- 2026/01/14 掲載
売上95%減の絶望…峠の釜めし6代目が「脱・観光依存」のためにやった「5つのこと」(2/3)
「脱観光」へ新業態、そこでぶち当たった「物価高」
荻野屋では、脱観光業に向けて、第2、第3の柱の創出と認知度の向上を図ってきた。その一環として取り組んだのが、東京都内における新業態の店舗展開である。たとえば、2024年8月に「峠の釜めし」の「茶めし」を使用したおにぎりや定食を提供する「おこめ茶屋 米米-めめ-」、2025年1月には伝統の出汁を進化させた料理を提供する「荻野屋 回 -kai-」をオープンさせた。
「新しい店舗を展開する最大のメリットは、新しい人材が入ってきて社内が活性化されることです。釜めしを活用しながらも、釜めしだけに頼らないという意識が社内に浸透してきたように思います。一方、地元の群馬県から都内に出て行くことに、抵抗感を覚える社員がいるのも事実です。このため、将来的には別組織として展開することも考えています」(高見澤氏)
もちろん、認知度という点で荻野屋のブランドを高め、広めるという成果は十分にある。一方で、現在の事業環境は決して楽観できる状態にはないと、高見澤氏は次のようにも述べる。
「東京都内に関しては、やはり人の確保の難しさを実感しています。また、人件費、家賃、設備投資のすべてがコロナ前の1.5倍くらいに高騰している一方で、それを売価に転嫁できない現実があります。このため現在は、新業態の店舗についてはいったん立ち止まり、足下を固めた上で、次の展開を考えるべきではないかと考えています」(高見澤氏)
ただし、こうした現状認識はしつつも、直近の2025年8月には、新しい風土料理の形を提案する高級レストラン「Restaurant O(オー)」を東京・西麻布/六本木エリアでオープンさせた。一見すると矛盾するように見えるが、高見澤氏にはある狙いがあったという。
「高級レストラン」を決意の出店、その狙いとは?
Restaurant O(レストラン オー)をオープンした際のニュースリリースには、次のように記載されている。荻野屋の旗艦店として「料理とは何か」「レストランとは何か」を改めて問い直し、日本の風土に根ざした"風土料理(Terroir Cuisine)"を新たに定義・創造する場として誕生します。高見澤氏は最新店舗の狙いについて次のように語る。
「大量生産型の釜めしがヒットしたことで、140年間、荻野屋として大切にしてきた食材やサービスに対するこだわりが、徐々に薄まっているのではないか、という危機感をずっと抱いていました。そこで、そのこだわりを最大限に引き出して、少量で高品質の料理を作ってお客さまに提供する店舗、未来の荻野屋のための象徴的な店舗を作りたいと考えたのです」(高見澤氏)
一方で、父・忠顕氏の影響もあるかもしれないと、次のように続ける。
「もともと父親はフランス料理をやっていて、いつかはフランス料理のお店を持ちたいと語っていましたので、その影響もあったのかもしれません。ただ単に高級店をやりたかったわけではありません。素材へのこだわりや環境問題なども含めて多くの人に参加してもらうことが、社内の活性化や荻野屋の将来に確実につながると考えての決断です」(高見澤氏)
なお、Restaurant Oの「O(オー)」は、荻野屋の「O」のほかにフランス語で「水」の意味もある。原点、源にも通じるという意味で、「O」は高見澤氏が好きな言葉なのだという。
鬼滅の刃・トーマスなどとコラボも…
新業態だけではない。コロナ禍に鬼滅の刃とコラボして大きな成果を上げたように、IPコラボ(注1)を展開している。その意図について、高見澤氏は次のように説明する。「鬼滅の刃のほか、きかんしゃトーマスや葬送のフリーレンなど、さまざまなIPコラボを行っています。IPコラボは、コンテンツをきっかけに『峠の釜めし』を知っていただきたいのが最大の目的です。昔は長野方面に旅行したら必ず買っていただける時代もありましたが、それが次第に薄れてお客さまとのタッチポイントが減っている中、IPコラボは重要な取り組みだと認識しています」(高見澤氏)
ただし、IPコラボには特有の課題もあると、高見澤氏は次のように続ける。
「やはり大きなコストがかかることが課題です。また収益への成果は見えづらいので、広告宣伝として割り切る必要はあるかと思います。コンテンツのファンの皆さんには知っていただけるのですが、そこからの波及効果があまり見込めず、一過性にとどまってしまいがちなのも課題かもしれません」(高見澤氏)
一方で、社内への副次的な効果もあると指摘する。コラボでは、キャラクターに合わせて釜めしの中身を試行錯誤しなければならない。その作業が、ルーティンワークからの脱却につながるという意味で、プラスに作用しているとのことだ。 【次ページ】中断→再開→大成功をたどった「EC事業」
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