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  • 2023/11/16 掲載

ウーバーCEOらが驚きの行動、“現場を知る”ため変装まで? 米国で広がる「ボス潜入」

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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アップルやウーバー、スターバックスなど米国の名だたる企業のCEOが、現場の仕事をより深く理解して経営に役立てるための驚きの行動をとっている。日本企業ではあまり聞かれなくなった話だが、中には、CEOが一般従業員に「変装」して働いたりしているという。米CBSの人気リアリティー番組『アンダーカバー・ボス 社長潜入調査』(日本版は『覆面リサーチ ボス潜入』)さながらだ。本物のアンダーカバー・ボスは現場に「降臨」して何を得ているのか。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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名だたる企業のCEOがなぜ現場に立とうとするのか
(Photo/Shutterstock.com)

世界で絶大人気の「アンダーカバー・ボス」

1ページ目を1分でまとめた動画
 どのような巨大企業であれ、創業当初は経営者と社員の距離が近い。ボスと部下が同じ職場で同じ目標に向かい、共に汗を流して働く。ところが、会社が成長して従業員の数が増えるほど、社長と社員の距離は遠くなる。社長は社員の顔さえもすべて覚えられず、社員にとっても経営者は「雲の上の存在」になってしまう。

 そのようにして失われた共通体験を再びつくり上げ、CEOと社員を等しく初心に帰らせる。これが『アンダーカバー・ボス』の人気の秘密だ。英国で2009年から放映され話題になった後、米国や日本、フランスやドイツなど、地元のCEOが出演する各国版が制作され、成功を収めている。

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人気番組『アンダーカバー・ボス』のようなことが現実の企業で行われている
(出典:businesswire

 たとえば、カジュアルレストランチェーンの米ボストンマーケットを取り上げた米国版(2013年2月放送)では、実在する青年ウェイターのロニーが、自分と共に働く「レイチェル」に対して、「世の中で1番キライなのは、客だよ。めちゃくちゃ嫌いだ」と本音を吐露してしまう。

 だが、実のところ「レイチェル」は、CEOによって送り込まれたブランド担当役員のセラ・ビットーフ氏だったのだ。ビットーフ氏はロニーに自分の身分を明かした後で、「私たちの仕事は、お客さまのおかげで成り立っているの。この仕事は、本当にあなたに向いているのかしら」と諭して内省を促し、最終的には解雇した。

 ただしこのようなエピソードは例外だ。多くの放送回ではCEO自らが覆面調査し、問題があれば改善を命じるなど徹底的に指導するが、叱った後はヨーロッパ旅行など気前の良いボーナスをプレゼントし、やさしさも見せるところもウリである。時にはCEOが奇抜でおかしな変装をするため笑いを誘い、高視聴率をキープしている。

 このように『アンダーカバー・ボス』は、経営者と従業員の距離を縮めることで自社の課題を特定し、そして従業員とのコミュニケーションによって経営の初心に立ち帰る。さらには、番組で自社のイメージを高める広報効果も狙えるのだ。各国版ともリアリティーショーであるため、一部はヤラセだが、台本にはないハプニングも起こり、CEOもいろいろ苦悩して解決策を模索するのが評判の秘訣だ。

 一方、米国では“リアリティー番組”ではなく、アップルやウーバー、スターバックスなど大企業のCEOが実際に現場に出て働く“リアルな”姿が紹介され、話題になっている。

【アップルCEO】まさかの「問い合わせ対応」

 CBSは9月17日、テキサス州オースティンのキャンパスを視察するアップルのティム・クックCEOの様子をとらえたドキュメンタリーを放映した。


 この中でクック氏は、従業員と交わりながら、一緒に自撮り写真に納まるなどコミュニケーションを図った。さらに、iPhoneの買い替えを考える女性顧客からの問い合わせ電話に対し、次のように対応した。

「(現在のiPhoneより)もっと大きな画面がいいんですか。なるほど。じゃ、専門家(コールセンターの従業員)に代わりますね。お話しできて良かったです」

 この通話の後で、当時発売が間近に迫っていたiPhone 15を勧めたのかと聞かれたクックCEOは、「いや、実はしなかったんですよ」と答えた。この動画で映し出されるのは、クック氏の来訪を喜ぶ様子の従業員たちと、出しゃばらずに「専門家に代わります」と顧客に告げ、社員の職務・職域を尊重するトップの姿勢だ。現場の空気を体験し、士気を高める姿勢は素直に評価されて良いだろう。

 こうした動きはゆっくりと広がりを見せている。 【次ページ】スタバやウーバーのCEOらが「現場」に立つ思惑とは

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