• 2025/09/14 掲載

AI導入しないと大惨事……日本が「保険医療だけ世界一の三流国」になるヤバい未来(3/3)

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医療費削減にも期待、急速に進む「医療×生成AI」の現在地

 2023年以降、ChatGPTなどの大規模言語モデル(LLM)を活用した医療相談サービスが登場し、2024年から2025年にかけて実用段階へ急速に移行しています。これらのサービスは症状の初期評価、一般的な健康相談、慢性疾患の自己管理支援などを提供し、医療アクセスと医療費の両方でプラスの影響をもたらしています。

 実際の医療現場における活用は想定以上に進んでいて、2025年時点で医師の25%が診療中にAIを利用しているという調査結果があります。退院サマリーの作成、鑑別診断リストの作成、患者説明文書の生成などの分野で実用化が進み、AI問診システムの導入により初診患者の問診時間が約65%削減されるなど、具体的な効果が実証されています。

 技術的な進歩も著しく、国立情報学研究所が開発した日本語医療LLM「SIP-jmed-llm」は、2025年6月に医師国家試験の合格基準を超える性能を達成しました。また、GoogleのAMIEなど、専門医レベルの鑑別診断を支援するAIも登場しています。

 医療経済学的な観点から注目されるのは、本来不要な受診の削減効果です。AI搬送先推奨システムの導入により、重症患者の適切な医療機関への搬送率が導入前の79%から93%に向上し、転院搬送率が49%低下したという報告があります。救急車有償化問題を抱える日本においては、極めて意味のある成果といえます。軽症者の時間外受診や大病院への直接受診が減少すれば、医療資源の効率的な配分につながります。

 慢性疾患患者の自己管理支援による長期的な医療費削減効果も期待されています。糖尿病患者がAIと対話しながら食事、運動、服薬管理を行えれば、個々人の合併症リスクを減らせるという考え方です。2024年上半期には約10%の人がChatGPTに健康関連の質問をしていて、セルフトリアージ(緊急度自己判定)分野の活用が拡大しています。

 一方で、慎重に考えるべき課題も具体化しています。アメリカのコーエン小児医療センターによる2024年1月の研究では、文献由来の難しい小児科症例においてChatGPTの誤診率が8割以上という結果が報告されました。また、患者さんの性別や人種が診断に影響を与えるバイアスの存在も科学的に検証されていて、医療誤情報の生成拒否率がわずか5%という調査結果もあります。

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AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』をクリックすると購入ページに移動します
 法的にはAIはあくまで「診断補助ツール」として位置づけられていて、単独で診断を下すことは許されていません。2025年に77歳を迎えた医師法は当然AIの存在など知らず、現代のAI技術に対応できていない問題が依然として残されています。ただし、2024年4月に総務省と経済産業省が「AI事業者ガイドライン」を公表し、欧州評議会でも2024年5月にAI枠組み条約が採択されるなど、規制対応は段階的に進展しています。

 この種のサービスをどこまで公的保険でカバーするかという課題は複雑です。AI医療相談の効果が実証される一方で、誤診断リスクや医療格差の拡大(高度なサービスは高額であるため、など複数の理由があります)への懸念もあり、適切なバランスを見つけることが求められています。

 ChatGPTをはじめとする生成AIの医療分野への活用は、2024年から2025年にかけて理論から実践への転換期を迎えています。技術的な進歩と実用化の加速により、医療費削減と医療の質向上の両立が現実的な目標となりつつありますが、安全性の確保と適切な規制の整備が今後の課題です。

※本記事は『『AIに看取られる日 2035年の「医療と介護」』』を再構成したものです。

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