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- 2011/05/23 掲載
MTI 社長 安永豊氏:日本郵船のクラウド戦略、今IT部門が果たすべき役割とは
レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama
クラウド活用の真のメリット
「ITコストを低減し、いつでも、どこでもデータの保存と取り出しができること、スケーラビリティや可用性が確保されること、あるいは事業継続性が担保できること」
しかしこうした価値は、いわば人/モノ/金が削減できるというレベルの話で、経営から見た場合、現在のクラウド利用は、コスト削減のための単なる手段に過ぎないのではないかと指摘する。
「クラウドの利用によって削減した経営資源を、一体何に使うのか。それこそ議論されるべきポイントだ」(安永氏)
ここで安永氏は、クラウド活用の一つのヒントとして、船のリサイクル業務に関する事例を紹介した。
船の寿命は一般的に約20~30年で、最後はバングラデュッシュなど新興国の海岸に運ばれ、そこでスクラップにされる。海運業界の特徴として、運航国/船籍国/荷主国/入出港国/寄港国など、多数のステークホルダーがグローバルに存在し、さらに船がスクラップにされるまでの約30年間にわたって、船舶内の有害物質などのデータの維持管理が必要となる。船にまつわる規則も日々変化し、船が作られた時の法令はスクラップ時には当てはまらないことも多いという。
そこで重要になるのが、データの維持管理だ。たとえば、有害物質については有害物質一覧表(インベントリ)を作成して備え置き、定期的に検査することが求められる。リサイクル作業を担う新興国での労働災害や環境汚染を最小限にするために義務化された取り組みの一つだ。
そこで海運業界横断で行ったのが、インベントリ作成のプロセスとデータを共有化することだ。これをクラウド環境で管理する。主体となるのは、船舶の検査や認証を行う日本海事協会だ。
造船時には、造船所が部品メーカーや材料メーカーなどから必要部材を調達するが、その際、各部材に含まれる有害物質の情報をクラウド上のシステムに登録する。船は一生の間に何度も部品が変わるので、その度にインベントリは更新されることになる。「これまで紙ベースで管理してきたが、その限界に来ていた」(安永氏)
また船主や各種メーカーも世界に点在しているため、関係者全員が作業できるための仕掛けも必要だ。こうした場面でもクラウドは有効となる。上記の例を引き、安永氏は、企業や国の壁を越えられること、そしてグローバル化の中で求められる企業間の連携が促進されることが、クラウドの持つポテンシャルだと指摘する。
「そのポテンシャルによって新しい価値が生まれ、社会変革を起こすことができる。これこそがクラウド活用の真のメリットではないか」(安永氏)。
【次ページ】事業部門とITとをつなぐための取り組み
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