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  • 2023/09/25 掲載

近年のイノベーションの共通点「バイカルチュラル人材」とは?企業が欲しがる理由と背景

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テックビジネスの新しいイノベーションはシリコンバレーからやってくる──そんな時代はスマートフォンが終わらせた。米国だけなく、中国やインド、欧州、東南アジアでもイノベーションの種が生まれる時代となり、そのような種を集めてビジネスを育てられる人が成功を勝ち取れるようになっている。近年のイノベーションをひもとくと、重要な働きをしているのが「バイカルチュラル人材」だ。

執筆:ITジャーナリスト 牧野 武文

執筆:ITジャーナリスト 牧野 武文

消費者ビジネスの視点でIT技術を論じる記事を各種メディアに発表。近年は中国のIT技術に注目をしている。著書に『Googleの正体』(マイコミ新書)、『任天堂ノスタルジー』(角川新書)など。

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近年のイノベーションの中心人物、その特徴とは?
(Photo/Shutterstock.com)

中国BATはタイムマシン経営で成功、変わるイノベーションの流れ

 1990年代から2000年代にかけて「タイムマシン経営」という言葉が注目された。米国で優れたサービスを発見したら、それを母国でコピーして改良し、サービス展開するものだ。単なるコピーではなく、母国に合わせていかにうまくフィットできるかが成功の鍵になる。

 1974年に日本に持ち込まれた米国のコンビニ「セブン-イレブン」は、日本で独自の進化を遂げ、最終的には米国法人を買収するにまで成長し、タイムマシン経営の先駆的な成功例としてよく知られている。

 2000年前後に相次いで創業された中国のビッグテック「BAT」(バイドゥ、アリババ、テンセント)の3社も、スタートはタイムマシン経営だった。

 バイドゥは、米インフォシークの検索エンジンを中国風にアレンジし、その後、米グーグルのサービス展開に学び、中国の検索広告最大手となった。アリババは米イーベイに学び、B/CtoC型EC「淘宝網」(タオバオ)をスタートさせ、オンライン小売の最大手となった。テンセントは、イスラエルのミラビリス社が開発したインスタントメッセンジャー「ICQ」を模倣して、OICQ(OpenICQ)を開発、後にSNS「QQ」として中国で広く普及し、そこから決済やゲーム、ビジネス支援などの分野に進出している。

 このようなタイムマシン経営が可能だったのは、情報の格差があったからだ。国外と国内の情報にずれがあったため、海外情報を積極的に取ることで、多くのビジネスヒントを得ることができていた。

 しかし、この状況はスマートフォンの登場により一変した。シリコンバレーの情報が欲しければ、スマホで現地のメディアをリアルタイムで読むことができ、ライブ映像で現地の状況を見ることができ、現地の人とオンライン会議をすることができる。せっかく現地に行ってもホテルから出ない人よりも、東京でスマホを使いこなす人のほうがよほど現地の情報に詳しくなることができる。それは消費者も同じで、日本ではウーバーのようなライドシェアはまだ正式営業ができていないが、多くの人が知っていて、実際に海外で利用した経験がある人も珍しくなくなっている。

 この変化が、イノベーションの流れを変えている。従来のように、シリコンバレーから各国へという一方通行ではなく、複数の場所でアイデアは生まれ、それが相互作用を起こしながら進化をするようになっている。

あのZoom誕生の裏側にもバイカルチュラル人材

 いくつか例を見ていこう。

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いまやすっかり定番のビジネスツールとなった「Zoom」誕生の裏側にもバイカルチュラル人材の活躍があった
(Photo/DANIEL CONSTANTE/Shutterstock.com)

 米シリコンバレー発のビデオ会議ツール「Zoom」(ズーム)の創業者・袁征(エリック・ヤン)氏は、中国山東省で生まれ、山東科技大学を卒業後、遠距離恋愛をした。その経験から、離れた場所にいても顔を見ながら通話ができるツールの開発を思い立った。

 ヤン氏は、技術が進んでいるシリコンバレーに行く必要があると感じたが、残念なことに英語がまったく話せない。それでも、1997年にシリコンバレーにわたりWebex(ウェベックス)に入社した。Webexはビデオ会議ツールを開発しているうえに、創業者が中国系米国人の朱敏(ジュー・ミン)氏とインド出身のスブラ・アイヤール氏であり、エンジニアの多くは中国人または中国系米国人だった。そのため、中国語しか話せなくても仕事ができたのだ。 【次ページ】Zoomが「ビデオ会議」市場を発見できた裏側

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