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  • 2013/12/11

ピーチ・アビエーション 井上慎一CEOが取り組んだ、3つの航空ビジネスイノベーション

2011年2月に設立され、翌年3月に関西国際空港を拠点に、国内初のLCC(ローコストキャリア)として就航したPeach Aviation(ピーチ・アビエーション)。国内LCC競争の先駆者であり、関西を中心に高い認知を誇るようになり、10月27日にはいよいよ成田空港への乗り入れも果たした。その取り組みは世界的な評価も集め、2012年9月には世界経済フォーラムの「Global Growth Companies(世界急成長企業)」のメンバーにも選出された。LCC元年と呼ばれた2012年からおよそ1年、LCC全体でみれば、決して順調な船出だったわけではない。そうした中で、ピーチが順調な滑り出しを果たし、高い評価を集めた背景には、3つのステージで推し進めたイノベーションがあった。

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

執筆:レッドオウル 西山 毅、構成:編集部 松尾慎司

レッド オウル
編集&ライティング
1964年兵庫県生まれ。1989年早稲田大学理工学部卒業。89年4月、リクルートに入社。『月刊パッケージソフト』誌の広告制作ディレクター、FAX一斉同報サービス『FNX』の制作ディレクターを経て、94年7月、株式会社タスク・システムプロモーションに入社。広告制作ディレクター、Webコンテンツの企画・編集および原稿執筆などを担当。02年9月、株式会社ナッツコミュニケーションに入社、04年6月に取締役となり、主にWebコンテンツの企画・編集および原稿執筆を担当、企業広報誌や事例パンフレット等の制作ディレクションにも携わる。08年9月、個人事業主として独立(屋号:レッドオウル)、経営&IT分野を中心としたコンテンツの企画・編集・原稿執筆活動を開始し、現在に至る。
ブログ:http://ameblo.jp/westcrown/
Twitter:http://twitter.com/redowlnishiyama

成功しているLCCは“きちんと飛ばす”

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Peach Aviation
代表取締役CEO
井上 慎一 氏
 Microsoft Conference 2013で登壇したPeach Aviation 代表取締役CEOの井上慎一氏は冒頭、「LCCには“格安航空会社”という和訳が定着しているが、いい迷惑だ」と切り出した。「本来の意味は“低コストのキャリア”であり、LCCは“いかに低コストで、航空会社を運営できるか”という知恵の結集したビジネスモデルだ。低運賃はあくまでその結果であり、安かろう、悪かろうではない。きちんと収益を担保した上で、低運賃を実現できる構造を持った航空会社である」と続ける。

 LCCモデルに厳格な定義はないが、4つの特徴がある。1つめが、単一の機材を使い、単一のシート配列をしていること。これによって整備時などのコストを抑制し、シップチェンジの際の手間を最小化している。

 2つめが、シンプルなシップローテーション(機材計画)を採っていること。ベース(主基地)からの単純往復を基本として、さまざまなリソースをベースに集中させている。

 3つめが、機材稼働時間を最大化していること。1機の1日当たりのフライト時間を、レガシーキャリア(=通常の航空会社)の1.5~1.8倍の稼働率で回している。コストを下げるために工場を高稼働させるという製造業の考え方と同じ発想だ。

 そして4つめがノンフリル(飾りのない)なサービスで、サービスを有償化するということ。たとえば昼食を採ったばかりの乗客に食事を出しても喜ばれない。通常のサービスはノンフリルで、プラスアルファのサービスを求める乗客には有料で提供する。

 またLCCは低コスト構造だけでなく「非常に高い品質も確保している」(井上氏)。

 実際にそうなのか。井上氏は「定時出発率」「手荷物事故発生率」「就航率」という3つの指標で、世界最大規模のLCCであるアイルランドのRyanair(ライアンエアー)と、レガシーキャリア3社(Lufthansa、Air France、British Airways)とを比較してみせた。

 まず、定時出発率とは、きちんと定刻通りに飛んでいるかを示す指標で、Ryanairが90%なのに対し、他3社は83~85%だ。

 次に、手荷物事故発生率は、手荷物1000個当たり、何個の荷物が紛失あるいは破損したかを示すもので、Ryanairが0.6個なのに対し、他社は約11~19個。

 最後の就航率は、予定していた便がきちんと飛んだかを示すもので、Ryanairが99.6%なのに対し、他3社は96.6~98.4%。この数字はいずれもそれほど悪くはないが、ここでもLCCがレガシーキャリアを凌駕している。

「基本品質がしっかりしているということが、成功したLCCの共通点。その理由は非常にシンプルで、飛行機が予定通りに飛び、予定通りに高稼働すれば、コストは下がるということ。成功しているLCCは航空会社としての基本品質、つまり“きちんと飛ばす”ことをしっかりと行っている」

ピーチのサービスモデルは“空飛ぶ電車”

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 全日本空輸(ANA)の中にLCC設立プロジェクトが立ち上がったのが、2008年1月。その後3年を経てピーチは誕生した。井上氏もANAの出身だ。

「LCCのビジネスモデルをコピーするだけなら、航空会社そのものは1年で設立できる。しかし我々は新しい航空ビジネスモデルを構築したいという心意気で、3年かけて研究し、航空当局に対するQ&Aも完璧に用意した」

 その結果、通常は会社設立から18か月かかると言われている初フライトを約1年で果たした。

「3年間の蓄積が実った成果として、2012年3月1日の就航時にいきなり2路線、1日14便(7往復)から開始した。通常は1路線、1日4便程度だ。さらに3月下旬には長崎、4月には鹿児島、5月にはもう国際線を就航した。スピード感を持った展開をしており、2013年10月には大阪(関空)-東京(成田)間のフライトも開始した」

 また同社は、ANAに加えて2社の投資ファンドから出資を受けているが、ANAの出資比率は38.67%で、意図的に連結子会社にしなかったという。

「成功しているLCCは世界に何社もあるが、その数十倍もの数が失敗して消えていっている。原因を調査したところ、その多くがフルサービス系の会社の連結子会社になっていた。やはり親会社のナレッジがどうしても入ってしまう。そんなLCCはほぼ全滅している」

 設立当初から、LCCのビジネスモデルをプラットフォームにした新しい航空ビジネスモデルを目指してきたというピーチ。就航から約1年半が経ち、そろそろ手掛かりが見えてきたと井上氏は語る。

「ピーチのサービスモデルを一言でいえば、“空飛ぶ電車”だ」

 電車なので、切符は自分で買ってもらう。つまりチケットは、乗客にWeb上で購入してもらう。また切符はお金を入れなければ、出てこない。だから予約をしたら、すぐに決済をしてもらう。さらに電車では座席指定席は有料だ。そこで座席を指定したい乗客は有料で座席指定をしてもらい、自由席でいい乗客にはコンピュータが自動で席を決める。

 搭乗手続きについても、5秒でチェックインできる無人のチェックイン機を開発した。電車の自動改札のイメージだ。飲食物も新幹線のワゴンセールと同じく、有料で提供する。

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ピーチの機内食「PEACH DELI」

 ちなみに現在のピーチの提供座席数は、ANA、JAL、スカイマークに次いで国内第4位で、就航後の平均搭乗率は85.2%と非常に高く、2013年9月には目標に対して2か月の前倒しで搭乗者数300万人を突破した。就航率は2013年4~9月の実績で99.8%と国内トップだ。

【次ページ】ピーチ流3つのイノベーション

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