- 2025/12/07 掲載
BCGが教える“超有力”思考ツール、使い方を誤ると…世界的企業も警戒する「4つの罠」(2/2)
新しいアイデアや問題解決のヒントとなる「アナロジー」
アナロジーは、ある対象と別の対象の間にある共通点を見つけ、それを基に考える思考ツールで、教育、ビジネス、科学、マーケティングなど幅広い分野で活用されている。長所には、難しい概念をわかりやすく説明できる、新しいアイデアを生み出すヒントになる、問題解決のヒントになる、がある。アナロジーを活用するステップは以下である。
- ステップ1 共通点を探す:「AとBはどこが似ているか?」
- ステップ2 対応関係を作る:「Aのこの部分は、Bのどこにあたるか?」
- ステップ3 応用する:「この類似性を使って、新しいアイデアを考えられるか?」
具体的な例として、宅配便と通信網を考えてみる。宅配便では、発送元から荷物を集荷したら、集荷所から配送センターへ輸送し、発送先の配送センター、そして配送所へ送られ、そこから配送先へ届けられる。一方、通信網は、コンテンツやメッセージを送信側の端末から送ったら、地域の交換機に届けられ、基幹網を通って受信側の交換機に送信され、受信側の端末に送られる。送られるものは、宅配便の場合は荷物であり、通信網の場合はデジタル情報だ。主に活躍するのは、宅配便の場合は人であり、通信網の場合は回線や機器である。
歴史を振り返ると、通信と物流は、互いにヒントを与え合いながら発展してきた。インターネットが普及する基となったパケット通信は、情報を荷物(パケット)にすることによって回線の稼働率を劇的に高めるところから始まった。一方、物流の2024年問題(働き方改革関連法によるトラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されることにより物流の停滞が懸念された問題)についても、通信網の仕組みを参考にすれば、解決のヒントが得られる。たとえば、通信網では、基幹網の有効活用のためにできるだけ回線を集約して送受信している。これを宅配便に応用すれば、集荷・配荷センターを再配置して、輸配送効率を高めるネットワークの最適配置を随時行うことにつながる。また、通信網では、事業者間のネットワークの共用を図っているが、それを宅配便に応用して異なる事業者間での混載を実現できれば、輸配送効率は格段に向上する。
使い方を誤ると…誤解や間違った判断を招く事態も
1.表面的な類似性で示唆を出してしまう
たとえば、「人間の脳とコンピューターは似ているから、AIはすぐに人間と同じ知能を持つはずだ」というのは表面的な類似であり、脳とAIの仕組みの違いを無視している。対策は、本質的な共通点があるかどうかを深く分析することだ。このアナロジーは単なる見た目の共通点ではなく、構造や仕組みまで一致しているか、を確認することが重要である。
2.示唆を抽出できていない
「○○は△△のようなものだ」と言い換えるだけでは、説明したつもりになり、本質を理解しないまま終わる。たとえば、企業経営はサッカーのようなものだ、と言っても、具体的にサッカーがどう経営戦略に生かせるのかを示さないと意味がない。対策は、アナロジーを使った後に、この例えから具体的に何を学べるのかという示唆をしっかり考えることである。
3.重要な違いを無視する
似ている部分だけを強調し、異なる部分を無視してしまうと、誤った結論に至る。たとえば、進化論で生き残るのは強いものではなく適応するものだから、企業も変化し続ければ必ず成功する、と考えるのは無理がある。進化論は生物に適用される理論であり、企業経営には、市場環境、競争戦略など異なる要素が関わるためだ。対策は、このアナロジーはどこまで適用可能で、どこが適用できないのかを確認し、論理展開を検証することである。
4.文化や背景の違いを無視する
ある業界や国で成功した事例を、そのまま別の業界や国に当てはめてもうまくいかないことがある。たとえば、アメリカのシリコンバレーではフラットな組織が成功しているから、日本の企業もフラットにすれば成功するはず、というもの。アメリカと日本では文化や雇用制度が異なるため、同じ組織モデルが機能しない可能性がある。対策は、アナロジーを適用する前に、その前提条件は同じかを検討することだ。
5.未来に対して直線的な推論を行って示唆を極論化する
このパターンが続くと必ずこうなる、と極端な未来を予測してしまうのもアナロジーの間違った使い方だ。たとえば、ロボット技術が進化しているから、将来すべての仕事がAIに置き換わる、という予測は極端だ。技術の進歩は直線的ではなく、予測には多くの不確定要素がある。対策は、他の可能性や反証を考え、このアナロジーは極端な結論を導いていないかを確認して、注意深く示唆を出すことだ。
上記を整理したものを図表2に示す。
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