- 2025/12/23 掲載
【だから辞める】1つでも欠けたら要注意、人が辞めない組織に必ずある“5つの仕組み”(2/2)
【仕組み3】社員が疲弊していく職場の共通点
人が辞めない組織に共通する仕組みの3つ目は、役割と指示の明確化です。離職が少ない組織は、役割や指示、ルールの具体性に徹底的にこだわります。たとえば、「とにかく売り上げを伸ばす」といった形ではなく、「3カ月で1,000万円を売り上げる」のように期限と状態を明確にした役割を1人ひとりに与えます。
これは、日頃の指示でも同じです。「この資料をなるべく早くきれいに仕上げて」ではなく、「この資料を標準フォーマットに従う形にして今日の18時までに書き直して」のように明確な指示をします。守るべきルールがあれば、誰が見ても解釈がぶれない形で明文化します。
こうした環境では、部下は「何を基準に動けばいいのか」で迷うことがありません。仕事に集中でき、無用なストレスも生まれにくくなります。
逆に離職の多い組織では、責任範囲や役割が曖昧なまま業務が進み、上司は「言わなくても察してほしい」「もっと考えて動け」と感情に頼ったマネジメントに陥りがちです。
結果として、社員は成果を出すよりも「怒られないこと」を優先するようになり、疲弊していきます。そんな職場に誰が居続けたいと思うでしょうか。
【仕組み4】フラットな組織こそ「優秀な人」から辞めるワケ
4つ目のポイントは、上司と部下の距離感です。いわゆる「フラット型組織」に偏りすぎないことが重要です。「友達のように接した方が辞めにくい」と思われがちですが、実際には逆効果になるケースも少なくありません。距離が近すぎると、「この人の頼みならやる」「今日は気分じゃないからやらない」と、上司の指示に従うかどうかを自分で判断するようになります。
その結果、しわ寄せが集中するのは、たいていは責任感の強い優秀な人材です。すると、その人には本来の業務とは関係のない仕事ばかりが積み重なって、やりがいを感じられないまま負担だけが増えていきます。選択肢の多い優秀な人材ほど、「ここで頑張り続ける理由」を見失い、離職を決断しやすくなります。
上司と部下の関係は、個々の性格や相性ではなく、組織の仕組みとして設計する必要があります。上司は部下の役割を明確にし、言葉遣いは丁寧に、しかし「いつまでに何をしてほしいか」ははっきりと伝える──この線引きが、優秀な人材を守ります。
【仕組み5】成果が“当たり前”に報われる環境はどう作る?
最後は、4つ目とも密接に関わる評価制度の整備です。収入は、社員が会社に在籍し続ける大きな理由の1つですが、成果に見合った評価がなされていない会社は多くあります。
評価制度でも重要なのも、役割や指示と同様に「いつまでに」「何を達成すれば」「どの水準の給与が得られるのか」がはっきり決まっていることです。評価基準があいまいなままでは、社員の納得感は生まれません。
特に注意したいのが、「積極性」「主体性」といった抽象的な基準です。解釈の幅が広すぎるため、会社の意図と社員の受け取り方がズレやすくなります。
そのズレが査定の場で露呈すると、「こんなに努力したのになぜ評価されないのか」と社員は不満を抱き、離職を招きます。誰が見ても判断可能な評価基準を整えることが、定着率向上に寄与するのです。
離職者「10人→1人」に減った会社で起きたこと
ここまでに紹介した取り組みを実践し、離職率を劇的に改善した企業があります。実際に、私がコンサルティングを担当した会社の事例です。社員170名程度のビルメンテナンス系の会社では、1カ月あたり10名以上が離職する状況が続いていました。毎月多額の費用を投じて新しく20名程度集めるものの、その半分がすぐに辞め、現場は常に人員不足で疲弊していました。
育成の仕組みやルールが形だけで、新人が何も分かっていないまま現場に放り出されたり、触ってはいけない箇所に触れて怒鳴られたりといった事態が続出していたことが離職の大きな原因でした。
これらを1つひとつ修正していった結果、離職者が減少していき、2年がたった今では月に1人いるかいないかです。
以上、人が辞めない組織に共通する5つの仕組みについて見てきました。離職には防ぐべき悪い離職と、起きても仕方のない離職があります。優秀な社員が会社の制度の不備で辞めてしまう前者は、今回紹介した仕組みで防げます。
制度を整える過程では、ルールに不満を持つ社員が辞めることがあるかもしれません。しかしそれは、組織が健全になる過程で起きる離職です。優秀な社員に長く居続けてもらうために、仕組みから見直すことは何より重要なのです。
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