- 2025/05/06 掲載
IKEAやコカ・コーラも活用、顧客心理を動かす「認知バイアス」の絶大効果
気づかないうちに、我々の認知はゆがめられている?
ここでは、「思い込みを引き起こす4つの要因」のうち、「人以外」すなわち、「モノ」について取り上げます。皆さんは気づいていないかもしれませんが、実は人は、周りにあるモノによって、かなり認知をゆがめられています。
そういった、周りにあるモノによって引き起こされる認知バイアスを紹介したいと思います。
「顧客満足度」を高める「ピークエンド効果」の使い方
ピークエンド効果は経験の中で最も感情的に強烈な瞬間とその経験の最後の瞬間が全体評価や記憶に強く影響する現象です。たとえば、映画を見ているときに、その映画の印象は何で決まるでしょうか。映画評論家などのプロの見方を別にすると、盛り上がったシーンと結末で映画の評価は決まりがちです。実際、ラストシーンの描き方だけで記憶に残っている映画や、ラストシーンが蛇足で評価を落としてしまった映画は少なくありません。
ピークエンド効果の検証では、有名な痛みを使ったカーネマンの実験があります。
AとBのふたりに2つの検査を用意しました。Aの検査は短時間ですが終了時に激痛を伴います。一方のBの検査は長時間ですが、終了時の痛みは軽度です。ピーク時の痛みは同じくらいです。さて、検査終了後に、どちらが痛みを訴えたでしょうか。
答えはAです。痛みを感じていた総時間で見れば明らかにBですが、記憶に基づく苦痛の経験にはピークと最後の痛みが強く影響することが、この実験で明らかになっています。
このバイアスを利用しているのがまさに医療で、実際に、痛みや苦痛を伴う治療や検査では最後の部分での痛みを軽減する工夫が凝らされています。そうすることで、患者に「もう二度と受けたくない」と思わせないようにして、治療や検査に対する恐怖を緩和しています。
ビジネスの分野でもカスタマーエクスペリエンス(顧客満足度)を高めるためにピークエンド効果が使われています。イベントやライブ、ショーなどで最も盛り上がるところと最後に凝った演出をしたり、サプライズを用意したりして、顧客の印象に残りやすくします。顧客にうれしい思い出や楽しい思い出として、印象づけることで満足度を高め、リピーターの獲得などにつなげています。
ピークエンド効果は「記憶に残りやすい」という意味では初頭効果と親近性効果とも関係しています。プレゼンなど人の話は最初(初頭効果)と最後(親近性効果)が記憶に残りやすい傾向があります。ですから、皆さんが何かメッセージを打ち出したいときもメッセージの最初、クライマックス、最後を意識して構成することで訴求力が高まります。
記憶の関連でもう1つ付け加えておくと、フラッシュバルブ記憶も関係しています。フラッシュバルブ記憶は強烈な体験の記憶は鮮明に残るという現象です。長時間連続する中で感情的な瞬間が強く記憶に残るピークエンド効果と似ている現象といえるでしょう。 【次ページ】実際の価値以上に高い評価を与える「IKEA(イケア)効果」
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