• 2025/11/30 掲載

「効率化したはずなのに」なぜか前より妙に疲れてしまう…“見えない敵”の正体は(2/3)

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効率化のプロでさえ「いくらやっても仕事が減らないんです」

 まず、この矛盾を象徴する1人の男性の話から始めましょう。

 IT企業で働くBさんは、システムエンジニアとして「不便なことを便利にする」のが仕事です。

 作業にかかる手間を減らし、作業時間を短縮し、望む結果がすぐに手に入るシステムを作る。

 まさに効率化のプロフェッショナルです。

 Bさん自身も効率化を徹底していました。

 仕事でもプライベートでも、AIやアプリを駆使してあらゆる手間を省き、ムダを排除することに情熱を注いでいました。

 ところが、皮肉なことに、Bさんの日常は「多忙感」という見えない敵によって支配されていたのです。

 朝から晩まで絶え間なくチャットやメールが送られてきて、その都度的確に判断をしなければならない。
「少しでも休憩をとればプロジェクトが進まなくなる」
 Bさんはそう考え、次第に休むことや眠ることがどうでもよくなり、PCの前でキーを叩き続ける。

 そのうち、こんな愚痴をこぼすようになりました。
「いくらやっても仕事が減らないんです。みんながどんどん攻めてくる感じで……」
 実際には、Bさんのチームの仕事量は以前と変わっていませんでした。

 むしろ、効率化によって1つ1つのタスクの処理時間は短くなっていたのです。

 それなのに、なぜBさんは「いくらやっても減らない」と感じたのでしょうか?

 さらに、彼は「やるべきことが減らない」と感じながらも、実際には業務とはまったく異なることにも時間を費やしていました。

 SNSで友人やインフルエンサーの動向を逐一チェックし、リマインド機能を使って漫画の最新刊を流し読み。1ラウンド20分のソーシャルゲームを気分転換できるまで続け、頭を使う元気がないときはショート動画をぼんやり見続ける。

 仕事でも、プライベートでも、常にやることに追われ、追われることがなくなると別のやることを探す。

 Bさんは、効率化によって「空いた時間」を(空いていない時間も)、さらに多くの刺激で埋め尽くしていたのです。

“根本的な問題”に気づかなければ、効率化しても楽にならない

 やがて、Bさんのパフォーマンスに変調が現れました。
「チャットに返信しようとしても言葉が浮かばないんです」
「何をしようとしていたのか忘れてしまって……」
「パソコンの前でボーっとしたまま時間が過ぎてしまうんです」
 眠っても疲れが取れず、頭痛や動悸、息苦しさを感じるようになりました。

 効率化の専門家であるBさんが、なぜこんな状況に陥ってしまったのでしょうか?

 答えは、Bさんが「時間の効率化」にばかり注目して、「脳の負荷」を見落としていたことにあります。

 どれだけ作業時間を短縮しても、脳が処理しなければならない情報の量と種類は増え続けていました。

 メール、チャット、SNS、ゲーム、動画……。

 1つひとつの作業は表面上短時間で処理できても、脳は常に「次に何をするか」「何か見落としていないか」を判断し続けなければならない状態にあったのです。

 時間は節約できても、脳の負荷は減っていません。むしろ増大していたのです。

 この根本的な問題に気づかない限り、どれだけ効率化しても楽になることはありません。 【次ページ】「真の効率化」実現を阻んでいる、“解消すべきもの”の正体
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