- 2026/08/26 07:10 掲載
なぜ駿台は「東大〇人合格」をやめるのか?少子化でも伸びる“塾業界の新たな稼ぎ方”(2/3)
大手予備校・駿台はなぜ「東大〇人合格」発表をやめるのか
合格実績が新たな受験生を呼び、その受験生が翌年以降の実績を生むという循環が、予備校のブランドを支えてきた。
駿台グループが運営する予備校大手・駿台予備学校の東大合格者数は、同業大手である河合塾や東進を抜き、業界トップだ。だが、2026年度入試から大学別・一部学部別の合格者数の掲載を取りやめる予定であることを2025年8月に発表した。
駿台は難関大学への高い合格実績で知られる大手予備校であり、その判断は業界に大きな変化が起きていることを示している。
駿台が理由として挙げたのが、受験生の学習手段の多様化だ。1人の受験生が複数の予備校に通うケースも見られるようになった。彼らは、対面授業は予備校A、映像授業は予備校B、英語は専門塾といったように、複数の塾やオンライン教材を併用している。
この場合、1人の合格者が複数の予備校の実績に計上される可能性がある。
駿台によると、2025年度の東京大学一般選抜前期日程の合格者は2997人だったが、主要な塾・予備校がそれぞれ公表した東大合格者数を合計すると、実際の合格者数を大きく上回ったという。同社は、単一の教育機関が公表する合格者数について、数値の信頼性や意味が形骸化しているとの認識を示した。
問題は、数字が正しいかどうかというより、同じ受験生が複数の予備校の合格者数に含まれる状況では、各社の数字を単純に比較しても、予備校の教育力、実力を正確に測れないことである。
駿台は合格者数の掲載終了と同時に、1人ひとりの志望や学習スタイルに対応する「個別最適学習」を強化する方針も示した。最難関大学を目指す受験生だけでなく、それぞれの目標に応じた進路実現を支援するという。
ここから読み取れるのは、駿台が難関大学対策から撤退するということではない。むしろ、難関大学への強さを維持しながら、合格者数だけでは評価されにくい幅広い受験生を取り込もうとしているということだ。そして、この方向転換はほかの予備校にも波及するだろう。
少子化によって、最難関大学を目指す上位層の母数が大きく増えることは期待しにくい。一方、学校の成績を伸ばしたい生徒、推薦・総合型選抜を目指す生徒、地方からオンラインで学ぶ生徒など、予備校が対象にできる層は広い。
駿台による合格者数の掲載終了は、単なる広報方針の変更ではない。予備校が上位層の合格実績を競う従来型のビジネスに加え、1人ひとりの受験過程を支援するサービスの重要性が高まっていることを象徴している。
一般入試が受験生の〇%に…大学入試が変わってきている?
2025年度の大学入学者のうち、総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(旧推薦入試)による入学者は計53.7%と過半数を占めた。私立大学ではその割合が6割を超える。
少子化が進む中、大学側にとって一般選抜(旧一般入試)以外の入学方式には、生徒数を確保できるメリットがある。生徒側にとっては、学力試験の得点だけでなく、活動実績、志望理由、面接、小論文などを通じて多面的な評価を受けることができるようになる。
2025年度から選抜区分の変更があるため過去年度との単純比較には注意が必要だが、大学入学者に占める一般選抜経由の割合が半数を下回っている現状は、10年以上前に大学受験を経験した層にとって驚きだろう。
予備校側からすれば一般選抜対策だけでは、大学入学者の過半数を占める総合型・学校推薦型選抜の関連需要を十分に取り込めない時代になったとも言える。
こうした変化を踏まえ、塾側も単に授業を売る場所から、受験を管理する場所へと変わりつつある。一般選抜向けの集団授業は、共通の教材と講義を多くの生徒へ提供することで収益を上げる。一方、総合型選抜や学校推薦型選抜では、志望理由書、小論文、面接、活動実績の整理など、生徒ごとに異なる対策が必要になる。
こうした個別対応は、塾側に人材や運営ノウハウを求める一方、新たな収益源にもなる。通常授業に加えて、小論文、面接、出願書類の添削、学習管理などを組み合わせれば、高付加価値なサービスとして提供できるからだ。
塾それ自体に求められる機能も、成績向上だけではない。志望校の選定、学習計画の作成、出願までのスケジュール管理、書類の添削、定期的な面談など、受験プロセス全体を支援する役割が大きくなる。個別指導塾だけでなく、河合塾や東進などの大手も、総合型選抜や学校推薦型選抜に対応した専門講座を展開している。
塾が販売するものは、「講師が教える授業時間」から、「志望校合格までの受験プロセス全体」へと広がりつつある。生徒1人あたりの売上高を伸ばす余地が生まれる一方で、個別対応を担う人材やシステムへの投資力が、塾の競争力を左右するようになる。
ただし、こうした高付加価値なサービスを、全国の受験生が同じように利用できるわけではない。大手予備校の校舎や専門コースは都市部に集中し、地方では塾の選択肢が限られているのが現状だ。
政府・官公庁・学校教育のおすすめコンテンツ
PR
PR
PR