- 2025/09/13 掲載
どうやって…? あの町中華やコロッケ店が「閉店地獄の商店街」でも生き残れるワケ(2/3)
『BLUE GIANT』の大ヒットを機に常連客をつかんだ店も
私はいろんなジャンルの音楽を聴くように努めていますが、ここ最近、人気が復活してきたのがジャズです。漫画『BLUE GIANT』を原作にした映画が大ヒットしたためですが、村上春樹さんなどジャズ愛好家の方々がずっとジャズの魅力をアピールしてきた影響もありました。もともとジャズは日本では1920年代に新しもの好きの間で広がり、ジャズ喫茶、ジャズが流れるバーなどを生み出しました。ただし、その後にロック、J-POPやK-POPの時代になったので、ジャズ喫茶など行った経験がない方が大半ではないでしょうか。そんな中でやってきたのが、近年のジャズブームです。
日本では野外でのジャズイベントが毎年数多く開催されています。もちろん、リスナーの数がK-POPなみとはいえません。しかし映画をきっかけにジャズを聴きたくなった方は相当に多いのです。実際に私がそうです。私は、マイルス・デイヴィスなど、ジャズの代表的なアーティストくらいは知っている程度のジャズ好きでしたが、ジャズバーに行くほどではありませんでした。しかし最近になって、生演奏を聴きに、「BLUE NOTE」(東京・南青山のジャズ・クラブ)に行きました。映画をきっかけにジャズに興味を持った人が増えたという話は、SNSや口コミでもよく見かけます。映画公開後にはSpotifyやApple Musicなどのストリーミングサービスでジャズのプレイリストの再生回数が増加しましたし、関連ワードの検索数も急上昇して驚きました。また、映画の影響でサックスを始めた人もいるとの投稿や報道もありました。
もちろん、前述したように昨今のジャズの人気の要因は映画だけではありません。でもこれまでは、ジャズに親しむためのこれといったきっかけがなかった人が多いと思うんですよね。「東京JAZZ」や「横濱 JAZZ PROMENADE」など、イベントがあれば「行ってみようかな」と感じる人は多いはずです。そして、そういった方々が積み重なってリピート客になってくれます。もちろんジャズバーでは、たとえば映画の劇中のセットリストを再現するライブなんてものも開催できるので、映画から興味を持った人が、ジャズにリアルで触れるきっかけの場所としてぴったりです。
商売においては、こうしたトレンドと人々の心理を的確にとらえることが重要です。この機にしっかりと集客をしたことで、常連客をつかむようになったジャズ喫茶もあります。このように時流をとらえてしっかりと商売に利用するのがいいでしょう。町中華の中には、店内のあらゆるところで自撮りができるように、フォトスポットを紹介したり、スマホの設置台まで置いたりしているところもあるのですから、『BLUE GIANT』をからめてジャズ喫茶が自店の魅力を宣伝するのは当然といえるでしょう。
かつて脱サラ組の強い味方だった「コロッケ店」の優位性とは
また、町中華の隣にあるかもしれない、コロッケ店はどうでしょうか。もしかすると、ずっと継続しているコロッケ店を想像できるかもしれませんね。コロッケ店は、他の飲食店よりも初期投資が少ないことで知られます。たとえば焼肉店であれば他の1.3倍ほどかかるといわれますが、コロッケ店はむしろ低く、他の1/5ほどに抑えられます。その優位性があったため、かつては定年を待つことなく店舗開業を志した人たち(いわゆる脱サラ組)がコロッケ店のフランチャイズに加盟する流れがありました。ところで、1/5というのはおおむね1,000万円。たしかに5,000万円の借金といわれたら心拍数が上がりますが、1,000万円だったらギリギリ自己資金でいけるかもしれません。
さらにコロッケ店の進出形態が興味深いのは、非常にローリスクである点です。たとえば、まずはコンビニエンスストア横の狭い敷地でやってみる、あるいはクリーニング店の隣でやってみる、などが可能です。初期の段階から不採算の店舗にならないよう場所に狙いをつけます。具体的には、人口が多く、人の流れが多い場所に特化します。もちろん読みが外れたら、さっと撤退することも一手です。
よい場所に店を構えることができたら、そこでメインとなるコロッケだけではなく、チーズ入りなどの高価なコロッケも販売することで軌道に乗せます。伸びるチーズを使ったグルメが一時期流行りましたが、“コロッケの世界”にもブームがあるので、そこにも積極的に乗っていかねばなりません。 【次ページ】「まずは生き残れ、儲けるのはそれからだ」
流通・小売業界のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR