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  • 2010/01/05

事例からみる運用現場の「Must Can’tの問題」:新規案件を獲得する運用管理ケーススタディ(2)

トーマツイノベーション 安達 裕哉氏、磯上 直人氏

前回、子供が両親からお小遣いをもらうという簡単なケースをもとに、契約の案件化には「課題の設定」「解決策の提示」、そして「関係者の説得」というプロセスで進めることが有効であるとご紹介しました。今回はそれをさらに掘り下げて「課題の設定」について詳しくみていきましょう。

トーマツ イノベーション 安達裕哉、磯上直人

トーマツ イノベーション 安達裕哉、磯上直人


安達裕哉
トーマツ イノベーション
シニアマネジャー
筑波大学大学院環境科学研究科修了後、大手コンサルティング会社を経てトーマツ イノベーション株式会社に入社。現在、主としてIT業界を対象にプロジェクトマネジメント、人事・教育制度構築などのコンサルティングに従事する。そのほかにもCOBIT、ITサービスマネジメント、情報セキュリティにおいても専門領域を持ち、コンサルティングをはじめとして、企業内研修・セミナー活動を積極的に行う。
磯上直人
トーマツ イノベーション
シニアコンサルタント
東京大学理学系研究科生物化学専攻修了。日本電気に入社。製造業のシステム開発業務に従事。その後、トーマツイノベーションに入社。現在、IT業界を対象にプロジェクトマネジメント、情報技術戦略などのテーマのコンサルティングに従事。

前回のおさらい

 まず、前回の内容を簡単に振り返ってみましょう。運用・保守業務の多くの仕事は、いずれ海外に流出するであろうという厳しい見通しの中で、一人ひとりの運用技術者は契約案件化能力を向上させることが大切であるというお話でした。

 そして、契約案件化は「課題の設定」「解決策の提示」、そして「関係者の説得」というプロセスで進めることが有効であるとご紹介しました。今回はそれをもう少し掘り下げて、特に「課題の設定」方法について詳しくみていきましょう。

 まずはちょっと余談ですが、昨今、「クラウド」という言葉を頻繁に耳にするようになっています。前回の記事を送稿した直後の11月13日の日本経済新聞に、次のようなクラウドに関する記事が掲載されました。

ソニー、データ拠点集約――「クラウド」普及が後押し、米HPはコスト半減効果
 ソニーは社内情報システムの運用拠点を集約する。現在は世界の約60拠点で生産管理や製品の受発注などに関連したデータを管理している。2015年をメドにアジアと欧米で大規模なデータセンターを1つずつ整備し、各地の機能を統合する。インターネット経由で必要なソフトを活用する「クラウドコンピューティング」の登場を機に、社内情報システムを再構築する動きが今後広がりそうだ。
 アジアではシンガポールに開設した大規模データセンターを活用して域内の拠点に分散している機能を集約する。日本では東京都と愛知県の拠点を12年3月までに閉鎖して機能を移管。中国、インド、東南アジアなどの機能も段階的に移し、現在は約40カ所あるデータセンターやサーバールームを10年代半ばまでに原則1カ所に減らす。(2009年11月13日 日本経済新聞)

 景気悪化により、企業内のコスト削減へのプレッシャーはますます強くなっており、自社で情報システム資産を保有することなく、ITサービスを安価に利用できる「クラウドコンピューティング」の採用が今後進むことが予想されます。クラウドという新しい情報システムの利用形態の登場も、運用業務の海外への流出に拍車をかける要因の1つになると言えるでしょう。

課題設定 お小遣い獲得の場合

 さて、前回の最後に、子供が両親からお小遣いをもらうというケースを考えていただきました。両親が困っていることとして「植木鉢の水やり」、「車の掃除」、「ゴミ出し」の3つを提示しましたが、これ自体を行うのが課題の設定です。親が子供にお小遣いをくれるときはどのようなときでしょうか。まずは皆さんの幼少時代を振り返ってみてください。

  • 授業参観の日に親が見ている前で立派に答えた
  • 親が猫の手も借りたいくらい忙しいときに買い物を手伝った
  • テストで良い点を取った

また、お小遣いだけでなく、現物支給のケースもあったはずです。

  • 遊園地でチケットを入れるホルダーを買ってくれた
  • 祖父母の家に行く電車賃をくれた
  • 卒業式できる服を買ってくれた

 それでは、なぜ親は子供に物やお小遣いを与えたのでしょうか。この問いこそ、第2回で取り上げる中心テーマです。結論から申し上げると、それは親の抱える「Must Can’tの問題」を解決したからです。「Must Can’tの問題」とは、絶対に解決しなければならず、かつ、自分では解決できない問題のことです。

 図1を見てください。親はさまざまな「不平・不満」を抱えていました。ただ、その不平・不満には、見過ごしても大して影響のないものから、なにかしら打つ手を考えなければならない「問題」と呼ばれるものまでいろいろとあります。ところが、すべての問題を解決しようとすることは、時間とお金の都合などもあって難しいことも多いでしょう。そこで、なんらかの基準で問題の優先順位付けを行い、解決しよう決めた問題を「課題」といいます。


※クリックで拡大

 したがって、子供が親からお小遣いをもらおうと考えるときも、「ただ単に親の困っていること」、つまり「問題」ではなく、それが「親にとって解決しなければならない問題」、つまり「課題」であるかどうかを見極める必要があります。

上記の例では、

  • 見栄っ張りの親にとって、授業参観で自分の子供が優れていることを、他の親に見せ付けることは欠かせないことである
  • 遊園地のチケットは乗り物に乗るたびに提示しなければならないが、ずぼらな親はいちいち財布に入れていたら取り出すのが面倒な上に、紛失のリスクがあるため何らかの対策が必要である

などを仮定すると、これらは、「Must(やらなければならない)」の条件を満たしています。

 ただし、お小遣いをもらうためには、「Must」だけでは不十分です。さらに、「Can’t(自分ではできない)」の条件を満たす必要があります。もしこの条件を満たさないと、親は自分で課題を解決してしまい、子供をはじめ、外部の手を借りなくても済んでしまうためです。

上記の例では、

  • 授業参観でいいところを他の親に見せつけたいが、親である自分が頑張るわけにはいかない
  • 子供のチケットを自分が提示するわけにはいかない

のように、親自身では解決できない、またはしにくいことが必要です。

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