• 2026/06/18 掲載

MIXIの「非エンジニア部隊」が生成AIでツール開発、「2000時間削減」できた重要な秘密

連載:マスクド・アナライズの生成AI最前線

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非エンジニアで構成される部署が、生成AIを使って6カ月で2000時間もの業務を削減した――そんな驚きの実績を打ち出したのがMIXIだ。翻訳や著作権管理といった専門性を含む業務を「自分たちで独自ツール/Webアプリ開発」することで効率化を実現。そして生み出された2000時間は「あること」に転換し、生成AI活用を通して新たな価値創出につなげている。では具体的にどのような取り組みで成果を出したのか、実践したビジネスサポート室の蛭川 幸太郎氏と真田 匡朗氏が解説する。
取材・執筆:マスクド・アナライズ

マスクド・アナライズ

AIスタートアップ社員として、AIやデータサイエンスについてSNSによる情報発信で注目を集める。現在は独立して、イベント登壇、研修・セミナー開催、書籍執筆、企業向け生成AI・ChatGPTの導入活用支援などを手掛けている。支援実績は北海道庁、日立製作所、JR西日本、シーメンスヘルスケアなど。著書に「会社で使えるChatGPT」「AI・データ分析プロジェクトのすべて」がある。

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ビジネスサポート室ではどんな成果を挙げたのか。写真は講演する同室 蛭川 幸太郎氏(左)と真田 匡朗氏
(筆者撮影)

生成AIで「2000時間の削減」を達成

※本記事は2026年3月27日開催「MIXI MEETUP! AI DAY 2026」の講演を基に再構成したものです。記事の内容はイベント当時のものです。

 MIXIでは、SNSやスマホゲーム、スポーツ事業、写真共有アプリなどさまざまな事業を展開している。蛭川氏と真田氏が所属するビジネスサポート室は、こうした各事業を横断的に支援する組織であり、事業運営に必要な調整や業務支援を手掛けている。そのうち、著作権管理や複数言語における翻訳など、専門的な知識が必要な業務が多く含まれる。

 結論から説明すると、非エンジニアで構成されるビジネスサポート室が、生成AIを活用して累積2000時間の業務削減を達成した。当初セッションのタイトルは1800時間の削減だったが、最新の実績を反映すると2000時間になったという。

 削減の始まりは日々の細かい業務にAIを取り入れることから始まった。例として挙げられたのは、検収書PDF作成の自動化、音声収録の台本作成、事業振り返り資料の作成自動化、ヒアリング議事録のレポート自動作成など。使用したAIツールはChatGPT、Gemini、NotebookLMなど複数のツールに上る。しかし、AIの導入初期では利用が進まず苦労したという。

「当初は『なぜAIを使うのか?』という反応もありました。そこに課題を感じて、どうしたらポジティブな動きにつながるのかアプローチを転換しました。マネージャーやメンバーとも話し合いながら、AIを業務に取り入れて自分たちはどういった役割を担うのか、『その先に何があるか』を掲げようと一緒に考えてきました。その結果、ビジネスサポート室の役割は仕事と仕事をつなぐことであり、重要なのはコミュニケーションだとも再認識しました」(真田氏)

 こうして「AIを使うことありき」の状態から、「何のためにAIで時間を作るのか?」という目的にフォーカス。「AI活用宣言」を掲げて、AIによって1人1日1時間の時間創出を意識しつつ、定型的な業務を見直して付加価値をつけ、スキルを磨いてコミュニケーション力を発揮して、より各事業部との連携や価値提供をすることを目指す方針を立てた。
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【事例2選】専門業務の超・効率化へ「アプリ/ツール開発」

 MIXIでは専門知識が求められる業務がさまざまな形で存在しており、ビジネスサポート室は、専門領域の異なるグループが各事業を横断支援する組織だ。そのため案件の進め方や相談先が見えづらく、連携や支援が属人化しやすい課題があった。そこで、依頼者・担当者・対応履歴を同じフォーマットで管理する案件管理システムを構築したり、担当者不在時の一次対応を可能にするツールを構築した。

■事例1:案件情報の一元管理Webアプリ
 1つ目が、部署内の案件情報を一元管理するWebアプリ「Square2」である。ビジネスサポート室が手がける業務は、スケジュールの情報や、各担当者への確認依頼などが、チャットやメールなど複数のツールにまたがって管理される案件が多く、関係者も多岐にわたることが多い。そのため、「どのデータが最新なのか分からない」「担当者しか進捗を把握していない」といった情報分散や属人化の問題が発生しやすかったという。

 そこで日程管理、データの把握、外部ツールとの連携、週報・月報作成などの機能を持つ「Square2」を開発。専門領域が異なるグループ間の業務内容を見える化し、依頼をきっかけに他グループが自身の担当領域の確認へ先回りするなど、部署全体の情報共有と連携を進めた。

 Square2は、GAS(Google Apps Script)やGemini、OpenAI APIを利用して、AIに指示を出しながら開発。完成させて終わりではなく、担当者が使いやすいように機能改善も継続的に行っている。

「カスタマイズ性がAIの強みです。自分たちのやりたいことを詰め込んだオーダーメイドのシステムを開発する場合、AIの登場以前ならエンジニアや外注先に依頼していました。完成して使ってみると要望も出てくるので、時間もかかります。しかしAIを活用することで自分たちで欲しいものをタイムリーに対応できますし、どんどん進化させることができます」(真田氏)

■事例2:複数同時翻訳ツール
 2つ目は「複数同時翻訳ツール」である。担当者が使い慣れているGoogleスプレッドシート上で複数の言語(英語・韓国語・中国語など7言語)を同時に翻訳するツールだ。

 子供の写真・動画共有アプリの「家族アルバム みてね」は多くの国で展開しており、対応言語も多岐にわたる。同社の多言語翻訳を行う担当者は少人数のため、たとえばサービスの障害情報を発表するといった際、同じ内容でも複数言語で翻訳すると数日を要していた。しかしこのツールを開発したことによって、その作業を大幅に効率化できるようになった。

 会場のデモ動画では、7つの言語への同時翻訳を約30秒で完了。障害発生時などの緊急の対応依頼の際に担当者が不在でも、複数同時翻訳ツールを使えばすぐに一次対応を開始できる。また、過去の翻訳履歴を参照することで表記揺れを防ぎ、品質を担保することも可能だ。現在はツールをさらに発展させて、複数のAIモデルに翻訳・評価・自己修正する仕組みを開発中だという。 【次ページ】削減した2000時間分を“何に”使った?
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