- 2025/10/01 掲載
年収3億円でも流出止まらず…メタが143億ドル投じた「最後の賭け」の行方
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
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若干28歳の企業に巨額投資をする背景
メタがScale AIに巨額投資を行うことが話題となっている。143億ドル(約2兆700億円)という史上最大級の投資額でScale AIの株式49%を取得するというもの。合理的な戦略的投資なのか、それともAI開発競争でOpenAIやグーグルに後れを取るメタの焦燥感のあらわれなのか、さまざまな議論を巻き起こした。この投資の最大の注目点は、Scale AI創業者で、若干28歳のアレクサンダー・ワン(Alexandr Wang)氏がメタにChief AI Officer(最高AI責任者)として移籍することだ。

ワン氏は社員向けメモで「このような規模の機会には、しばしば代償が伴います。今回の場合、その代償は私の退任です」と述べ、CEOとしての役割を終えることを発表した。後任にはベンチマークの元ベンチャーパートナーで、ウーバーの元バイスプレジデントでもあったジェイソン・ドローグ氏が就任する。
ザッカーバーグCEOがこれほど大胆な投資に踏み切った理由は明確だ。2025年をAI最優先年と位置づけながら、メタのAIモデル「Llama」シリーズが不発に終わったためだ。
これを受け、ザッカーバーグ氏のAI開発チームに対する不満が高まっていたとの報道もある。ある業界アナリストは今回の発表を「戦闘モードのCEOの行動」と評している。
過去の失敗もメタのAI開発への焦りを増幅させている。メタバースに巨額投資を行った結果、期待に反して大きな成果を上げられず、むしろ嘲笑の的となった苦い経験がある。オックスフォード大学のマイケル・ウールドリッジ教授は「メタバースが離陸しなかった後、市場での主導権を取り戻そうとする試みのように見える」と分析する。
ザッカーバーグ氏はワン氏を迎え入れ、人間の能力を超える「超知能(ASI)」の開発を目指すという野心的な目標も明らかにしたが、これも同社の切迫感を物語るものとして捉えられているのが現状だ。
ブルームバーグは今回の投資について「ワン氏は皆(競合他社)が何をしているかに関する知識をメタにもたらす」という見出しで、競合他社の動向を熟知するワン氏の価値を強調している。 【次ページ】そもそもScale AIとはどのような企業なのか
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