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  • 2014/05/26

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書 「運とセンスを手に入れる」三菱電機

三菱電機 顧問(元開発本部長) 堤和彦氏

フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第11回は、三菱電機 顧問(元開発本部長) 堤和彦氏に聞いた。堤氏は、研究者として車載事業で新しい製品領域を立ち上げられ、その後マネジメントとして三菱電機の研究開発をリードしてきた。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載


頑張るだけでは大きな事はできない


――研究者時代には、現在高いシェアを持っている車載用GMRセンサーを開発され、その後姫路製作所では製造部長も歴任され、そして巨大企業の研究開発を率いてこられました。このような高いパフォーマンスを上げるため、日ごろ意識していることはあるのでしょうか。

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三菱電機
顧問(元開発本部長)
堤 和彦氏
【堤和彦氏(以下、堤氏)】
研究者は、皆 頑張っています。しかしそれだけでは差は出ない。「運」と「センス」の問題があります。これは、運を手繰り寄せ、センスを磨くということだけではありません。一人の研究者が、必要な運とセンスをすべて持っているということはないでしょう。運とセンスを持つ人に会って、そういう人と一緒に仕事をすることも含んだ話です。

――運とセンス、ですか。

【堤氏】
私は磁性材料が専門で、若いころは磁気ディスクやVTRのヘッドなどの開発をしていました。ご承知のように、それらの事業は今は当社にはありません。その後は、光磁気ディスクの開発を行い、人工衛星や電子交換機、PCなどに使おうとしましたが、DVDなどとの競争に勝てませんでした。ただ、光磁気ディスクの開発で得た磁性薄膜形成技術は、当時最先端であったGMR(巨大磁気抵抗効果)に活用できると考え、自分の技術を活かして会社に貢献したい一心で、社内でMRAM(磁気抵抗メモリー)などに使えないかと奔走しました。しかし半導体の部門からは、DRAMで十分、GMRなど上手くいくはずがないと言われました。そんな折に、課長研修で姫路製作所の人と知り合いになり、この人を頼って車載事業を行っている姫路製作所に提案に行きました。そこで、車載用の磁気センサーを提案すると、この人の次に課長になった人から、磁気センサーは外部調達しているが内製化したいと言われ、GMRを用いたエンジン制御用の磁気センサーを開発することになりました。95年から開発をスタートし、1997年には若手を連れて姫路に赴任、本格的な開発に入り、1999年12月に初出荷を果たしました。

――なるほど、課長研修での出会いがなければ、磁気センサーの開発には至らなかったかもしれない訳ですね。

【堤氏】
そうですね。当時は、国際会議で招待講演をするなど、自分の担当している技術では相当頑張っていたと思いますが、それだけでは大きな成果は得られません。やはり運と、それから自分の技術を活かすいろいろな考え方ができるセンスが必要です。自分にそれが足りなければ、そういう人と出会い、一緒に仕事をすることが重要です。ちなみに、当時の課長は、現在の当社専務で、やはり実力はもちろんですが、運とセンスを兼ね備えていたんだと思います。彼は、私のような、研究開発から来た事業が皆目わからない人間の話をしっかりと聞いてくれました。新しい製品の可能性を見切るセンスがあったんだと思います。そしてこの出会いがあって、それまで小さな事しかできなかった自分が、大きな成果をあげられるように変わっていきました。

 出会いということでは、当時の 自動車機器事業本部のトップが半導体事業から来た人で、現場には1円でも切り詰めさせる厳しい人でしたが、「GMRのような不連続なことをやるのはいいことだ」と言われて、開発費として10億円を付けてくれました。当時半導体の部門からは磁性薄膜など上手くいかないと言われていた中で、このような決断をしてもらえたのも、このトップのセンス、自分がそういう人に出会えた運のなせる業だと思えます。おかげで、GMRセンサーは、今は高いシェアを獲得し、当時 電装品中心だった車載事業にセンサーという新しい製品を加えることができました 。

――なるほど。運とセンスの重要性はよくわかりました。しかし、センスは磨く努力もできると思いますが、運はどうすればいいのでしょう。

【堤氏】
自分と違う考え方やバックグラウンドの人間。社内のみならず社外も含めて、積極的に会うことが重要です。そして、これはと思う人には、個人的な付き合いも含め、深い付き合いをすべきです。親近感が得られる程に関係が深まれば、その人から学べることも多くなる。一緒に仕事ができる可能性も広がるでしょう。運とセンスがある人は、まず「幸せそう」です。それは、能力に加えてセンスや運があるので、仕事もプライベートもうまくいっているからだと思います。また、センスのいい人は、自分と違う切り口、考え方を持っている。是非意見を聞きたいと思える人です。そういう人と付き合えば、自分の引き出しが増えます。

――幸せそうな人、意見を聞きたい人は、そもそも魅力的ですから、会っていても楽しいですよね。

【堤氏】
そうですね。そして、自分と違う切り口や考え方は、思考を複線化するために重要です。人間、良い考えが浮かぶと勢いそちらに突っ走ってしまうことが多いでしょう。しかし、上のポジションに行くほど、自分の決断の影響が大きくなりますから、思い込みや狭い視野は禁物です。

 それから、運とセンスのある人が上長である場合、彼、彼女は、きちんと決断してくれます。研究開発は、何が正しいか不明な段階で決断しなければ、すべてが明らかになってからでは遅い。もちろん裏は可能な限り取ったうえで、後は信念をもって決断できる。こういう人に出会い、自分を信じてもらえれば、自分が正しいと考えることを実現できる可能性が高まります。

【次ページ】V字型人間が求められる

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