- 2026/09/02 06:40 掲載
なぜ優秀な人ほどAI時代に脱落? 米マイクロソフト現役が説く“才能を超える武器”(4/4)
AI時代のバリューは「ムービングターゲット」の意識
牛尾氏が繰り返す言葉がある。「ムービングターゲット」だ。AI時代に価値のあるものは固定されておらず、常に動いている。今日の正解が明日の陳腐化につながり、今日の失敗が明日の糧になる。この前提に立つと、失敗への向き合い方も変わってくる。マイクロソフトの現場でも、試行錯誤の産物として生まれた「屍」は数え切れない。牛尾氏自身も複数のプロジェクトが途中で消えた。しかし、失敗によって蓄積された経験は確実に本体の力になる。エージェントを使ってみて「こういうやり方はうまくいかない」と分かった経験は、次のアプローチへの地図になる。
「失敗したとしても自分の中に何か経験が残るというのが重要です。エージェントをさわっていたら、あ、こういうのはうまくいかなかったとか」(牛尾氏)
この視点は、AIの時代の「自己評価のあり方」とも深く関係している。仕事がうまくいかないときに「自分には価値がない」と感じてしまうのは、自己評価が外部の成果に依存している不安定な状態だ。うまくいっても失敗しても「自分には価値がある」と感じられる安定した土台の上で初めて、変化の激しい環境でも平静を保ちながら挑戦し続けられる。
牛尾氏が今、自分のチームで求められていると実感しているのは、「2~3カ月ごとに組織のトップを驚かせる新しいものを生み出す」という役割だ。これは一見プレッシャーに聞こえるが、AIによってプロトタイプ作成のスピードが劇的に上がった今の時代、思いついたアイデアをすぐに形にして検証できる環境があれば、それは実現可能な仕事になりつつある。
インターネットの登場が産業と職業の形を変えたように、AIエージェントの普及もまた構造的な変化をもたらす。ただし、その変化の全貌は誰にも分からない。組織も、マネジメントも、現場のエンジニアも、全員が試行錯誤しながら最適解を探っている最中だ。
その中で牛尾氏が選んだのは、予測するのをやめることだ。「わからない」を認めた上で、変化が来たら来週対応する、新しいツールが出たら来週試してみる、その積み重ねが結果として多くの人を「出し抜ける」スピード感になると言う。ただ、変化を受け止めて着実に動き続ける──それがAI時代の平常運転だ。
そして最後に牛尾氏が強調したのは、変化そのものを楽しむ態度の大切さだ。失敗を恐れ、変化を嘆くのではなく、失敗を単なるフィードバックとして受け取り、次に生かす。変化が起きるのを当然のこととして受け入れ、心の平安を保ちながら学び続ける。それが「部下としてのAI」を使いこなし、AI時代に価値を出し続ける人間の本質的な姿だと、牛尾氏は語る。
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