- 2025/10/25 掲載
英語学習はもう不要?リアルタイムAI翻訳が超えた「0.8秒」の壁
バークリー音大提携校で2年間ジャズ/音楽理論を学ぶ。その後、通訳・翻訳者を経て24歳で大学入学。学部では国際関係、修士では英大学院で経済・政治・哲学を専攻。国内コンサルティング会社、シンガポールの日系通信社を経てLivit参画。興味分野は、メディアテクノロジーの進化と社会変化。2014〜15年頃テックメディアの立ち上げにあたり、ドローンの可能性を模索。ドローンレース・ドバイ世界大会に選手として出場。現在、音楽制作ソフト、3Dソフト、ゲームエンジンを活用した「リアルタイム・プロダクション」の実験的取り組みでVRコンテンツを制作、英語圏の視聴者向けに配信。YouTubeではVR動画単体で再生150万回以上を達成。最近購入したSony a7s3を活用した映像制作も実施中。
http://livit.media/
0.8秒の遅延で30言語対応の「新境地」
AI翻訳は、それ自体目新しい技術と呼べるものではないが、生成AIの進化とともに、精度とスピードが大きく改善しており、AI分野のネクストフロンティアとして認知されつつある。市場成長期待も高まっている。ロンドン拠点の調査会社The Business Research Companyのレポートによると、AI翻訳市場規模は、2024年の23億4,000万ドルから2025年には29億4,000万ドル(約4,330億円)に成長し、年間成長率は25.2%に達する見込みだ。この勢いは今後も続き、2029年には71億6,000万ドル(約1兆円)規模に膨らむと予測されている。
中でも注目株となっているのが、米スタートアップのPalabra AIだ。この企業は2023年に元サムスンの機械学習エンジニア、アルテム・クハレンコ氏とアレクサンダー・カバコフ氏によって設立されたスタートアップ。2025年8月には、Reddit共同創業者アレクシス・オハニアン氏のベンチャーキャピタルSeven Seven Sixが主導する840万ドルのプレシードラウンドを完了するなど、著名なテック創業者からの関心を集めている。
Palabraの最大の特徴は、従来の翻訳システムが抱えていた遅延問題を解決した点にある。多くの企業は、音声認識、テキスト翻訳、音声合成という複数の技術(API)を組み合わせる手法を採用しているが、この方式では遅延が積み重なり、リアルタイム性が損なわれてしまう。
これに対しPalabraは独自のデータパイプラインを構築し、遅延を約800ミリ秒(0.8秒)まで短縮することに成功した。この速度は、ほぼ自然な会話のテンポを維持できるレベルだ。
品質管理にも独自の工夫を凝らしている。同社のシステムでは、データパイプラインの最終段階に人間の通訳者を配置し、出力品質をチェックしているという。新しい言語を追加する際も、数週間という短期間で対応可能な体制を整えた。アルゴリズムは騒音環境や会話の中断といったさまざまなシナリオにも対応できるよう設計されており、これによりクリアなリアルタイム翻訳が可能になった。
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