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  • 2014/03/28

「グローバルITガバナンス」の先進事例と成功要件<前編>

グローバルITガバナンスに関し、国内、海外の大手製造業10社の事例を調査しました。本調査で把握した先進事例と成功要件を、これから2回に分けて紹介します。なお、本書で「グローバルITガバナンス」とは、「グローバルグループにおいて、ITの導入活用でビジネスに対して価値を提供する仕組み」としています。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

 まず、海外企業の事例ですが、大手製造業3社の調査で、グローバルITガバナンスの目的、つまり「ビジネスに提供する価値」は、以下となっています。これらの目的は、経営トップから具体的にCIOに指示されています。

1) 各国バラバラなシステムを事業、ローカル(地域・国)を越えて標準化、統合することによって、ビジネス側のグローバルな業務改革を支える。
<ビジネス側のグローバルな業務改革例>
・ 間接業務の標準化統合と中国などへのオフショアリング
・ グローバルグループでの部材やサービスの集中購買の範囲拡大
・ 物流拠点統廃合とグローバルな在庫偏在の是正
・ 評価制度統一と合わせた人材の迅速なグローバル再配分の実現
・ グローバルレベルでの業務品質の維持と継続的な改善

2) 大規模なM&A後に並存していた両社の情報システムを統合し、ITコストを削減する。

3) グローバルグループでバラバラに開発されていたシステムを統合し、迅速な経営判断を可能とし、合わせてITコストを削減する。

 海外事例における上記1)の目的達成(グローバルな業務プロセスとアプリケーションの統合によるビジネス側のグローバル業務改革実現)では、まずビジネス側で、グローバルな組織や業務プロセスの改革がビジネスの戦略として明確化されています。IT側では、CIOがアプリケーションやデータセンター、データマートの具体的な削減値などをKPIとして経営トップにコミットし、ITに関わるグローバルな人事権、予算権をCIOに集約したトップダウンな体制が確立されています。海外3社の内の2社では、CIOには、IT側の改革の実績のある人材を、社外からヘッドハントして推進を行っています。

 一方、国内大手製造業7社の場合、ITガバナンスの主な目的、つまりビジネスへの提供価値は、以下でした。

1) ITコストをグローバルに管理し、重複投資を避けたりITの集中購買を促進したり、投資案件を厳しく見ることで、ITコストを削減し、投資効果を上げる。

2) システム部門発で業務プロセス、アプリケーションをグローバルに標準化・統合し、M&Aによる経営構造改革に迅速に対応し、ビジネス側のグローバルな業務改革を支援する。

 上記1)では、経営トップからの指示は「ITをグローバルに見ろ」といった方針レベルのものが多く、具体的に何をするかはシステム部長が考えています。上記2)は、海外大手企業の事例と似ていますが、海外企業に見られる、ビジネス側のグローバルな業務改革の戦略は曖昧なまま、システム部門の問題意識に基づいて推進しており、ビジネス側がこれに付いてきておらず、リターン(投資効果)が出てないところもあります。逆に、業務プロセス、アプリケーションのグローバル標準化、統合を検討したものの、ビジネス側の業務改革が経営の優先順位の上位にないと判断し、あえてグローバル標準化、統合の実施を遅らせている企業もありました。

 施策がシステム部門長によって作られたものであり、またCIOが兼任であるところが多いことから、築かれたグローバルITガバナンスは、ITに関わるグローバルな人事権、予算権のシステム部門への集約などの、組織、権限に関わるものではなく、ガイドラインやレビューの仕組み構築など、現状を大きく変えないものでした。しかしこのようなボトムアップなガバナンスでも、グローバルな重複投資の防止や、投資前評価を厳格に進めることで、ITコスト削減や投資効果向上の効果が得られています。(国内企業で7社中1社だけ、専任CIOを擁する企業で、経営トップから明快なITコスト削減目標を与えられ、CIOがグローバルな人事権、予算権を握り、トップダウンにITガバナンスを確立しているところがありました)

 以上から、国内企業が、ビジネス側主導でグローバルな業務改革戦略を明確化し、これを実現するためにトップダウンなグローバルITガバナンスが確立できれば、今以上に大きなビジネスの価値を、もっと早く得られる可能性があると考えられます。

 例えば今回調査した海外企業の場合、日本の現地法人には、間接部門は殆ど残っていませんでした。既にCOE(センターオブエクセレンス)に集約され、あるいはオフショアリングによりサービスが提供されています。日本企業でも、間接業務のグローバルな標準化、統合は効果が大きいと考えられます。しかし、このようなグローバルな業務改革は、システム部門主導で進めることは難しいはずです。ビジネス戦略の曖昧なままでアプリケーションだけ標準化統合しても、投資の割りにリターンは限られます。ビジネス側主導でグローバルな業務改革を考え、これを支えるITの目指す姿が明快になれば、グローバルITガバナンスもトップダウンに強力に進められ、早く大きな効果が得られるでしょう。

 今回調査した国内企業で、トップダウンなグローバルITガバナンスを確立していない、CIOが専任でない、ビジネス側でまずグローバルな業務改革の戦略が明示されていない企業では、経営トップ、経営幹部は、グローバルな業務改革の効果や、自社がそのような改革で海外企業に遅れていることを認識していないか、認識していても、それを自分達経営者の課題だと認識しておらず、システム部門に任せればいいことであると考えている可能性があります。

 今回調査した海外企業3社は、2000年頃から5年前後、2007年までには、グローバルな業務プロセスとアプリケーションの統合を完了し、これを基盤として、グローバルな業務改革を推進しています。調査した国内企業で、グローバルな業務プロセスとアプリケーションの統合を完了したところはありませんでした。つまり国内企業は、海外企業に、7年(2014年-2007年)以上の差をつけられていることになります。この差は、グローバル競争上、早めに是正すべきです。

 国内企業で、まず経営者が、先行する海外企業のグローバルな業務改革とこれを実現するためのグローバルITガバナンスの実態を知り、ビジネス側が主導でグローバルな業務改革に関わる戦略を明確化し、これを実現するためにトップダウンなグローバルITガバナンスを確立できれば、得られるビジネス価値はもっと大きなものになると考えられます。

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