒業

 マテシッツ氏は1944年5月20日、オーストリアのシュタイアーマルク州ザンクト・マーラインで生まれています。俳優のアーノルド・シュワルツェネッガー氏と並んで最も有名なシュタイアーマルク州出身者と言われています。

 1962年にウィーン工科大学に入学、造船学を専攻しますが、しばらくして世界貿易大学(現・ウィーン経済大学)に転入、マーケティングを学んでいます。学費のほとんどは製鋼所でのアルバイトや、スキーのインストラクターをして自分で稼いでいます。そのため、授業に出る時間があまりなく、大学を卒業したのは28歳のときでした。こう振り返っています。

「経済大学では、普通は22歳で卒業します。28歳ではありません。この遅れが、その後の私の人生につきまといました。だから、40歳になってようやく独立できたのです」
(『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』p246)

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28歳で大学を卒業
(Photo/Getty Images)

ユニリーバに就職、「『いつも同じ』を望むのか」

 大学を卒業したマテシッツ氏は、世界有数の一般消費財メーカー、ユニリーバに就職。マーケティングや販売で活躍した後、子会社ブレンダックスの国際部門でマーケティング部のマネジャーとなります。

 1年のうち3~4カ月は極東を中心に世界を飛び回る生活でした。収入は満足のいくものでしたが、スケジュールに追われる日々の中でマテシッツ氏はこう考えるようになります。

「目に入るのは灰色の飛行機、灰色の背広、灰色の顔、いつも同じでした。来年も今年と同じ生活を送ることを望んでいるのか、と自問することがありました」
(『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』p24)


 やがて転機が訪れます。

きっかけは「日本の高額納税者リスト」

 1982年、マテシッツ氏は香港のホテルで手にした『ニューズウィーク』に掲載されていた「日本の高額納税者リスト」を見て衝撃を受けます。1位に載っていたのは上原正吉氏(注1)でした。

注1:『レッドブルはなぜ世界で52億本も売れるのか』には1982年の出来事と記されているが、正確には、上原正吉氏は1979年度が1位、1980年度と1981年度が2位にランクインしている。

 マテシッツ氏はソニートヨタの経営者ではなく、大正製薬という「聞いたこともない企業」の経営者がなぜこれほどの利益を上げているのかに興味を持ちます。友人にどういう人かを尋ねたところ、上原氏の会社が「リポビタンD」という栄養ドリンクをつくっていることを知り、日本はもちろんアジアなどにドリンク剤の巨大な市場があることを理解したのです。

【次ページ】栄養ドリンクに没頭、40歳で「レッドブル社」を設立

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