- 2026/10/30 06:10 掲載
USJも太秦映画村も「18禁」…なぜテーマパークは「子どもお断り」で客を呼ぶのか?(2/2)
連載:テーマパーク経済学
USJだけじゃない!ディズニーの「ある数字」が凄かった
大人の需要を取り込めれば、客単価を高める機会も増える。子どもの付き添いとして訪れていた大人が、自分の楽しみのために追加でお金を使うようになることも期待できるからだ。「残像」の専用チケットは税込1,900円から。より強い恐怖を味わいたい人に、追加で料金を支払ってもらう仕組みだ。入場者を増やすだけでなく、1人の来場者に、プラスアルファで体験を買ってもらう。
夜まで楽しめる企画なら、滞在が延び、食事や買い物につながることも期待できる。大人向け施策は、集客と園内消費の両方に働きかけられるのである。
最近のテーマパークでは、こうした客単価を高める動きが進んでいる。たとえば、東京ディズニーリゾートでは、2026年3月期の入園者数が前期とほぼ同じだった一方、ゲスト1人当たり売上高は前期比3.2%増の1万8,403円となり、過去最高を記録した。
有料サービス「ディズニー・プレミアアクセス」の増加や、高価格帯のチケットの構成比が上がったことなどが寄与している。来場者を増やすことに加え、1人の来場者にどれだけお金を使ってもらうかが、テーマパークの経営にとって重要になっているのだ。
テーマパークのように日常的に行く場所ではない、「ハレ」の場所の場合、その重要性はより高い。
なぜ、わざわざ客を断る? 「18禁」の知られざる役割
こう書くと、「それなら単に大人も取り込めるような企画を作ればよく、『18禁』にする必要はないのではないか」と思う人もいるだろう。確かにそうだ。しかし、あえて年齢制限を設けることにも意味がある。そもそも、USJの過激なホラー企画は今回が初めてではない。2015年には「トラウマ~最恐実験病棟~」が登場。翌2016年には「トラウマ2~最恐実験病棟~」、2017年には「トラウマ3~最悪監禁実験室~」と続いた。
いずれも激しい恐怖演出や、実際の虫を用いるなどのショッキングな体験を伴うものであり、ネット上でもその怖さや気持ち悪さが話題となった。
「トラウマ2」では参加者が拘束された状態で恐怖を味わう演出を取り入れ、R-15指定の上、別途チケットの購入と誓約書の提出が求められるほどだった。強烈な恐怖を求める客に特別な体験を提供する試みは、10年以上前から続いているのである。
このような企画を運営する上で重要になるのが、コンプライアンスや来場者への配慮だ。同じお化け屋敷でも、怖いものが好きな人には楽しく、苦手な人には苦痛になる。子どもなら、なおさらだろう。家族で楽しめるテーマパークだからといって、保護者が内容を十分に把握せず子どもを連れて入れば、想像を超える恐怖に子どもをさらしてしまう。
特に最近では、ネットの口コミやショート動画をきっかけに企画を知る人もいる。その際、話題だけが伝わり、刺激の強さや注意事項が十分に伝わるとは限らない。
楽しそうだと思って参加したら不快な思いをしてしまったり、子どもを連れて行ったら、むしろ子どもにとってトラウマ体験になってしまったりすることも起こりうるだろう。
こうした期待とのずれは、苦情やSNS上での批判の拡散につながりうる。年齢制限を明確にすることには、こうした食い違いを防ぐ意味があるわけだ。年齢制限や事前の説明、同意の確認は来場者を守るとともに、企業にとってもトラブルや炎上を予防する仕組みとして機能する。
これは言い換えれば、「楽しみ方」をゾーニングしているともいえる。誰もが入れることを前提に表現を抑えるより、体験の性質を示し、参加できる人を明確にしたほうが、強い刺激を「楽しい」と感じる客に応えやすくなる。より徹底して大人を満足させ、総合的な満足度を高めることができるわけである。
「18禁」とだけ聞くと、どこか刺激的すぎる印象を受けるが、その背景には、大人が自分のために訪れる理由を作ることと、安心して楽しめるように参加条件を明確にすることの、2つの意味がある。
少子化の中で新たな需要を開拓しながら、異なる好みを持つ来場者にどう応えていくか。USJや太秦映画村の取り組みから見えてくるのは、あえて誰もが入れる場所にはしないことで、そこに行きたいと思う人の楽しみを深める、テーマパークの経営なのである。
コンテンツ・エンタメ・文化芸能・スポーツのおすすめコンテンツ
コンテンツ・エンタメ・文化芸能・スポーツの関連コンテンツ
PR
PR
PR