- 2026/08/27 19:55 掲載
AIブームで英国に「架空データセンター」急増…電力網を狂わせる投機案件を選別へ
ここでいう「架空」とは、存在しない施設を虚偽申請しているという意味ではない。オフジェムが問題視しているのは、接続する確固たる意思を欠く「投機的」案件、そして計画許可や最終投資決定(FID)を得られず、接続まで進まない可能性が高い「実現性の低い」案件である。
オフジェムが2月13日に公開した資料によると、英国では電力網への接続を求める需要案件の契約オファー容量が、2024年11月の41GWから2025年6月には125GWへ急増した。これはデータセンターだけでなく需要案件全体の数字で、2026年2月11日の英国のピーク電力需要45GWの約2.8倍に当たる。
一方、ナショナル・エナジー・システム・オペレーター(NESO)の別調査では、約140件、計約50GWのデータセンター案件を確認した。このうち71件、約20GWは最終投資決定(FID)まで進んでいると回答した。残る案件がすべて「架空」というわけではないが、オフジェムは接続待ちには、計画許可やFIDを得られず実現しない可能性の高い案件が相当数含まれているとみている。
対策の中心が、新たな「データセンター・コミットメント・フィー」だ。オフジェムは、大規模データセンターに対し、接続オファーを受け入れてから接続準備が整うまで、1MW当たり23万7,500~71万2,500ポンド(約5,143万~1億5,429万円)を確保させる案を示した。通電まで進めば返還する一方、ルールに沿って計画が進まなければ返還しない仕組みだ。
さらに、信頼できる最終利用者が存在するか、納期の長い電気設備を調達しているか、開発に必要な資金力と技術力を持つかといった進捗確認も導入する。つまり、電力網への接続待ちを事実上の「予約枠」のように押さえるだけの案件を減らし、本当に建設へ進むプロジェクトを残す狙いである。
問題は接続の遅れだけではない。オフジェムは、実現性の低い案件が接続待ちに残れば、将来必要となる電力網やインフラ投資について、実態と大きく異なるシグナルを送る恐れがあると指摘している。
英ナショナル・エナジー・システム・オペレーターも8月19日、旧制度の「接続キュー(電力網への接続待ちの案件)全体がピーク時には2030年に英国が必要とする規模の約4倍まで膨らんでいたと説明した。なお、この「約4倍」はデータセンターだけではなく、発電や蓄電なども含めた接続キュー全体の数字である。
英政府の狙いは、データセンター投資そのものを抑えることではない。英政府は「AI成長地域(AI Growth Zones)」の整備を進めているが、その大きな課題が電力網への接続の遅れだ。そこで、実現性の低い案件が電力の接続枠を長期間押さえる状態を減らし、実際に建設が進むデータセンターなどへ、限られた電力容量を優先的に振り向ける考えだ。
オフジェムは9月16日まで意見募集を続けるという。英国は「架空データセンター」を排除しながら、実現性の高いAIインフラへ限られた電力容量を振り向ける制度設計を急いでいる。
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