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- 2014/11/25 掲載
MITメディアラボ所長 伊藤穰一氏が語るイノベーション「アートや科学に機能を重ねる」
中国の経済特区、深セン市で起こるイノベーション
同氏は今の時代について「インターネットが普及し、モノを中心に経済がゆっくり動いていた時代が終焉を迎え、先の予測がつかないカオスの時代に入ってきた」と語る。
“先の予測がつかないカオスの時代”とはどういうことか。それは、ミクロの遺伝子レベルからマクロの都市レベルまで、すべてのスケールにおいて複雑性と関係性があり、裏でつながっているということ。伊藤氏は「都市設計も従来のように見えるものだけの事象を追うのではなく、ソーシャルメディアなども含めた、見えない事象も考えていかなければならない」と語る。
「インターネットが浸透して通信コストが下がり、流通やコラボレーション、コミュニケーションなどのコストが抑えられるようになった。そうなると、イノベーションを創出するコストも下がる。いま日常的に使われているヤフーやグーグル、フェイスブックといったサービスは、最初は学生がコストをかけずにビジネスモデルもないまま構築したものだった」(伊藤氏)
この現象は、すでにモノづくりの製造現場にも波及している。3Dプリンターが登場し、どんなプロトタイプも、誰でも手軽につくれる時代がやってきた。べンチャーが製造を担え、学生自身が大量にモノをつくり出せるようになった。
伊藤氏は、いまマニファクチャリングが大変盛んだという中国の経済特区、深センの事例を挙げた。
「深センでは工場長もマネージャーも従業員も現場に住み込みで熱心に働き、技術を集中的に磨いている。戦後の日本のような活気を彷彿させるが、それ以上に多くの人材ネットワークがあり、独自のエコシステムが働いている」(伊藤氏)
深センでは、MP3プレイヤー、Bluetooth、GMSなどの基本機能が盛り込まれた携帯電話が約900円で売られているそうだ。
実際に組み立てを簡素化するために、ネジレス設計の工夫も凝らしている。単に低コストで製造できるだけではなく、そのノウハウを持つ優秀な技術者がいるという証明だ。伊藤氏は「このようにイノベーション・コストはどんどん下がり、誰でも実現できる時代が到来している。これからはハードウェア技術者が全体のプロジェクトをマネジメントすることになるだろう」と予測を述べる。
【次ページ】ムーアの法則を凌駕する「シンセティックバイオロジー」の進歩
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