- 会員限定
- 2023/02/20 掲載
Web3.0研究会報告書とは? デジタル庁「肝入り組織」が目指す日本の姿
デジタル庁の「Web3.0研究会報告書」とは?
Web3.0研究会報告書とは2022年12月27日に、デジタル庁がWeb3.0推進のための環境整備に向けて組成した「Web3.0研究会」が主体となって発行した報告書だ。「Web3.0の下での新しいデジタル技術をさまざまな社会課題の解決を図るツールとするとともに、日本の経済成長につなげていく」ことを、基本的考え方とし、Web3.0の推進に向けた環境整備に必要な点をまとめている。
「Web3.0研究会」について、座長は國領 二郎氏(慶應義塾大学)、副座長を稲見 昌彦氏(東京大学)が務める。他の構成員は石井 夏生利氏(中央大学)、伊藤 穰一氏(デジタルガレージ) 、河合 祐子氏(Japan Digital Design)、殿村 桂司氏(長島・大野・常松法律事務所)、冨山 和彦氏(経営共創基盤 IGPI)、藤井 太洋氏 (小説家)、松尾 真一郎氏(ジョージタウン大学)、柳川 範之氏(東京大学大学院)である。
2022年10~12月における構成員の議論をまとめたのが「Web3.0研究会報告書」だ。
Web3.0が注目されている背景と将来の姿
Web3.0研究会では、Web3.0を「ブロックチェーンなどを基盤とする次世代のインターネットの概念」と表現している。Web3.0は、これまでのインターネットの在り方を変える点や、社会課題の解決への活用や経済成長などの可能性から注目を浴びているが、デジタル庁のWeb3.0研究会では、Web3.0が注目される背景にある「2つの変化」を挙げている。
1つ目が「ビジネスモデル」の変化だ。Web3.0により、アプリケーションレイヤーからプロトコルレイヤーに比重がシフトする。現在のGAFAのようなデータ集約的なビジネスモデルが大きな転換点を迎え、今まで集権的だったレイヤーが分散化し、別の集権的レイヤーが生まれ、その比重が大きくなる可能性がある。
2つ目が「資金・人材調達のフラット化とコーポレートガバナンスの在り方」の変化だ。Web3.0やDAO(分散型組織)により、誰もが世界中から同時に資金や優秀な人材を容易に調達することが可能となる。
DAOでは、株主などのステークホルダーに限定されずプロジェクトにコミットするコミュニティが形成される。これにより、インセンティブや富の再分配の設計ができ、多様性が確保されたフラットでイノベーションを生みやすい組織を生み出せる可能性がある。
また、Web3.0研究会では、Web3.0による将来の姿を仮説として以下の図としてまとめている。
Web3.0の進展は、「金融」「資産・取引」「組織」などの既存のサービスやツールの役割を一部技術的に補完や代替する可能性を整理している。
「金融」の場合は、既存の金融では、法定通貨(フィアット)による金融機関などから金融サービスが提供されている。これに対して、Web3.0は、暗号資産(クリプト)による発行主体のない価値変動が大きい新しい金融サービスとなるDeFi(分散型金融)が提供される。既存の金融と新しい金融が繋がり融合することで、新たな事業モデルの創造も期待される。
Web3.0における制度や規制面の課題とその対応
一方、Web3.0では、制度や規制面などの課題が山積している。ブロックチェーンを活用したサービスやツールは、以下のように、法や規制のみではコントロールが困難な領域が多い。Web3.0研究会の課題を以下の5つにまとめている。(2)自律性により、規制当局が介入してもサービス・ツールを停止できなくなる可能性がある
(3)匿名性により、規制当局による追跡可能性が失われる可能性がある
(4)耐タンパー性により、ネットワーク参加者の合意なく記録の修正や削除が不能となり、規制当局が介入しても事後補正ができなくなる可能性がある
(5)開放性により、許可なく誰でも開発可能・参加可能な環境となり、責任の所在が不明確になる
Web3.0 の世界では、テクノロジーや事業環境の変化のスピードが速い。そのため、イノベーション促進の観点から厳密に法律を執行する「ハードロー」によるコントロールの領域を明確化する必要がある。また、ソフトロー(規範)も含めて弾力的なルール形成を検討し、関係者が定期的にルールの検証や改訂を繰り返すメカニズムを作り、社会的に受け入れてもらう環境作りが重要としている。
また、Web3.0 では国境を越えた活動がベースとなる。そのため、従来の国単位の法律や多国間の条約といったアプローチではなく、グローバルで通用するルールや合意形成も必要となる。
【次ページ】Web3.0推進の環境整備に向けて、着手すべき促進策と今後の取組
関連コンテンツ
PR
PR
PR