• 2026/08/27 06:10 掲載

登録者18万人…YouTube大成功の山田玲司が「岡田斗司夫」から学んだ“稼ぎ方”(2/3)

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YouTube番組の理想は「ヤンサン編集部」の“ヤバいノリ”

──岡田斗司夫さんの番組とは違い、山田さんのYouTubeでは、色々なゲストの方を呼んでのオムニバス形式の作り方になっていますよね。このフォーマットにした理由はあるんですか?

山田氏:本来は、岡田斗司夫さんがやられているYouTubeチャンネルのように、1人しゃべりで考察を語り、視聴者と1対1の深い関係性を作るのが、マネタイズの面なども含めて1番効率が良いやり方なんですよね。でも、僕の場合はチームを作って、ワイワイと「広場」を作る形を選んだんです。

 僕にとってその「広場感」こそが、僕が連載していた『週刊ヤングサンデー』(小学館、1987年~2008年)をはじめとする、かつての雑誌が創り出していた空間そのもので、それをYouTubeで再現したいと思ってやっています。

 ちなみに、YouTubeチャンネルでメインMCをやってくれているおっくん(奥野晴信)は、編集者でもなんでもない、ただの僕の読者(素人)なんです。

 なぜ彼を抜てきしたかというと、最初に会ったときにあまりに失礼なやつで、逆に「こいつだな!」と思ったからです。番組を僕がすべてコントロールしてしまうと、予定調和の「茶番」になってしまい、見ている方は面白くない。視聴者が見たいのはドキュメンタリーなので、あえて僕の思い通りにならない“壊し屋”や“ノイズ”として彼を横に置いているんです。

 彼は僕にも平気で歯向かってくるし、村上隆さん(現代美術家)のような超有名人にも動じません。彼が威勢よく空気を読まずに場をかきまわしてくれるおかげで、僕自身が「お山の大将」にならずにフラットでいられる。そうやって、マンガ家と読者たちが対等に交わる、不思議な「広場」の空間を作り上げているんです。

──『週刊ヤングサンデー』(略称:ヤンサン)は小学館が1987~2008年に発行していた雑誌です。なぜ、YouTubeチャンネルにも、このヤンサンの名前を使ったんですか?

山田氏:僕が連載していたヤンサンは、2008年に休刊しちゃっています。当時、僕もちょうど『絶望に効くクスリ』を連載していた媒体でした。

 ヤンサンは、山田貴敏さん(中央大学漫研でマンガを描き始めて1984年デビュー)の『Dr.コトー診療所』や、黒丸さん/夏原武さんの『クロサギ』、佐藤秀峰さん(武蔵野美大から1998年デビュー)の『海猿』など、多くの作家・作品が掲載された雑誌です。

 とにかく当時の雑誌業界の中でも、生きの良い人たちが集まっていましたし、歴代編集長も面白い人たちばっかりでしたね(笑)。

 同じ小学館のサンデー系列で連載していた赤塚不二夫(『天才バカボン』などで知られるギャグマンガの巨匠)さんに「デタラメなことをやらなきゃダメじゃん」と鍛えられた編集長もいて、そういう人たちがつくったのがヤンサンなんですよね。

 そのヤンサンで、創刊からずっと最後まで連載していたマンガ家が2人だけいて、それが多摩美(多摩美術大学)の先輩でもある喜国雅彦さん(『傷だらけの天使たち』などギャグ作品で知られる)と僕だったんです。

 ずっとヤンサン好きだったからこそ恩も思い入れもあって、2014年にYouTubeを始めるときにこの名前が使いたかったんです。

──そこから10年ですね。YouTubeチャンネル『山田玲司のヤングサンデー』ではどのくらいの人と対談などをされてきたのでしょうか?

山田氏:絶薬とは違って、こっちのYouTubeチャンネルはゲスト数をカウントしてないんですよね。同じ人に何度も出てもらったり、「ファミリーの一員」化してもらったりもしてますしね。

 たとえば、東村アキコさん(『海月姫』『かくかくしかじか』など)とかは友達なので、半分プライベートな感覚で出演してもらっていましたが、そうした流れがつながっていき、どんどんすごい方が出演してくれるようになってきましたね。

──こういう番組になって、山田さんの強みである“メタ志向”がホントに生きてきますよね。YouTubeチャンネルの中で、出版業界について深く考察されていますが、もともと各出版社の作品や雑誌の顔ぶれだったり、編集部の色とか、そういうのは詳しかったでしょうか?

山田氏:僕はもともと人の話を聞くのが好きなので、打ち合わせのときに編集者の恋愛話から会社の社内政治まで、延々と聞いていたんです。「今度の編集長、どう?」って感じでね。

 そうやって人間関係を把握していくと、会ったことがない人でも、どんな人かもだいたい分かるようになる。出版社のパーティーとか授賞式、「編集長と飲みに行きましょう」みたいな機会も多かったですしね。そうした裏側の話が、たしかに『山田玲司のヤングサンデー』でやっているようなコンテンツの分析などでも生きていますね。

──週数回のペースで動画をアップするようになると、同時並行で漫画を続けるのは大変になりますか?

山田氏:動画をやりながらも、連載は続けられていました。『CICADA』(2016~2018年)も『月刊!スピリッツ』で連載していましたしね。今はYouTubeに力を入れているというだけで、時間と企画があれば、また漫画をやりたいとは思っていますよ。

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2019年に「漫画→YouTube」に全振りを決めた理由

──今や登録者18万人近い、業界を代表するチャンネルです。広告収入など、もう安定して運営できているフェーズなのでしょうか?

山田氏:いや、今でも怖いですよ。WeBのビジネスですからね。ネットの戦国時代の中で、いつ殺されるか分からない。仮にYouTubeのアルゴリズムが変わったら、収益が一切出なくなったりするような綱渡りの状況ですからね。

 それでも、2019年のコロナ前に一回、振り切ったんです。ちょうど『CICADA』が終わったときに、漫画の連載を一旦休んで、WeBで結果を出すことに全振りしようとね。だからこそ本気で、作家、プロデューサー、演者、全部を自分でやる形にしたんです。漫画で培った「最初の5分で読者を掴む」スキルを応用しながら、毎回勝負のつもりでやっていますよ。

──ご自身で話されているように、苦しい時期が何度かあったわけですが、その中で、別の働き方の選択肢を考えたことはないのでしょうか?

山田氏:サラリーマンは絶対に向いていないと思っていました。僕は幼少時代から両親にずっと言われていて、刷り込まれている1つの言葉があるんですよ。それは「人間はいつか死ぬ」、ということです。メメントモリ(ラテン語で「死を忘れるな」)ですよ。

 当たり前のことなんだけど、人生には限りがあって、時間をむだにはできない。僕には当時、就職して会社に入ることが、好きでもないことのために「時間を売る」行為に思えて、「そんなことをしている暇はない!」と強く思ったんです。

 もちろん、組織の中で自分のやりたいことをやらせてもらえている人もいるでしょうけど、僕にはそれが無理だった。だから、漫画家をやっていてキツイ時代もありましたけど、だからって就職するとか会社に属するという発想はまったくなかったですね。

──まさしくそれが山田さんにとっての「撤退しない覚悟」になったんですね。山田さんは東京出身ですが、出身地が地方であることって、漫画家が成功する条件になると思いますか? たとえば、『キャンディ・キャンディ』のいがらしゆみこさんに「なぜ北海道や九州で漫画家が多く育ったのか」を聞いたときに、地方の方が「撤退しない覚悟」で肝が据わるからじゃないか、とおっしゃっていました。

山田氏:それもあるかもしれませんね。ミュージシャンも、上京組がそうやって地方からでて成功する事例もありますし。

 後「体力」と「人間性」も大事です。とがりにとがっている方が漫画家に向いていると思われがちですが、実際には大人の編集者たちとやり取りをする、ビジネス的な側面があるんです。時間を守れるか、礼儀正しさがあるか。そういうところで失敗してダメになっちゃう人もいる。でも、そういったものも「足切り」に過ぎません。その先は、はるかに「おもしろいかどうか」という基準だけで決まる。その公平さが、漫画家の魅力です。 【次ページ】なぜこんなに…日本から「傑作漫画」が誕生しまくる理由
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