- 2026/08/26 07:10 掲載
なぜ駿台は「東大〇人合格」をやめるのか?少子化でも伸びる“塾業界の新たな稼ぎ方”
経済、不動産分野のライター。小売・飲食を中心とした企業分析記事や、都市開発、不動産市況に関する記事を手がける。理系の会社員だったが、ライター業に専念するため独立した。趣味で簿記・ファイナンシャルプランナーの資格を取得する。
少子化なのに市場は約2倍…「塾ビジネス」がしぶといワケ
少子化が叫ばれて久しい。総務省の人口推計によれば、15歳未満人口は1982年以降45年連続で減少し、2026年4月1日時点で1329万人、総人口に占める割合は10.8%となっている。2000年以降には子どもを対象としたテーマパークは各地で閉園が続いた。だが子どもの数が減り続けているのにもかかわらず、学習塾市場は伸び続けている。経産省の「特定サービス産業動態統計調査」によると、調査対象となった主要な学習塾の年間売上高は2004年の3,078億円から2024年の5,934億円と成長を見せ、過去20年間で市場規模は約2倍に拡大した。
少子化が進行する一方で、学習塾市場は右肩上がりを続けている
上場する学習塾大手にも増収傾向が見られる。東進ハイスクールなどを運営するナガセの売上高は、2020年3月期の459億円から2025年3月期には642億円へ増加した。
個別指導塾「TOMAS」や家庭教師事業を展開するリソー教育グループも、同期間に売上高を252億円から342億円へ伸ばしている。M&Aによる事業規模の拡大を考慮する必要はあるものの、少子化がそのまま大手各社の減収につながっているわけではない。
学習塾の売上高は、単純化すれば「通塾する生徒の数」と「生徒1人あたりの売上高」で決まる。潜在顧客となる子どもの数が減る中で、通塾率の上昇やサービスの高単価化が市場を下支えしてきた。
1人っ子世帯が増える中で、子ども1人に対して積極的に教育投資を行う親が増えた。また、共働き世帯が増え、親による学習のサポートが難しくなったことで塾に学習指導や進捗管理を求める需要が高まっている。
また、塾が提供するサービスの選択肢も広がった。従来の集団授業に加え、個別指導、映像授業、タブレット教材、オンライン講座などが普及している。通常授業とは別に、夏期・冬期講習、模擬試験、追加講座などを利用する生徒もいる。塾側は、1人の生徒に複数のサービスを提供することで、年間の売上高を積み上げられるようになった。
特に個別指導は、集団授業よりも講師1人が担当する生徒数が少ない分、授業料を高く設定しやすい。学習計画の作成や面談、進捗管理まで含めて提供すれば、単なる授業時間ではなく、学習支援全体を商品にすることもできる。
つまり、学習塾市場の拡大は、子どもが通塾する割合が高まったことに加え、事業者側がサービスを多様化し、生徒1人から得る売上高を引き上げてきたことが大きい。
しかし、こうした高付加価値化は、従来の予備校が競争力の象徴としてきた「難関大学に何人合格させたか」という指標の意味も変えつつある。 【次ページ】大手予備校・駿台はなぜ「東大〇人合格」発表をやめるのか
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