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  • 【中堅中小IT化】売れる電子商店は、ターゲット層を極限まで絞り込む

  • 2006/08/28 掲載

【中堅中小IT化】売れる電子商店は、ターゲット層を極限まで絞り込む

照国電機 インターネット事業部 堂園秀隆氏

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身内5人だけの小さな電器屋さんが東京都練馬区にある。これだけなら、どこの街にでもある珍しくない話だ。しかし、この店はただの電器屋ではない。月商2000万円以上を稼ぎ出す、超人気インターネットショップなのだ。サイトを立ち上げた堂園秀隆氏によれば、設立当初はページを見に来る人すらいなかった散々な状況だったという。そのサイトが大きく成長した秘訣は、ターゲット層の徹底的な絞り込みと、ユーザーの声を取り入れた顧客サービスにあった。
設立当初は、ページを見に来る人すらいなかった


 堂園氏が「てるくにでんき」をオープンしたのは1996年6月。Windows95が発売された直後で、インターネットブームがまさに起ころうとしていた頃だった。実家の照国電機は卸会社だが、バブル崩壊後経営が思わしくなく、販路を広げようという思いからだった。

【売上アップ】堂園秀隆氏
照国電機株式会社 インターネット事業部
堂園秀隆氏 照国電機株式会社
インターネット事業部
「小売りを社内ベンチャー的に始めようと思ったのですが、店舗を構える資金もないし、昼間は卸の営業をやっていましたから時間もない。運命というより、消去法で家電製品のインターネットショップを始めたんです。」

 小売りの経験もないまま始めたサイトだが、設立当初はほとんど見に来る人すらいない悲惨な状態だったという。無名の小さな会社が、インターネットに乗り出したところで通用しないのか。しかし、Webを見てみれば、地方の小さな商店でも月100万円を売り上げているようなところもある。うちと何が違うのか。関西のとある人気ショップでTシャツを買い、驚いた。Tシャツに特化した店作り、購入後も商品の具合を尋ねるメール、返品にも気軽に応じるきめ細やかなサービス。

「商品が違うというより、気持ちが違う。日本の小売りがいかにレベルが高いかを思い知らされました。」

 この経営者に、てるくにでんきのサイトを見てもらった。そこでいわれたのが、「何屋さんだかわからないね」という言葉だった。そして、同じことを一般ユーザーである義兄にもいわれた。


中小サイトは、
ウルトラカテゴリを目指せ


 人気のある中小商店のサイトは、対象顧客を具体的にイメージし、商品を徹底的に絞り込んでいるということが段々とわかってきた。インターネットは検索エンジンが大きな力を持つ世界だ。検索結果のトップ3に入らなければ、集客はおぼつかない。

「Tシャツが欲しい人が検索した時、衣料品店とTシャツ専門店ではどちらに行きますか。自分の欲しいものが決まっているなら、より専門色の強い、いわば扇情的なキーワードを持つ店に行くでしょう。売れているショップを見ていくうち、なぜみんな商品を限定しているのかわかってきました。中小商店は、専門店の中の専門店『ウルトラカテゴリ』にならなければなりません。」


自分の強みは、
照明に関する専門知識にあった


 それでは、自分は何を専門とすべきなのか。堂園氏は、自分の得意分野とは何かを考えた。
「元々卸でも照明器具の取り扱い割合が多かったんです。取り付けのマネジメントや顧客との打ち合わせの中で、照明に関するノウハウも溜まっていました。自分にとっては当たり前の知識なんですが、カタログを見るだけではわからない照明の選び方というものは、普通の人にとってのどから手が出るほど欲しい情報なんですね。そして、新築の家の仕上げに照明を取り付け、お客様が喜ぶ顔を見るのは達成感があり、自分が一番好きな仕事だと気付いたのです。」

【売上アップ】
実際に施行した顧客の写真をページに掲載。
商品の具体的イメージが伝わる工夫だ
 照明器具に商品を絞り込んでいくと、顧客のイメージがハッと見えたという。
「インターネットで照明器具を買うのは特殊です。商品単価は高く、割れ物。それでも買う人は、こだわりの人でしょう。そうなると、売れるのは効率のよい蛍光灯というより、白熱灯やシャンデリア。(インターネット環境の整っていなかった当時)昼間に会社からネット接続できる、マンションを新規購入した人ではないか。」

 このような顧客が求める商品に絞り、照明の選び方やコーディネートの仕方などの情報をページに掲載すると、アクセス数が1、2ヶ月で急増し、質問もよく来るようになった。そして、最初の商品が売れると、次々に注文がやってきた。

 うれしいことに、工務店が仕切るため、入る余地がないと思っていた新築住宅ユーザーからも注文があった。工務店はコストダウンのため、照明器具にそれほどお金を掛けられない。ユーザーが自分で照明器具を探す事例が思いの外、多かったのだ。さらに、ホテルや地方の工務店からも注文が来るようになった。


対応のよさが口コミで広がり、
さらなる集客につながる


 注文は増えてきたが、照明器具のリピーターは少ないのではないか。それが不安要素だったが、幸いにも杞憂だった。

「インターネットで照明器具を買うのは誰にとっても不安ですが、その分、うまく買えた時の満足度も大きいのでしょう。あそこはきちんと対応してくれるという口コミが発生しました。」
 てるくにでんきは、近郊の顧客であれば直接取り付けに行き、そこで顧客の生の声を聞くようにしている。どういう設置をしているのか、どうしてうちを選んでくれたのか、問題点はなかったか。そして、顧客の了解を得て、設置例をWebページ上で公開する。これが、ページを訪れた人にとって貴重な情報になるという好循環を生む。

「うちは店舗もショールームもありませんが、休みの日をつぶしてショールームに行く人はそれほど多くないでしょう。また、住宅展示場やモデルルームで照明を選ぶ場合でも、けっきょくはカタログを見て決めるわけです。」

 てるくにでんきは、インターネットの普及前に設立したというアドバンテージがある。これから小規模な会社がオンラインショップに進出するのは手遅れだろうか。

「そんなことはないでしょう。きちんとターゲットとなる顧客・市場がイメージできれば勝てると思います。商品が具体的であればあるほど、ページを作るコストもかからなくなります。SEOなどをしなくても、そのジャンルの中でトップになれます。中小企業の方ほど、そういう強みを持っているところが多いでしょう。これまではニッチな情報・商品と顧客をマッチングさせることができませんでしたが、ネットならば、顧客がどこからでも探せますから。」

(取材・文:山路達也)


会社名:照国電機株式会社
インターネットネット事業部
所在地:東京都練馬区旭町3-30-1-102
主な業務内容:インターネットによる情報提供、照明器具の通信販売
URL:http://www.terukuni.co.jp/ TEL:03-5383-3276

●脚注
■SEO:最強のSEO対策完全版
Search Engine Optimizationの略。検索エンジンの検索結果上位に自分のWebページが表示されるようにする工夫を指す。ページ内容と関係ないキーワードを埋め込むといった不正なSEOは、「検索エンジンスパム」と見なされ、検索結果に表示されなくなることもある。


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