開閉ボタン
ユーザーメニュー
ユーザーメニューコンテンツ
ログイン

  • 会員限定
  • 2015/02/05

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書 「Whyを突き詰めてWhat to beを極める」横河電機

横河電機 フェロー、IA最高技術責任者 高橋公一氏

フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第14回は、横河電機 フェロー、IA(Industrial Automation)最高技術責任者 高橋公一氏に聞いた。高橋氏は、営業からキャリアをスタートさせ、プロジェクトエンジニア、ソフト製品開発、そして営業本部長として海外ビジネスを拡大し、現在はフェロー、IA-CTOとして同社の技術開発をリードしている。

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役 経営コンサルタント 野間 彰

アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。

アクト・コンサルティング
Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp

これまでの連載


Whyを繰り返す中で本質を見出す

――計装・制御・情報システムの世界的な企業で、技術開発をリードしてこられました。また、グローバル標準化においても、日本を代表してFF協会・HART協会・FDTグループ理事などを務められている。さらにキャリアの中では、営業本部長まで務められ、海外事業を成長させてこられた。このような高いパフォーマンスを上げるため、日ごろ意識していることはあるのでしょうか。

photo
横河電機
フェロー、IA最高技術責任者
高橋公一氏
【高橋公一氏(以下、高橋氏)】
Whyを突き詰めて、What to beを極めることは、常に意識して実践してきました。Whyを繰り返して問い、その過程で物事を抽象化して考え、本質にたどり着く。そこから、本当に何を達成するか考えることです。

――たとえばどういうことでしょう。

【高橋氏】
かつて、プラント制御において、アラート(警告やメッセージ)を削減するという問題に取り組んだことがあります。プラントの制御システムが、オペレーターに対してアラートを出すのですが、この量が大変多い。これを削減しようということです。

 そこで、Whyを何度も問い続けました。そもそも多いとは、どのくらい多いのか。実はそれがわからない。そこで、まずアラートを測るシステムから作りました。それから、実際にどのようなアラートがあるか分析しました。中には、ミスオペレーションを知らせるものから、単なる記録のためのアラートまで色々とありました。一日に何万件と発生しているものの中で、本当は何が必要なのかを考えなければむやみに削減するわけにはいきません。どんどんWhyで深堀して考えていくうちに、アラートの本質が、実は単純にプラントとオペレーターのインタフェースである、つまり、間にある制御システムはあまり関係ないことに気が付きました。

 そこで、プラントから人に示される情報と、人からプラントに指示される情報のバランスを調べました。すると、プラントから出される情報が多いが、人からプラントへの情報(指示)が少ない、つまり人がやるべき仕事量が少ないのに無用なアラートが多い状況や、その逆で、プラントからの情報は少ないのに、人が多くの作業や指示をしている状況、つまり不安定で、沢山の改善余地がある状況が浮き彫りになってくることに気が付きました。また、アラートを出した制御システムのHMIの向こうにいる人間(オペレータ)がどんな作業をしているのかまで把握し、これを合理化することまで考えられるようになりました。

――なるほど。まさにWhyを繰り返す中で、本質を見出し、そこからWhat to beを極めた例ですね。これを、キャリアの中で常に励行してこられたのですか。

【高橋氏】
そうです。この考え方は、エンジニアリングそのものであると思います。ただ言われた通りにやるのであれば、そこで必要なのはHow toだけになってしまう。匠の世界では、それも重要でしょうが、それでは大きな価値、新しい価値を生み出すことはできません。

 たとえば先のアラートの話ですが、アラートの内容を確認していくと、お客様が「ここの温度が上がったら、このプロセスを止める」と言われた。そこで「はいそうですか」と納得してしまったら、それはエンジニアリングではない。「なぜ温度上昇で止めるのですか」と聞かなければならない。すると、実は測りたいのは圧力上昇だが、圧力が測れないから間接的に温度で代替えしていることがわかる。だったら、圧力上昇を直接測れるシステムを作れば、より精度の高い制御ができ、またビジネス的に見ても、そこで使われている温度センサーシステムを全て自社製品に置き換えることができるという発想が可能になります。

――なるほど。しかし、Whyを繰り返して本質を見出せば、それで新しいものを生み出せるのでしょうか。

【高橋氏】
WhyからWhat to beは重要な考え方ですが、現在はさらに必要なことがあります。私は、最近の若い技術者は勉強すべきことが多過ぎてとても大変だと思っています。自分たちが若い時には、まだまだ新しい発見や発明の余地がある技術領域は多かった。しかし今は、どの領域も徹底的に追及されている。そのような中で新しいものを作り出すことは容易ではない。これまでの技術の蓄積をすべて自分のものにしようと思ったら、いくら時間があっても足りません。だから、自分が得意な領域は強くしながらも、関連する他の領域については、中身はブラックボックスでいいから、原理の本質部分をしっかりと理解しておくことが重要になります。また、最先端の技術や課題を知ることも必要です。そして、自分の得意分野を基礎において、最先端と蓄積された原理から、新しいものを作り上げていくことが必要になる。

――原理を押さえるとは、たとえばどういうことでしょう。

【高橋氏】
実は当社の若手が、「ETロボコン」に出場しました。彼らはロボットの走行にPID制御[偏差比例(P)、積分(I)、微分(D)の3要素で行うフィードバック制御方式]という方法を使っていたのですが、2つの車輪をどう動かすかを、この制御で直接駆動していました。その結果、ロボットの動きがガタガタとする。これはPIDの応答速度が遅いためです。PIDの本質は、比ゆ的に言うならば、先読みして最適化をジワリと決めて、その後安定するというものです。そこで、車輪の制御ではなくて、方向を決めるために使えばいいとアドバイスしました。若手は、その後もっといろいろと工夫をして、チャンピオンシップ大会で準優勝を取ることができました。

――なるほど。技術の本質を捉えるためにも、Whyを繰り返して本質を見出すことが重要なようですね。

【高橋氏】
それは、おっしゃる通りですね。案外、技術の本質をズバリと書いた本はないものです。その領域の専門家に会って議論して見出すことが必要でしょう。技術者の中には、人に質問することはタブーで、わからないことは自分で調べるとか、人に聞くには、まず自分が先にその分野を徹底的に勉強しないといけないと考える人がいますが、グローバル競争では、競争相手は悠長に待ってくれません。聞くべきことは有識者に聞き、その上で、そこで得た本質を使ってどのような新しいものを生み出せたかで勝負すべきです。

 今や、新しい基礎発明・発見が生まれる可能性のある領域は限られています。多くの領域では、技術の結合や連携が重要です。特に応用開発では、多くの原理と最先端を知り、技術の組み合わせの中から別の新しいアスペクト、価値を生み出すことが重要です。そしてそのためには、躊躇せずに最先端に聞きに行くことが必要です。有識者に会いに行き議論する。そこで本質を見出す。さらに「貴方よりも良く知っている人は誰か」と聞き、その人に会いに行く。そうすれば、最後にはもうこれ以上は解が無いという最先端に到達します。私はその上で、さらに仕事とは関係ない全く異なる得意分野を持ち、自分だけのオリジナリティで解を見出すことがこれからの技術者の価値になると考えています。その為に、自分の幅を広げることと、もうひとつ、これからは特に、色々な大量情報をトータルに考える統計学だけは基礎力として押さえておくことが必要ではないかと思います。

【次ページ】必ず解決する強い気持ちがエンジンになる

イノベーション ジャンルのトピックス

イノベーション ジャンルのIT導入支援情報

関連リンク

PR

ビジネス+IT 会員登録で、会員限定コンテンツやメルマガを購読可能、スペシャルセミナーにもご招待!