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  • 2022/01/13 掲載

海運業界の世界ランキング2022:日欧中でしのぎ、コンテナ不足で運賃急騰のゆくえ

連載:あの業界のグローバルランキング

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コロナ禍でのコンテナ不足によって、需要がうなぎ上りとなり、コンテナ運賃が急騰し、活況を呈している海運業界。だが、国際競争は激しさを増し、海を越えたアライアンスや経営統合が進んでいる。コンテナ部門ではイタリア発祥のMSC、デンマークのマースクなどの欧州勢が上位を独占する一方で、中国や台湾などアジア勢の追い上げも激しい。その中で、かつて「海運王国」と呼ばれた日本勢も、日本郵船と商船三井、川崎汽船の大手3社がオーシャン・ネットワーク・エクスプレスとしてコンテナ事業を統合するなど合従連衡が進んでいる。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

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コンテナ不足は深刻さを増している
(Photo/Getty Images)

海運はグローバルなサプライチェーンの大動脈

 コロナ禍によって、海運に欠かせないコンテナが不足した結果、「海上運賃が急騰し、物価上昇にもつながりかねない」とメディアで報道されていることは、皆さんもご存じだろう。一方で、日本郵船、商船三井、川崎汽船の大手3社をはじめ、海運各社が「コロナ特需」による活況を呈する格好となった。

 それでは、なぜコロナ禍によって、コンテナ不足に陥ってしまったのだろうか? 指摘されているのは、次のようなメカニズムだ。世界のコンテナの大半が中国で生産されているのだが、2019年にまず、米中貿易摩擦によって、中国のコンテナ生産が激減した。そこに降ってわいたのがコロナ禍で、2020年も経済の先行きへの懸念などから、中国のコンテナ生産は回復しなかった。

 加えて、世界の主要都市でロックダウンが実施され、物流が停滞。また、世界最大の消費市場である米国などでは、港湾物流を外国人労働者に依存しているため、コロナ禍で労働力が確保できずに、港湾物流が機能停止に陥ってしまった。

 ところが、日米欧をはじめとする主要国では「巣ごもり需要」が旺盛で、2020年後半からは中国の工業生産や輸出も復活したため、拡大する物流の需要に対して、コンテナの供給が極度に逼迫(ひっぱく)してしまった。グローバル化したサプライチェーンが今や緊密に結びつき、海運業がそのキープレーヤーになっていることを、コロナ禍が改めて浮き彫りにしたというわけだ。

 海運業とは、一般に船を使って旅客や貨物を海上輸送する事業のことだ。現在では、旅客船の活躍する場は限られているが、貨物については海が依然、主力の輸送ルートである。生産拠点が世界各地に分散するという商品流通のグローバル化によって、海運業の存在感はむしろ増しているとも言える。

 とりわけ、貿易立国として発展してきた日本にとっては、海運業は欠くべからざるものだ。国際間の海運を「外航海運」と呼ぶが、外航貨物船には、コンテナ船、バラ積み貨物船、油送船(タンカー)、自動車船などさまざまな種類がある。

海運世界第1位はスイスの会社

 海運会社の経営規模の目安として、一般に通用しているのがコンテナ船積載量だ。海上コンテナは、海上では圧倒的に輸送量が多く、世界のどこでも流通しており、しかも、規格が万国共通だからだ。コンテナ船の積載能力やコンテナターミナルの貨物取扱数などを示す「TEU」(1TEU=20フィートコンテナ1個に相当)という貨物容量の単位があるのだが、TEUに基づいた海運業界の世界ランキングは以下の通りとなる。

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コンテナ船の運搬能力別世界ランキング

 2021年の世界第2位から第1位に躍り出たのは、MSC(メディタレニアン・シッピング・カンパニー)グループだ。不思議なことに海のないスイスに本社があるのだが、もともとはイタリアが本拠地。1970年にイタリア出身のジャンルイージ・アポンテ会長がたった貨物船1隻で創業し、徹底した顧客志向、中古船を安く買い入れるなどの合理主義経営で急成長、ついに世界の頂点を極めた。

 同族経営や家族主義経営でも知られる。コンテナ船が主力だが、グループではクルーズ客船なども運航。世界155カ国以上に営業拠点があり、日本法人のエムエスシージャパンもある。

 一方で、世界首位を長年、独走しながら、その座をMSCに明け渡し、第2位に後退したのが、北欧バイキングの伝統を継承するデンマークのA・P・モラー・マースク(1904年創業)だ。

 効率的なコンテナ流通網を文字通り、世界の津々浦々に張り巡らしている。また、世界有数の海運会社だった英国・オランダ系のP&Oのコンテナ部門、ドイツのハンブルク・スードを買収するなど、M&Aを積極的に繰り返してきた。世界最大級の海運コングロマリット(企業複合体)の地位は依然、不動だ。日本支社も、戦後間もない1947年に設立。港などで「青地に白い星」のマークがついたコンテナを見かけたら、それがマースクのコンテナだ。

 第3位のCMA-CGMは1996年、フランスの大手海運会社であるCMAとCGMが経営統合して誕生した。2005年には同じフランスの大手海運会社のバルマスも合併し、巨大化。CMAは国有化されていた時期もあり、リーマンショック後はフランス政府が経営再建を支援するなど国策色が強い。2016年には、シンガポールのNOL(ネプチューン・オリエント・ラインズ)を傘下に収めた。

 世界のビッグ3に共通するのはコンテナ事業に強いということ。コンテナは取り扱う量が多いほど物流を効率化できる。スケールメリットを享受しやすいのだ。

 第6位であるドイツのハパックロイドは日本で言えば、日本郵船に比するべき名門の海運会社で、ドイツ政府も経営をバックアップしてきた。経営統合によって1970年に発足。コンテナ事業を強化し、2014年にはチリのCSAVのコンテナ部門、2017年にはクウェートのUASC(ユナイテッド・アラブ・シッピング・カンパニー)を合併した。

【次ページ】台頭するアジア勢、日本は大手3社が共闘

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