• 2026/05/25 掲載

なぜ日本発IPは日本で稼げないのか?NARUTOはフランス、ドラゴンボールはサウジに開園(2/2)

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ドラゴンボールはサウジ…日本が海外に「先を越される」原因

 こうした状況を顕著に表しているのが、本稿の最初にも触れたサウジアラビアに誕生予定のドラゴンボールパークである。ここは2030年ごろまでに完成が見込まれていて、ドラゴンボールの場面が再現された7つのゾーンには30以上のアトラクションが建設予定だ。

 本連載でもこのパークについて触れている。筆者は、フランスでNARUTOが人気であるのと同様、サウジアラビアでのドラゴンボール人気の高さが建設の背景となったとしつつ、同時に日本が優れたIPを持ちつつも、それを「お金」に変えることが不得意であることを指摘した。

 その背景には、いわゆる「製作委員会方式」という、複数の会社で1つの作品の制作や流通を支える仕組みがある。

 1つのコンテンツを作る際に、きわめて多くの組織が関わる仕組みになっていて、それが、迅速な意思決定を停滞させているのだ(この事情については谷口晋平氏の論考が参考になる)。

 その結果、国家主導の強力なリーダーシップで計画を進めたサウジアラビアがいちはやく、ドラゴンボールのパーク建設を決めたのであろう。

日本が自国IPを「腐らせている」現実…データが示す “弱点”

 もちろん、これはやや単純化された見方ではある。土地確保の問題や国内の経済動向など、テーマパーク建設は大きなプロジェクトのため、その建設はさまざまな事情に左右される。

 それでも、日本国内におけるコンテンツ流通のあり方が、そのマルチな展開を妨げる理由の1つになっていることは指摘できるのだ。そしてその結果、国内で生まれたコンテンツをうまく「お金」に換えることができていないわけである。豊富な日本IPを「腐らせている」状態だといえよう。

 ちなみに、総務省が発表している令和6年度版の情報通信白書では、日本のコンテンツ産業の市場規模は12兆円程度である。2024年段階で世界第3位の市場規模だが、成長率に注目すると違う側面が見えてくる。

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各国のコンテンツ市場規模(縦軸)と、2011~2021年の年平均成長率(横軸)の比較グラフ。右にいくほど成長率が高いことを示しているが、日本の成長率は他国に比べて極めて低い水準に留まっていることがわかる

 これは、各国の2011-21年におけるコンテンツ市場の成長率の変化をまとめたグラフである。右にいくほど成長率が高いのだが、一目でわかるぐらい日本の成長率は低い。表の中では12番目で、近年は圧倒的な成長率の中国に市場規模で抜かれてしまっている。

 少なくともこのままでは、日本のコンテンツ市場の規模はどんどん低下していくだろう。世界中で日本のマンガやアニメを好きだと公言する人々が多い割には、それがお金になっていない。

海外への利益流出を防ぐ、日本IPが本当に目指すべき“稼ぎ方”

 こうした問題は、いわゆる「クールジャパン」をめぐる問題にも顔を出している。

 日本IPの積極的な海外展開や製作者支援を行うことを目的としてはじまったのがクールジャパン戦略である。しかし、その施策に対する批判は多く、単に日本IPを海外に情報発信することだけに止まったという批判もある。

 現在では、ライブイベントなども含めて日本の経済成長に与する施策も行いつつあるが、単なる紹介を超えて、IPをマルチにお金に換えていくことには失敗してしまっていたといえるのだ。

 実際、フランスに木ノ葉ランドができても、残念ながらそのお金の多くはフランス国内にめぐっていく。もちろん、ライセンスフィーなどは日本に還元されるものの、地元での雇用やパークの収入はフランス国内のものとなる。

 特に、現在は消費の中でも単なるモノを買う「モノ消費」ではなく、そのモノをめぐる体験を売りにする「コト消費」の重要性が増している。その中で、アニメーションの世界に入り込めるテーマパークは「コト消費」を体現してくれるものとして大きな「稼ぎ頭」となるはずであり、日本を主導とした積極的な国内・国外展開が求められている。

 日本のマンガやアニメは、世界中の人々にとって魅力的なものであるはずだ。そして、それは単に「読む」「見る」だけのものではない。その世界観を体験できる施設には、まだまだ開拓されていない稼ぐポテンシャルがあるはずだ。

 だとすれば、日本IPの次の課題は、作品を海外に届けることだけではない。その世界をどのように体験できるものとして作り、収益に変えていくのかという問題がある。

 フランスのNARUTOエリアは、日本IPが世界的にも勝利をおさめていることを示すと同時に、日本が取り逃がしてきたビジネスの姿を映す鏡でもあるといえる。そして、そのことは同時に日本IPが今後目指すべき姿をも映し出しているといえるのだ。

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