- 2025/11/12 掲載
なぜ大人が沼る?「ぬい活」が生む“静かな熱狂”、お泊りや保育園……新市場の“今”(2/4)
東横イン「ぬいとお泊り」は予約300件超、広がる“新市場”
こうしたトレンドに反応した1社が、東横インだ。ぬいぐるみやアクリルスタンド専用のお泊りセット(ベッド・ガウン)を貸し出す「推し活応援!~ぬいと一緒にお泊り会プラン~」を2025年6月から「東横INN大阪ドーム前」にて開始すると、SNSを中心に大きな話題を呼んだ。好評を受け、実施店舗は59店舗に拡大している(2025年11月初旬時点)。
同プランは、2023年11月に発足した「Z世代プロジェクト」から生まれた。グループ企業を含む6名の20代社員が所属し、若年層向けの企画を検討するのが趣旨だ。プロジェクトに参加する東横イン マーケティング部 広報チームの菊地真鈴氏は、自身もぬい活を楽しんでいるという。
「東横インの主な利用者は40~50代で、プロジェクト発足当時の20代利用者は、わずか4.9%でした。その背景には、コロナ禍を経て出張が大幅に減ったなどの社会的要因もありますが、若年層の獲得に向けた施策に取り組む必要がありました。そのうえで着目したのが『推し活』です。中でも市場規模が拡大していて、宿泊と密接な関係にあるのが『ぬい活』だと考え、プランを企画しました」(菊地氏)
東横インのお泊り会プランは、ぬいぐるみ用の「ベッドとガウン」を宿泊の通常料金にプラス300円(1セット/1泊)で貸し出すものだ。10~20センチのぬいぐるみを想定し、ガウンはS・Mの2サイズを用意。ぬいぐるみとの一体感を感じられるよう、実際に東横INNで使用している素材で枕や布団、ガウン、ベッドフレームを製作した。
「実は、ベッドを置いた場所は、元々スマートフォンやリモコンを置くための『マルチストレージ』なんです。ただ、推し活が流行り出してから、ここにアクリルスタンドやぬいぐるみを置いて写真を撮影する『ステージ』のような使用方法が増え、この場所を有効活用できないかと思いました。ライトが付いているので、撮影にはもってこいなんです」(菊地氏)
以前から推し活利用が多い「大阪ドーム前」でテスト販売すると、SNS上での反響が大きく、想像以上に予約数も多かったという。「他店でも展開してほしい」といった声を受け、10月からは全国的に導入。開始から約3週間で予約件数は300件以上にのぼるという。
イベント会場の近くにある店舗を中心に展開し、テスト販売していた大阪ドーム前を除くと、「横浜桜木町」「名古屋金山」「日本橋浜町明治座前」の順に利用者数が多い。利用者層では20代、30代、40代がほぼ同比率で、女性が中心となるそうだ。
「プロモーションはSNS中心で、口コミだけで広がっているような状況です。より認知が広がれば利用者数が伸びる可能性もあるだろうと予想しています。また、イベント時だけでなく、旅行時にぬい活をされる方も多いので、観光地の店舗でも一定の需要はあるかもしれません」(菊池氏)
東横インでは、ぬい活の定着や広がりを踏まえ、実施店舗のさらなる拡大を見込んでいる。推し活で疲れた体を癒やすホットアイマスクなどのケアグッズが付いた「推しごとお疲れさまプラン」も展開するなど、ぬい活にとどまらない「推し活」関連のプランを充実させていく方針だ。 【次ページ】200人が利用「ぬいぐるみ保育園」の凄すぎる実態……
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