- 会員限定
- 2023/05/31 掲載
楽天やドコモらの「共通ポイント」、加盟企業にこれから起きる「最悪な末路」とは
【連載】儲かる小売店の「つくりかた」
楽天ポイントなどの「DLP」とTポイントなどの「CLP」
共通ポイントプログラムの普及が急速に進んでいるが、中でも主要4社の共通ポイント(Tポイント、楽天ポイント、Pontaポイント、dポイント)は有名だろう。ポイントサービスの利用者に行った調査によると、日ごろ利用することの多いポイントサービスの割合は主要4社の共通ポイントがいずれも3割から7割と、高い比率を占めていた(冒頭の図)。また加盟企業についても、たとえばスーパーマーケットでの導入率で見ると、2012年は8.8%であったが、2022年には24.3%にまで上昇している(注1)。
共通ポイントのように複数企業が1つのロイヤルティ・プログラムに共同で参加し、会員となる消費者が参加企業から報酬を獲得したりできるものを、「提携型ロイヤルティ・プログラム(PLP:Partnership Loyalty Program)」と呼ぶ。このPLPには大きく2つのタイプがある。
1つはDLP(Dominant Firms’ Loyalty Program)と呼ばれる、ドミナント企業1社が管理企業として構成されるプログラムである(注2)。たとえば、日本航空や全日空が発行するマイレージのような航空会社系、楽天ポイントやWAONポイントのような流通系、dポイントのような通信会社系などのプログラムがDLPに該当する。
もう1つは、CLP(Coalition Loyalty Programs)と呼ばれる、ロイヤルティ・プログラム管理を専門とする企業が運営するプログラムである。たとえば、Tポイント、PontaポイントなどがCLPに該当する。このプログラムに加盟する企業は、基本的に主従のない同等レベルの関係となる(注2)。
共通ポイントの「良い効果」「悪い効果」
PLPの研究は、「ポイント文化」が消費者に根付いているヨーロッパで盛んに行われている(注3)。日本も同様にポイント文化は根付いているが、その割にはPLPの研究が進んでいない。そのため、本稿ではヨーロッパで行われてきた研究から、PLPの効果の特徴について紹介する。PLPの効果には、ポジティブなものとネガティブなものの両面がある。ポジティブな効果として、たとえば次のような消費者行動の特徴が見られる。
- PLPに強い思い入れを持っている会員(消費者)は、そうでない会員よりも、加盟企業への購買を積極的に行う(注4)
- 加盟企業のある1社で高い頻度で購買する会員は、それ以外の加盟企業の商品やサービスも横断的に購買する(注5)
- 加盟企業単位の実績で見るとPLPに加盟している企業は、そうでない企業よりもトライアル購買率が高い(注6)
一方、ネガティブな効果としては、たとえば以下のようなことが明らかになっている。
- 会員が、ある加盟企業で嫌な経験を受けると、他の加盟企業にもネガティブな評価として影響する(注7)
- リピート購買の観点で、PLP加盟企業とそうでない企業では差が見られない(注5)
- 購買規模の観点で、あるPLP加盟企業を利用するPLP会員とその加盟企業の単独LP会員とでは差が見られない(注8)。
たとえば、東急ストアは楽天ポイントの加盟企業であるが、東急ストアを利用している楽天ポイントの会員と、東急ポイントの会員とでは、購買規模に差が見られないということになる
これらをまとめるとPLPは、たとえば飲食店で見られるようなポイントカードといった単独のロイヤルティ・プログラムよりも会員の知覚価値や満足度が高くなる上、トライアル購買やクロス購買をより強く促す効果がある。その一方で、加盟企業1社に対してネガティブな経験があると、他の加盟企業の評価にも影響するし、加盟企業1社の実績で見ると、リピートや購入量は非加盟企業に比べて必ずしも多くなるわけではないのである。
ここでPLPに関する最新の論文を紹介したい。 【次ページ】最新論文:シナジーではなく「ある2つのこと」が起きる?
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR