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  • 2015/06/22 掲載

半導体業界のグローバルランキング:東芝やルネサスにも巻き返しのチャンスあり

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世界の半導体産業は、日米韓が支配していると言っても過言ではない。中でも、絶大な支配力を持っているのが米国勢だ。世界第1位のインテルや第3位のクアルコムは、PCやスマートフォンの「CPU/MPU」で覇権を確立した。韓国勢も、第2位のサムスン電子を筆頭に、メモリーで圧倒的なシェアを保っている。一方、かつて「半導体王国」を築いた日本勢は、いまだ不調から脱していない。巻き返しの可能性はあるのか。

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

執筆:野澤 正毅 企画・構成:編集部 松尾慎司

野澤 正毅:1967年12月生まれ。東京都出身。専門紙記者、雑誌編集者を経て、現在、ビジネスや医療・健康分野を中心に執筆活動を行っている。

半導体は鉄鋼に代わる「産業の米」

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 半導体がITに欠かせない部品(デバイス)であることは、みなさんもご存じだろう。ところが、半導体がどんなものなのか、詳しく知っている人は意外に少ない。半導体とは、もともと物理の用語で、電気を通す導体(銅・アルミニウムなど)と、電気を通さない絶縁体(ゴム・ガラスなど)の中間の性質を持った物質を指す(現在では、半導体を材料とするデバイスも「半導体」と呼ぶようになった)。

 最もポピュラーな半導体が、整形手術などでも使うシリコン(ケイ素)だ。半導体は、電圧や温度などを変えると、導体になったり、絶縁体になったりする。その特異な性質を利用して、通信機やコンピュータの電気信号を変換したり、調整したりするデバイスにするのだ。

 半導体の原型が「トランジスタ」。1947年に米国のベル研究所で開発され、のちに「20世紀最大の発明」ともてはやされた。ちなみに、トランジスタとは、トランスファー(伝達)とレジスター(抵抗)を組み合わせた造語という。

 半導体は戦後、目覚しい進歩を遂げた。それは急速な小型・軽量化の歴史であった。トランジスタはどんどん圧縮され、IC(集積回路)、さらにはLSI(大規模集積回路)が生まれた。それに伴って、巨大だったコンピュータも小さくなり、誰もが手軽に使えるパソコンが登場、80年代には猛烈なスピードで普及した。

 今ではスマートフォンやタブレット端末にまで小型化している。また、超小型のマイコンをさまざまな機械に組み込むことも可能になり、自動制御など機械の高性能化も進んだ。AV機器、家電製品、自動車、ロボット、医療機器など、あらゆる分野で半導体が使われている。

 製品に占める半導体の割合は、パソコンでは約30%だが、自動車でも約7%に達するという。鉄鋼に代わって、半導体が現代の「産業の米」と言われるようになったゆえんである。

 ひと口に半導体と言っても、CPUやRAMなどいろいろな種類があり、目的・用途に応じて組み合わせて使う。意外に知られていないが、ランプとして身近になったLED(発光ダイオード)も、太陽光発電を担う太陽電池も、半導体の仲間である。

 半導体の研究開発には莫大な費用がかかるため、半導体メーカーは、投資対効果を高めようと、得意分野に生産を絞り込む傾向が強まっている。また、大手半導体メーカーの多くは、開発・設計・製造・組み立てという工程を自社で抱え込んでいるが、開発に特化したIPプロバイダ、設計だけを手がけるファブレスメーカー、製造だけを請け負うファンドリメーカーなどが台頭、半導体産業の分業化も進んでいる。

知っておきたい、日本の半導体事業が凋落した本当の理由

 世界の半導体産業をこれまで牽引してきたのは、日本と半導体の母国である米国だ。とりわけ、半導体の小型・軽量化、低コスト化では、コンパクトなモノづくりを得意とする日本の技術力が発揮された。80年代には、日本の半導体は、世界シェアの過半を獲得するほどの快進撃を見せたのである。

 ところが、90年代以降、日本の半導体産業は一転、凋落の一途をたどる。バブル崩壊後の「失われた10年」によって、半導体メーカーも業績低迷を余儀なくされ、設備投資を思うようにできなかった。その結果、技術開発で米国などに遅れをとったという説がある。

 一方で、日本のお家芸だったDRAMでは、韓国などの新興国に追い落とされ、シェアを奪われた。「前門の米国」と「後門の韓国」の挟み撃ちによって、敗れたと言われている。

 しかし、日本の半導体産業が国際競争力を失ったのかと言えば、そうとは言い切れない。というのも、フェアプレイではなく“場外乱闘”で負けたのが、日本の大きな敗因といえるからである。

 米国は、日本の半導体産業の勢いを恐れて日本政府に圧力をかけ、86年に「日米半導体協定」を結ばせた。「外国製半導体の日本国内シェアを20%以上にする」といった無理難題である。おかげで、日本の半導体メーカーは大打撃を蒙った。

 一方、韓国などの新興国メーカーには、「産業スパイで日本から技術を盗み出した」という疑惑がかけられている。その典型例が韓国のSKハイニックスである。東芝工場に勤めていた技術者が、SKハイニックスに東芝のフラッシュメモリの機密情報を渡したことが発覚、逮捕された。東芝は、SKハイニックスに約1000億円の損害賠償を求めて、2014年3月に東京地裁に提訴。SKハイニックスは同年12月、東芝に2億7800万米ドル(約300億円)を支払うことで和解した。“盗用”を事実上、認めた形である。

 こうした脅威を防ぐことは、各企業の努力だけでは無理がある。通商交渉や法規制が必要なのである。

【次ページ】日本勢に巻き返しのチャンスはまだまだありそう

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