• 2025/11/06 掲載

「意志力が足りない」と自分を責めていました…専門家が指摘する目標達成できない真因

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「目標を達成できないのは自分の意志が弱いから」──そう思い込んでいる人は多い。しかし心理学者や依存症の専門家は、その考え方が根本的に間違っていると指摘する。原因はスマホやSNS、加工食品といった刺激物に囲まれた、急激に変化する現代社会の「環境」にあるという。では、どうすればいいのか?『全力化』を上梓した組織心理学者で著作家、起業家のベンジャミン・ハーディ氏が、意志力に頼らず目標を達成する方法を教えてくれた。
執筆:組織心理学者、著作家、起業家 ベンジャミン・ハーディ

組織心理学者、著作家、起業家 ベンジャミン・ハーディ

起業家が自社を10倍速で成長させるよう支援する研修企業Scaling.comの共同創設者。クレムソン大学大学院博士課程修了。ブログ・サービス「Medium.com」で多くのフォロワーを持ち、そのネット上のプレゼンスと影響力は、『フォーブス』『サイコロジー・トゥデイ』『フォーチュン』などで取り上げられた。心理学専門誌の電子版「サイコロジー・トゥデイ」などに寄稿中。現在、アメリカのフロリダ州で妻のローレンと7人の子どもたちとともに暮らしている。

  翻訳:松丸 さとみ

松丸 さとみ

翻訳者・ライター。学生や日系企業駐在員としてイギリスで6年強を過ごす。主な訳書に『LISTEN──知性豊かで創造力がある人になれる』『感情戦略』『FRIENDSHIP 友情のためにすることは体にも心にもいい』(いずれも日経BP)、『いつでも調子がいいカラダになる! ホルモンをととのえる本』(CEメディアハウス)、『THE FOREVER DOG 愛犬が元気に長生きするための最新科学』(U-CAN)、『「人生が充実する」時間のつかい方』(翔泳社)、『脳の外で考える 最新科学でわかった思考力を研ぎ澄ます技法』(ダイヤモンド社)などがある。

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「目標を達成できないのは自分の意志が弱いから」という考え方、根本的に間違っていた
(Photo/Shutterstock.com)

「目標達成できない原因は自分」はまったくの見当違い


 意志力など役には立たない。

 正直に答えてほしい。

 あなたはこれまで、その到達点が何であれ、もっと自分の人生をより良いものにしたいと数え切れないほどの努力をし、そして数え切れないほど、もどかしい思いで振り出しに戻ったはずだ。

 意志の力を振り絞って悪習慣を断ち切ろうとしたものの、いつものパターンに戻ってしまう。

 新年の誓いを立てたのに、2月になるころにはすべてが去年と同じ状態に元どおり。

 それまでの人生を変えてしまうほどの大きな目標を立てて取り組んでも、ふと気づくと達成にはほど遠い……そうやって何度も失敗を繰り返すと、「目標を達成できない原因は自分にある」とつい結論づけてしまうものだ。

 自分は、目標達成に必要なもの──やる気、心の強さ、そして意志力など──を持ち合わせていないのだ、と。

 もしかしたら、目標など諦めて今の生活で妥協したほうがいいのかもしれない。

 でも、その評価がまったくの見当違いだったら?

 目標を達成できないのは自分のせいではまったくないとしたら?

 誰もが経験あるであろう「ダイエット」を例に考えてみよう。

 世界中でかなり多くの人が、痩せようと努力している。

 にもかかわらず、体重はむしろ増えている。はやりのダイエット術やジム通いに労力をつぎ込んでいるのに、果たして効果は出ているだろうか?

 複数の医療専門家の予測では、2025年までに地球上の全人口の半数以上が肥満になるといわれていた。そして悲しいことに、一生懸命がんばっている人ほど、体重を減らすのに苦労している。

 世界的な肥満の問題は、「遺伝」「性格」「意志力の弱さ」「悪習慣」などさまざまな説明がつけられる。

 しかし肥満が伝染病のように蔓延しているのは、そんなことが原因ではない。

 原因は、急激に変化している「環境」にあるのだ。

スマホやコーヒーから離れられない時点で…失われている

 1800年代後半から1900年代前半にかけて、世界では産業化が進み、おかげで人々は農場を離れ都市部へと移っていった。

 ここ100年で、人は屋外で働くのではなく、「室内」で座って仕事をするようになった。

 また、ほとんどの人が、その土地で取れた食物ではなく、「加工食品」を食べるようになった。

 産業革命はたしかにものすごい環境変化ではあった。

 しかしこの変化を今のグローバルな環境へと加速させたのは、1980~1990年代に始まった情報とテクノロジー革新の時代だ。

 技術の向上は今、飛躍的なスピードで進んでいる。しかし、この環境を形作っている変化に適応できる人間は、ほとんどいない。

 多くの人が、急激な環境変化の犠牲になっている。新しいルールに則った新しい世界で自分を律することができずに、さまざまな中毒に屈しているのだ。

 「テクノロジー」中毒に加え、炭水化物や糖分を多く含む「食べ物」や「カフェイン」、「仕事」といった“刺激物”に中毒している。

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【画像付き記事全文はこちら】
スマホやコーヒー…現代人は多くの“刺激物”に中毒している
(Photo/Shutterstock.com)

 こうした「文化的には受け入れられている刺激物」同士が互いを刺激し合い、そのおかげで人は常にストレスと睡眠不足に陥っている。

 つまりほとんどの人は、そのときそのときを生きながらえようとするだけの“サバイバルモード”になっているのだ。

 依存状態が当たり前になっている──そんな自分の人生をコントロールしたいなら、その方法に意志力を選んではいけない。

 私たちの環境には障壁がありすぎる。

 依存症の専門家、アーノルド・M・ウォシュトン博士は、次のように述べている。

「依存症患者には意志力が必要だと考える人が多いが、それは真実にはほど遠い」

 サバイバルモードから抜け出したり、(文化的には受け入れられている)依存症を克服したりする鍵は、さらなる意志力を発揮することではない。

 意志力など、もうとっくに失われてしまったはずだ──朝目覚めて、スマホに夢中になった時点で。何千という選択肢を与えられた時点で。

 変わろうとして歯を食いしばりながら努力しても、効果などありはしない。これまでだってなかったはずだ。

 代わりに必要なのは、環境を自分で作り出し、それをコントロールする力だ。 【次ページ】忙しい1日が終わるころには、「無防備な裸」になってしまう
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