• 2026/04/20 掲載

驚異の5割時短…弥生が「AI駆動開発」で大成功、CTOが包み隠さず語った「実践の全貌」

連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線

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AI駆動開発で生産性は爆上がり──そんな言葉が飛び交うようになったが、実際に成果を出している企業はかなり少ない。そうした中、弥生は一部の作業で5割の時短につなげるなど大きな成果をたたき出している。その裏側にはAI駆動開発を進めるための環境整備に向けた3つの独自ステップと、数々の失敗から得たリアルな知見がある。今回、エンジニアチームを率いる同社 CTOの佐々木 淳志氏に話を聞き、導入ステップから失敗と成功の裏側、効果測定の独自指標など、包み隠さず明かされた実践の全貌を追う。
取材・執筆:マスクド・アナライズ

マスクド・アナライズ

AIスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスについてSNSによる情報発信で注目を集める。現在は独立して、イベント登壇、研修・セミナー開催、書籍執筆、企業向け生成AI・ChatGPTの導入活用支援などを手掛けている。支援実績は北海道庁、日立製作所、JR西日本、シーメンスヘルスケアなど。著書に「会社で使えるChatGPT」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」がある。

書籍「会社で使えるChatGPT」発売中

  撮影:鈴木 智哉
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弥生 CTO 佐々木 淳志氏

AI駆動開発で使う「AIツール5選」

 プログラミングの自動化については、生成AIの登場以前からさまざまな取り組みがあった。事例としては、みずほ銀行におけるシステム統合プロジェクトで、開発の高速化と品質の標準化が目的だ。

 現在ではChatGPTをはじめとする生成AIの登場によって、プログラミングの自動化はより身近なものとなり、その品質も向上している。こうした中、弥生では、生成AIを活用したAI駆動開発を採用。

「弥生の開発現場は、セキュリティなどの社内ルールを厳守しつつも、各エンジニアが新たな技術やツールを積極的に試せる文化があります。そのため、ChatGPTをはじめとする生成AIも登場直後から『AIを使いたい』との声が多く、利用者も増えていきました」

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 現時点では、開発プロセスの標準化を進めた上で(後ほど解説する)、AI系ツールに、プログラミング支援のCursorとDevin、ソースコード管理のGitHub Copilot、オブザーバビリティプラットフォームのNew Relic、インシデント管理プラットフォームのPagerDutyを選定した。

作業時間5割減も…AI駆動開発で得た「莫大成果」

 佐々木氏は「開発手法としては大きく2つの方法に分けられます」と強調する。

 1つは、既存の開発手法を維持しながら、AIを利用して作業効率化を高める方法。もう1つが、製品開発における企画段階からAIの利用を前提とした方法だ。前者は既存製品の改善などに使われており、後者は新規プロジェクトにおいて試している状況だという。

「後者の方法は、エンジニアと製品の責任者が集まり、AIと一緒にアイデアをまとめたり、AIに仕様書を書かせて、AIがプログラムを生成するという手法です。こちらは仕事のやり方そのものをAI前提に置き換えるイメージです」

 ではAI駆動開発を推進したエンジニア組織では、どのような成果が出ているのだろうか。

「成果としてはプルリクエスト(エンジニアが追加・修正したプログラムを反映する前の確認依頼)の件数が10~20%ほど向上しました。他の業務でも試験的に手動とAIによる作業時間を比較したところ、半分程度になったケースもあります。しかし個別作業で50%効率化しても、開発業務全体では20%程度の削減にとどまるでしょう。少なからず効果は出ており、今後のノウハウ蓄積を考慮してさらなる成果も期待しています」

AI駆動開発「3つの導入ステップ」

 企業におけるAI活用は、経営層や管理職などが指示する上からのトップダウンと、現場の担当者やエンジニアからの要望によるボトムアップというバランスが大事となる。弥生では経営トップのCEO自身が「弥生はAIファーストで行く」「あらゆる要素をAIに組み合わせる」というメッセージを出しており、現場からも「AIを使いたい」「AIで業務を効率化したい」と声が出ていた。

 佐々木氏はCTOとして経営と現場の間をつなぎつつ、現場への権限委譲も進めている。こうした考え方の下、弥生では「探索→標準化→成熟」という段階を踏んでAI駆動開発の環境整備に努めてきた。

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AI駆動開発の環境整備を進めた「3つのステップ」
(弥生提供)

「まずはエンジニアが使い始めた時点で『なぜ現時点ではエンジニア全員がAIを使っていないのか?』という問いを立てました」

 これを検証するためにAI利用における障壁についてアンケートを実施。「AIを利用して良いか個人で判断できない」「情報漏えいやセキュリティが不安」「有料契約が必要なので予算が足りない」などの意見を『探索』。これらの理由を1つずつ潰しながらルール・ガイドラインを整備して『標準化』している。

 次に明示的に「AIを使って開発して良い」と告知を出しながら、反応が良かったメンバーを集めてチームを立ち上げ、活用事例の収集と展開という『成熟』を行った。

「探索のフェーズと標準化のフェーズ、ここを分けないと積極的にAIを使おうとする社内のイノベーターの足が止まってしまいます。特に探索フェーズは色々検証できる利点もあります」

 特に重要なのは探索と標準化の段階において、AIを積極的に利用する人の成功事例をピックアップしながらルール・ガイドラインを整備する点にあるという。最初から厳密なルールを作って制限をかけると、AIの展開が進まないためである。ここで活用事例を共有しながら利用を推進して、最適なルール・ガイドラインを徐々に整備することがポイントになる。

「弥生の製品はデスクトップソフト、SaaS、モバイルソフトなど複数展開しており、開発に使われる技術や更新頻度も異なるため、無理にまとめるとひずみが出てきます。こうした違いを許容しつつ、最大公約数を探りながら標準化することが重要です」

 また弥生では、社内にAIを浸透させる取り組みとして、ワークショップを開催するなど実施している。ワークショップでは製品ごとに課題を持ち寄りながら、AIをどのように活用するか手を動かしながら体験。今後AIが進化する中で、組織としてどのように適応していくべきだろうか。

「弥生の特性上、長年にわたって開発・販売している製品が多数あります。そのため古い製品では仕様書が残されていても、AIがそのまま学習できる状態ではありません。こうした過去の経緯が積み重なって、ブラックボックス化する状況も出てきます。過去の資産を整備しながら、AIに適した環境を整えることが急務だと考えています」 【次ページ】「失敗も多かった…」、PoC貧乏どう切り抜ける?
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