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  • 2013/05/09 掲載

日本が誇るフェロー・CTOに学ぶノウハウ定義書 「目利き力を高める」コニカミノルタ

コニカミノルタ 専務執行役 開発統括本部 管掌 杉山高司氏

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フェロー、CTOの高い業績の背景には、独自の考え方、思考・行動の原則=ノウハウがある。これらのノウハウには、企業の創造力、イノベーション力を高めるパワーがある。そして、日本を元気にするヒントがある。本連載では、フェロー、CTO自身に、自らのノウハウを語っていただく。第6回は、コニカミノルタ 専務執行役 開発統括本部 管掌 杉山高司氏に聞いた。杉山氏は、これまで開発本部を率い、技術戦略を担当し、現在は開発統括本部を管掌。また、IT業務改革部、生産統轄部も担当している。

アクト・コンサルティング 取締役 野間彰(R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議)

アクト・コンサルティング 取締役 野間彰(R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議)


野間 彰
アクト・コンサルティング 取締役
経営コンサルタント

1958年生まれ。大手コンサルティング会社を経て現職。
製造業、情報サービス産業などを中心に、経営戦略、事業戦略、業務革新、研究開発戦略に関わるコンサルティングを行っている。主な著書に、『ダイレクトコミュニケーションで知的生産性を飛躍的に向上させる研究開発革新』(日刊工業新聞社)、『システム提案で勝つための19のポイント』(翔泳社)、『調達革新』(日刊工業新聞社)、『落とし所に落とすプロの力』(リックテレコム)、『団塊世代のノウハウを会社に残す31のステップ』(日刊工業新聞社)、『ATACサイクルで業績を150%伸ばすチーム革命』(ソフトバンク クリエイティブ)などがある。


R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議

Webサイト: http://www.act-consulting.co.jp/rd_dc.html

「R&Dダイレクトコミュニケーション推進会議」は、対面型コミュニケーション、ITを用いた遠隔地間の双方向コミュニケーションを活発化させ、研究開発部門の知的生産性を高める活動を推進しています。ダイレクトコミュニケーションは、研究所の、風土改革、オフィース改革、研究所の新設・改造を通じて達成します。

<推進会議メンバー>
株式会社コクヨ、日揮株式会社、株式会社アクト・コンサルティング

これまでの連載


目利きの力で適切な判断をする


――さまざまなコア技術を持つ、巨大なグローバル企業の研究開発をリードしてこられました。このような高い業績を得るために、日ごろ常に意識して実践してこられたことはあるのでしょうか。

photo
コニカミノルタ
専務執行役
開発統括本部 管掌
杉山高司氏
【杉山高司氏(以下、杉山氏)】
技術を見る、いわゆる目利きの力を高めることが重要です。各技術の専門家には当然専門領域ではかなわない。しかし、技術の本質を捉え、素性の良し悪しを見抜く、専門家とは別の視点が必要です。

――目利きの力とは、どのようなものでしょうか。

【杉山氏】
まず、テーマが進まないという場合、素性のいい、解決可能な課題なのか、解決は困難で、思い切って方向転換を決断すべき課題なのか、これが見極められなければなりません。そうでないと、ミニマムの投資でマックスの成果を上げることはできません。競争相手に先んじてものを出せない。また、素性の悪い課題に向う研究者をそのままにすると、研究者本人にとっても大きなマイナスです。

――技術課題の素性の良し悪しとは、具体的どのようなことでしょうか。

【杉山氏】
昔の話ですが、プリンティングシステムの開発で、このシステムがなかなか安定して機能しないという課題がありました。課題の対策の中で、そこに使う材料を少し変えると結果が変わることに気づきました。一条の光が見えるわけです。そこで、材料を少し変え、ダメでまた変え、と繰り返していました。しかしこの課題を一歩引いてみると、材料の不足する部分を作像プロセスの設定条件でカバーしているのですが、この作像プロセスのロバストネスの限界には、材料をどう変えても届かないことが分かりました。つまり、プロセスと材料の双方の限界にズレがあったのです。こういう課題は、対応するサブシステムを作るなど、いち早く方向転換しなければならなかった訳です。

――なるほど。しかし、課題の素性を見切る目利き力を付けることは、簡単ではないですね。

【杉山氏】
まず、多面的な視点が必要です。先ほどの例のように、材料だけではなくプロセスまで見るといった見方です。それから、研究者は一条の光が見えると、そこに向って邁進するものですが、そもそもその道が本当に正しい道なのか、一歩引いて確認することも重要です。

――一条の光が見えたら、「これだ」と思って突き進む気持ちは、良くわかりますね。

【杉山氏】
ええ。突き進むことが悪いと言っているのではありません。やってみないと分からないこともある。競争上、スピードも重要です。しかし、進みながら同時に一歩引いて、「果たしてこの道が本当に正しい道と言えるのか。他にどんなオプションがあるのか。その中で、何故この道が正しいといえるのか」自分がきちんと説明できるか、確認することが重要です。

――研究者は、ある意味突っ走るところもあるでしょうから、マネージャーがその辺をしっかり見て、本質的な質問を投げかけることも必要ですね。

【杉山氏】
そうですね。それから、目利き力を高めるには、技術の本質を掴みきれているかも重要な視点です。マネージャーは、ここもしっかりと問い、アドバイスしなければなりません。

――一技術の本質を掴むとは、どういうことでしょうか。

【杉山氏】
技術の本質、物理特性の本質と言ってもいいでしょう。我々の研究開発は、実験室でうまくいくだけでは意味がありません。量産まできちんと実現できなければならない。この場合、技術のメカニズムがちゃんと説明できていなければ、たとえ実験室でうまくいっても、量産で失敗する可能性があります。

――研究開発段階で、すべてのメカニズムを明らかにできるのでしょうか。

【杉山氏】
我々の製品は、多くの擦り合わせ技術によって成り立っていますので、量産前にすべてを明らかにすることはできません。また、納期もあれば、投入できるリソースには限りがある。そんな中で、まず物理特性の本質は、出切る限り掴む努力は重要です。その上で、説明が難しいものは、それまでの開発プロセスから判断して決断することも必要です。たとえばここまで実験をした結果、この範囲までは確かであるといった判断です。データーを見れば、納期やリソースの制約からブラックボックスとして認識せざるを得ないものでも、どこまで技術的に発展させられるか、どこが限界か、掴めるようになります。

――すると、しっかりとした開発プロセスを進むことが重要ですね。

【杉山氏】
そのとおりです。すべての機能を見たか、機能展開を徹底すること。すべての機能で技術の本質を吟味し、何はメカニズムを掴んだか。何は実験を繰り返し、発展性を見切ったか。説明できなければなりません。

――つまり目利き力は、何もマネジメントだけが持つべき能力ではない。研究者一人ひとりが開発プロセスとして実践し、自問自答するという意味では、すべての研究者が持つべき力ということですね。

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