• 2025/09/16 掲載

いつエクセルのスキルは「役立たず」になる? AIで変わる「スキル管理」の実態

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コロナ禍で急速に進んだDXにより、企業の人材スキル管理は転換点を迎えている。従来のエクセルによるアナログ手法では限界が見え、AIを活用したSkillsTech(スキルテック)が注目を集めている。変革の波は日本企業にも押し寄せているが、多くの企業が見落としている「ある重要な視点」があるという。従来システムでは答えが得られない致命的な問題とは何か。『リスキリング【人材戦略編】』を上梓した、ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事の後藤宗明氏が解説する。
執筆:ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事 後藤 宗明

ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表理事 後藤 宗明

SkyHive Technologies 日本代表。早稲田大学政治経済学部卒業後、1995年に富士銀行(現みずほ 銀行)入行。営業、マーケティング、教育研修事業を担当。2020年、10年かけて自らを「リスキリング」した経験を基に、リクルートワークス研究所にて「リスキリング~デジタル時代の人材戦略~」「リスキリングする組織」を共同執筆。2021年、日本初のリスキリングに特化した非営利団体、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを設立。2022年、AIを利用してスキル可視化を可能にするリスキリングプラットフォーム、SkyHive Technologiesの日本代表に就任。石川県加賀市「デジタルカレッジKAGA」理事、広島県「リスキリング推進検討協議会/分科会」委員、経済産業省「スキル標準化調査委員会」委員、リクルートワークス研究所 客員研究員を歴任。政府、自治体向けの政策提言および企業向けのリスキリング導入支援を行う。

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注目を集めるスキルテック、変革の波は日本企業にも押し寄せているが…
(Photo/Shutterstock.com)

コロナ禍も影響、スキルテックに注目が集まる3つの理由

 2021年頃からHRテックの派生系として、SkillsTech(スキルテック)という言葉が流通し始めました。米国のHR分野の著名コンサルタントであるジョシュ・バーシン氏は、「仕事に必要なスキルを分類、評価、管理、改善するためのツール」と説明をしています。

 なぜHRテックの中でもこのスキルテックに注目が集まっているかというと、大きく分けて3つの理由があるのではないかと考えられます。

1.スキルベース雇用へのシフト
 新型コロナウイルス感染症が広がった影響で急速にデジタルトランスフォーメーションが進み、新たな成長分野としてデジタル分野の事業領域に乗り出す企業が増え、現状と比較をして人材のスキルギャップが急激に拡大をしていることが背景にあります。特に米国ではコロナからの回復が比較的早かったため慢性的な人材不足に陥り、一時期は1000万件以上の求人募集がずっと続いていました。そうした人材不足を埋めるために、今までの採用方法では候補者の母集団が増えないため、スキルベース雇用(Skill-Based Hiring)という考え方が広まったのです。4年生大学卒業といった資格要件をなくし、本当に必要なスキルを持っている候補者を採用するというフェアな手法に原点回帰していっているのです。そのため候補者となる人材のスキルを正確に評価する仕組みが必要になり、スキルテック分野のスタートアップが次々とサービスをローンチしているのです。

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4年生大学卒業といった資格要件をなくし、本当に必要なスキルを持つ人を採用する手法に原点回帰していく

(Photo/Shutterstock.com)

2.社内配置転換のためのリスキリング推進
 急速な業務のデジタル化やデジタル分野の新規事業を担う人材の必要性から、既存の社内の人材をリスキリングし、社内でInternal Mobility(労働移動)の必要性が前述1.と並行して高まっているのです。そのため、現在社内にいる従業員がどんなスキルを持っているのか、を正確に把握し、スキルの棚卸しが必要になっていることが挙げられます。

3.人間によるアナログ手法のスキル可視化の限界
 長年人事部を悩ませてきたスキルの可視化についてはアナログ手法で行うには限界がきていることも理由にあります。古くはエクセルでスキル表を作り、従業員にアンケート形式でスキル表に入力をしてもらい、回収し把握するという、膨大な時間と作業を伴うものでした。そして急速なデジタル分野の成長により、新たなスキルが日々生まれ続けている中、それを正確に把握し続けることも事実上不可能になっています。2023年4月に米国のノースイースタン大学が発表したレポート「UNDERSTANDING THE EMERGING SKILLSTECH LANDSCAPE」において、SkyHive社の創業者兼CEOであるショーン・ヒントン氏は、クラウドコンピューティング市場の例として「アーキテクチャの大規模な更新とスキル需要のシフトが平均4.5カ月ごとに起こっている。そして仕事の再定義が必要なペースは、年単位ではなく月単位になっている」と述べています。

 人間では把握が追いつかない部分についてはAIを活用してスキルの可視化を可能とするスキルテックを活用すれば、大幅にスキル可視化にかける作業時間が減り、アップデートが簡単になるため、人事部が作業効率化のためにスキルテックを活用し始めているのです。

優秀な人材が辞めていく会社にならないためのフェアな仕組み

1.スキルは組織変革に向けた「共通言語」に
 AIによる大規模な変革が始まっている中、多くの組織では「将来どんな人材が必要なるだろうか」という答えの出ない問いを突きつけられているのではないかと思います。大事なことは、一旦「えいや!」と暫定で決め、修正しながら実行していくことかと思います。その際に、全社の中での共通言語が必要になっているのです。どんな人材がこれから必要か、を決める時の目線合わせ、基盤となる情報と言い換えても良いかもしれません。

 今まで一部の先進的な企業でスキル・タクソノミーのようなスキル分類を精緻に管理しようという試みは継続的にありましたが、これからは外部人材市場と内部労働市場を一元管理し、充足すべき社内のポジションにいち早く投入し、事業を前進させていく必要があるので、全社共通の共通言語をスキルにする必要があるのです。

 社内、社外の共通言語を「スキル」にする必要性の1つに、従来の働き方での共通言語では不都合が生じている点が挙げられます。たとえば、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが全国で広がりました。出社している人、在宅勤務の人で人材評価が分かれるという話も出てきました。出社して苦労している従業員のほうが「頑張っている」印象が強くなるのだそうです。目の前で顔を突き合わせることによるバイアスがかかるわけです。成果やスキルレベルを評価しないこのような会社では、優秀な人材が辞めていきます。

 また、現在では地方在住でありながら、東京本社の仕事をリモートワークで実施している方なども増えてきました。顔をお互いに突き合わせていない中、地域や性別、年齢などは仕事の成果を判断する上での共通言語に当然なりえません。そのため、あらゆる働き方をしている方の評価を行う上でのフェアな仕組み、それがスキルに基づく働き方になるのです。 【次ページ】エクセルで管理するアナログ手法では答えが得られない
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