• 2025/08/26 掲載

30~40%もムダだった…日本企業の「肥大化システム」に潜む恐ろしい実態(2/3)

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既存プロセスにこだわる日本企業は、認識を改めるべき

 日本企業は既存の業務プロセスへのこだわりが強く、基幹システム導入などのプロジェクトにかかる費用がむだに高くついてしまうことがある。基幹システムは、意味のあるデータを集め、整理し、意思決定を補助するものであり、経営判断の高度化を実現するものだということを認識すべきである。

 つまり、ものの調達から、生産し、在庫を管理し、受注し、ものを運び、請求し、会計を計上し、決算するという業務プロセスの基本的な流れについて、自社の特別なこだわりや自社を差別化する要素がないものについては、基幹システムは「データを収集するためのもの」だと割り切るべきである。そうすることで、図表1の縦軸に当たる経営判断の高度化と、業務効率を担保する横軸とは完全に区別できる。

 現場にとっても、基幹システム導入はプロセスの標準化だといわれても、なぜそれが必要なのかを理解するのはとても難しい。基幹システム導入はデータを収集し意思決定を高度化するものであり、業務効率を高める仕組みや顧客接点の高度化、売上を拡大する仕組みは別途用意すると割り切ったほうが、投資も最低限に抑えられ、社員にとってもわかりやすい。

 業務遂行の効率化につながる自動化や補助を担う技術は日々発展しているため、柔軟に対応し、定期的に更新していけばよい。

いつの時代、どんな企業においても変わらない「事実」

 基幹システムの構築にあたっては、持ち家の新築をイメージしてほしい。床暖房や食洗器などいろいろなものをビルトインで設置して全体を設計することは、一見、非常に効率的に見えるかもしれない。ただ、それを実現するために、建築上の制約が生じ、こだわりのある間取りや室内の動線に影響し、結果としてパートナーとのもめごとが増える……といった経験をした人もいるのではないだろうか。細かい点に気を取られ過ぎると、間取りや動線といった住宅の基本がおろそかになりがちだ。

 システム構築も同様である。守るべき基本は何か、後付けで対応できることは何かを考えて優先順位を決める必要がある。企業によって異なる部分も多少はあろうが、いつの時代においても、どのような企業においても「企業活動の意思決定は、意味のあるデータによって質を高めることができる」という事実は基本的に変わることはないだろう。

 データの中身を、過去の情報、現在の意思決定に関わる情報、未来に向けた意思決定や調整のための情報として構造化する。すべてのデータを一気にそろえることは難しいため、重要度を考慮しながら、基礎となる過去・現在のデータの整備からアプローチするのが一般的だ。特に基幹システムにおいては過去・現在のデータを統計的に分析できることがまず必要であり、未来の状態を占う経営としてのアートの世界はまた別である。

 ただし、データの整備や活用をパッケージソフトの標準機能に合わせればいいと言っているわけではない。その企業にとっての意思決定ポイント、たとえば「生産数量の決定」のように製造・販売など複数部門の意思が対峙するポイントを明確にし、何が自社にとって必要なデータなのかを構想し、整理し、実装することが、企業におけるデータの整備・活用のスタンダードの作り込みなのである。

 経営層や現場の意思決定を支えるデータ構造ができていない限り、基幹システムは経営の基盤にはなりえない。単に使いにくい業務システムになり下がっていってしまう。

 よって、経営、業務マネジメント、業務実行の単位において、どのような意思決定が必要でそのために必要なデータは何かを整理して仕組み化していくことが重要なのである。 【次ページ】とある大手自動車メーカーの“革命的”システム戦略
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