• 2026/05/28 掲載

【SAP2026】ERPはもうオワコン? AIエージェント時代の新基幹システム戦略(2/2)

SAP「2027年問題」にどう対応すべき?

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SAP 2027年問題、日本企業「アドオン」が招くAI導入の壁

 海外の先進的なAI事例が華々しく語られる裏で、多くの日本企業は深刻な危機に直面している。世界中で広く利用されてきた旧世代の基幹システム「SAP ERP 6.0」のメインストリームサポートが2027年末で終了するためである。この期限を過ぎると、新たな法改正対応やセキュリティパッチが提供されなくなり、サイバー攻撃のリスクや業務継続の危機が高まる。

 日本企業特有の課題として挙げられるのが、自社の独自業務に合わせて過剰なカスタマイズを施した「岩盤アドオン」の存在である。

 長年の改修により内部構造がブラックボックス化しており、これがS/4HANAへの移行を阻む最大の障壁となっている。独自の機能要件に固執し、レガシーシステムと心中する企業は、最新のAI機能を享受できず、デジタルトランスフォーメーションの波から完全に取り残される「崖」へと転落する運命にある。

 一方で、この危機を「飛躍の好機」と捉える企業もある。たとえば日立ハイテクの事例では、複雑なアドオンを徹底的に抑制し、標準機能に合わせる「Fit to Standard」のアプローチを採用したという。

 同社はプラットフォームを活用したSide-by-Side開発を実践し、ERP本体を改修しない「クリーンコア」を実現している。この戦略により、同社は従来9000本あったアドオンを843本まで削減し、実に91%の削減率を達成した。検証シナリオ数やアップグレード工数も激減し、AIなどの新機能を迅速に取り込める体制を整えている。

 さらに、システム移行のハードルを下げる手段も打ち出されている。最新の発表によれば、AIエージェント主導のシステム移行ツールが提供され、システム分析からコード修正、設定、テストの工程を大規模に自動化する。このAIツールの活用により、ERP移行に必要な作業工数を35%以上も削減できる見込みだ。

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SAP 2027年問題とS/4HANAへの移行

 これまで人間が手作業で行っていた旧システムからの脱却作業すらAIが肩代わりする時代が到来している。「レガシー脱却は困難」という過去の常識は覆され、クリーンコアを実現した企業だけが自律化の恩恵を受けられるという冷酷な現実がデータとともに示されているのである。

人間の仕事を「再定義」する必然。次世代ERP戦略の本質とは

 2035年を見据えた企業のIT戦略において、CIO(最高情報責任者)は経営陣に対し、ERPの役割そのものを再定義するロードマップを提示しなければならない。

 その第一歩となるのが、開発アーキテクチャの根本的な見直しである。従来、標準機能に不足がある場合は内部で直接アドオン開発を行う「In-App開発」が主流であったが、これは将来のアップグレードを阻害する技術的負債となっていた。

 これに代わるのが、コア部分は標準機能のまま利用し、独自のビジネスロジックはクラウド上のプラットフォームで開発する「Side-by-Side開発」である。In-App開発がERP内部に手を入れることで保守コストを高止まりさせるのに対し、Side-by-Side開発はERP本体と疎結合になるため、定期的なアップグレードが容易になり、AIやIoTといった最新技術との連携も迅速に行える。

 初期の切り離しにコストはかかるものの、長期的なシステム維持コストとイノベーション投資の投資対効果(ROI)を比較すれば、後者が圧倒的に優位であることは明白だ。

 さらに、システム全体のパラダイムシフトも起きている。かつての「あらゆる機能を1つの巨大なシステムに詰め込む」オールインワン型のERPから、各領域で最適なSaaSを採用し、APIでリアルタイムに連携する「つながるERP」への転換である。

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2035年に向けてERPを再定義していく必要がある

 SAPユーザー向け独立系コミュニティ・メディア「SAPinsider」の分析によれば、もはや単一の企業がエンタープライズAIを独占する時代ではなく、さまざまなモデルやデータプラットフォームを統合する「オーケストレーション層」としての位置づけが鮮明になっている。AWSやGoogle Cloudなどとのパートナーシップを通じ、オープンなAIネットワークが構築されているのだ。

 この「つながるERP」の世界では、人間の仕事は大きく変容する。AIエージェントがAPIを通じて財務、サプライチェーン、人事などの業務をエンドツーエンドで自動実行するようになれば、人間の役割は手作業のオペレーターから、AIに目的を指示し、結果を評価する「指揮者(コンポーザー)」へとシフトする。

 データの質とAPI連携の設計がビジネスの競争力を決定づけるこれからの時代において、企業は「AIを組み込んだインフラ」を前提とした組織変革を急がねばならない。CIOは単なるシステム管理者から脱却し、AIを中心としたビジネス戦略の牽引役として、この冷徹な現実を経営陣に叩きつけるべきではないだろうか。

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