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  • 2023/03/06 掲載

世界CEO調査でわかったCIO3つの重要課題、従業員重視、グローバル化終焉、インフレにどう対応?

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ガートナーが2022年にグローバルの企業CEOに対して実施したサーベイでは、経営トップの優先課題が大きく変化した年になった。成長を重視する姿勢は変わらないものの、やや低下傾向を示し、従来は顧客を重視してきたが、今回の調査では優先度が10位へと大幅に低下。代わりに「従業員」の優先度が2位に伸びた。グローバル化は終焉を迎え、売上高/利益拡大は緩やかになる一方で、環境への要求は高まった。さらには新たに「インフレ」という新しい課題も生まれている。2023年以降、どの課題にテクノロジーとリソースを振り向けるべきか、ガートナーのディスティングイッシュト バイス プレジデント, アドバイザリー、松本良之氏が解説する。

執筆:畑邊 康浩

執筆:畑邊 康浩

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新たに「インフレのための管理」がランク入り、2位「従業員」にも注目
(出典:Gartner(2022年11月))

世界の変化によりCEOの重点課題が変わった

 2022年は、インフレの加速や地政学上の問題など世界的な変化が起きた年だった。

 ガートナーは毎年グローバルで企業のCEOに対するサーベイを行っているが、この調査でも大きな変化が見られた。

 例年、CEOが優先順位のトップに位置づけるのは「成長」だった。しかし2022年に入って行われた最新の調査では、「成長」がトップであることは変わらないものの重要度が低下し、異なる傾向がみられるようになった。

 「従来、CEOは『顧客』を重視してきたが、それが今回の調査では優先度が10位に下がってしまった。代わりに『従業員』の優先度が2位に伸びており、重点領域に移ってきています」と松本氏は話す。

 もう1つの変化は「グローバル化」に対する見方だ。「グローバル化は何十年もの間、ほぼ同じように続いている」と考えるCEOは11%に留まり、「グローバル化は続いているが、主要国間のパワー・シフトにより変化している」と考えるCEOの割合が59%と大半を占める。ガートナーでは今の状況を「再グローバル化」と位置づけている。

 それ以外に同調査では、「利益率の向上」「売り上げの拡大」に対する期待値の低下も見受けられた半面、優先課題として「環境のサステナビリティ」を挙げるCEOの割合がここ2年ほどで急増している。

 さらに、「2023~2024年におけるCEOのビジネス優先課題」を尋ねたところ、これまでの調査ではなかった新しい項目「インフレのための管理」が9位に入っている。一方で「生産性」については、15位と比較的低い優先順位に留まっている。

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ガートナー
ディスティングイッシュト バイス プレジデント, アドバイザリー
松本良之氏
 「CEOはインフレが気になっており、新たに環境のサステナビリティにも注目している。しかし生産性は相変わらずさほど重要とは捉えていないということが分かります」と松本氏は分析する。

CEOをサポートするためにCIOが注力すべき3つの重要課題

 かつて経験したことのない異例の事態が次々と起こる中で、CEOの関心が大きく変化しつつある。動きは遅くなり、確信を持てなくなる。それによってアクションが遅くなることもあるだろう。そうした状況を受けて、CIOは何をすべきか。

 「CEOが迅速に決断できるよう支援することが、CIO・IT部門の成功」というのがガートナーの考え方だ。「CEOが求めているのは、CIOからの先を見越したテクノロジー関連のビジネスアイデアや知見です。先が見えない時代に、テクノロジーの分野から“見やすく”なるよう支援してあげることが重要になってきます」と松本氏は話す。

 そうした観点からCIOが注力すべきものとして、松本氏は重要課題を3つ挙げた。

  1. 1)アナリティクスの役割を増幅させる
  2. 2)デジタル化の方向性を変える
  3. 3)人/資源をローテーションする

アナリティクスの役割を増幅させる

 異例の事態がいくつも起き、少し先の将来すら見通しが立たない今は状況を深く「診断」しなければならない。そして、より優れた解決策を発見するためには、かつてないレベルのデータ分析が必要になる。「複雑な問題でもどうにかして分析し、CEOの決断を支援することが極めて重要です」と松本氏は強調する。

 ただ一方で、CEOのデータに対する見方は過去10年間、期待するほどには前進していない。「多すぎる情報というものはない」と考える割合が51%、「情報過多は危機的レベルに近づいている」と考える割合が49%と、だいたい半々の状況はあまり変化していないのだ。

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過去10年間で、CEOのデータに対する見方は期待するほどには前進していない
(出典:Gartner(2022年11月))
 「今までユーザー部門がデータを持つようにして、分析のためのツールや環境を整えてきてあげて、それでも10年で大きな変化がない。CEOやビジネス部門に任せるのではなく、CIOがデータ分析のオーナーシップを持つ時期かもしれない」というのがガートナーの考えだ。

 より具体的には、CIOとしてどういった支援ができるのか。松本氏は、2023~2024年にCEOが取るインフレ対策の第1位「値上げ」を例に説明した。

「『値上げ』は奥が深く、さまざまなことを考えなければいけない。価格をどの程度上げるか、価格変更の頻度をどうすべきか、セグメント別の弾力性がどう異なるか、値上げの効果はいつまで持続するのかなど、さまざまな要素を考慮せず安易に値上げしてしまうと大変なことになります」(松本氏)

 従来、プライシングは営業やマーケティング部門の長年の勘に頼る側面も小さくなかったが、インフレなど過去にあまり経験しなかった変化には対応が難しい。値上げを検討するに当たり、CIOがAIとデータサイエンスを駆使すべきだというのがガートナーの考えだ。 【次ページ】3つの軸でデジタル化の方向性を変える

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