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  • 2015/07/16 掲載

保険業法改正でもビクともしない、ソニー生命のビジネスモデル

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エレクトロニクスで知られるソニーだが、今や金融事業が収益の柱になっているのはご存じのとおり。2015年3月期でソニー全体の連結決算が2期連続、1,259億円の最終赤字を計上しても、連結金融子会社のソニーフィナンシャルホールディングスの営業利益は13.5%の2ケタ増。金融事業の中核はソニー生命だが、保険業界が2016年5月の改正保険業法、特に「意向把握義務」と「情報提供義務」に今から戦々恐々としている中でも、そのビジネスモデルも収益力もまったく揺るぎそうにない。

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト 寺尾 淳

経済ジャーナリスト。1959年7月1日生まれ。同志社大学法学部卒。「週刊現代」「NEXT」「FORBES日本版」等の記者を経て、経済・経営に関する執筆活動を続けている。

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ソニーFHDは設立以来、赤字になったことがない

稼いで助けてくれるソニーの「孝行息子」

 ソニーの2015年3月期決算(米国基準)は2年連続の1,259億円の最終赤字で、上場以来初の無配に転落した。この期の売上高経常利益率は0.48%しかなく、最終赤字なのでROEはマイナス5.51%だった。直近の4年間でも最終利益が黒字だった決算期は2013年3月期しかなかった。

 しかし、ソニー生命、ソニー損保、ソニー銀行などが含まれる「金融事業」だけを取り出してみると、事業収入は1兆836億円で9.0%の増収、営業利益は1,933億円で13.5%の2ケタ増益と好調。業績の数字だけを見れば、まるで「掃きだめにツル」のような様相を呈した。

 金融事業の大半は連結金融子会社で東証1部上場のソニーフィナンシャルホールディングス(ソニーFHD)の傘下におさまっているが、この会社は設立以来、赤字になったことがなく堅実そのもの。2015年3月期決算(日本基準)は経常利益が前期比18.2%増、当期純利益が34.3%増と非常に好調だった。年間配当は直近4年間で20円、25円、30円、40円と順調に積み上がり、2016年3月期はさらに55円に伸びるという会社予想。ちなみにソニーの年間配当は「未定」である。

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ソニーフィナンシャルホールディングスの経常利益と当期純利益の推移

 ソニーFHDの前期の売上高経常利益率は6.66%、ROEはプラス10.72%で、業績がボロボロのソニー一家の「自慢の息子」。しかも昨年、ソニーが売却した本社ビルの土地を買い取って一家の火の車の台所を助けたという「孝行息子」でもある。

 もしソニーの中に貴重な収益源の金融事業がなかったら、公募増資などで約4,400億円規模の資金を調達し、中期経営計画で進めている業績の立て直しは、方向性は良くても、数字的にはままならなかっただろう。

ソニー生命のビジネスモデルの強みとは

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 ソニーFHDの経常収益は1兆3,523億円だが、その内訳はソニー生命が90.5%、ソニー損保が6.3%、ソニー銀行が2.8%を占め、経常利益ベースでも87%をソニー生命が稼ぎ出している。実態は9割がた「生命保険会社」である。

 そのソニー生命の前期の増収増益がソニーの金融事業の成長を支える形になったが、その要因としてソニーFHDもソニーも、保険料収入の増加と並んで「特別勘定における運用損益の改善」を挙げている。株高による運用益の増加が業績に貢献したわけで、この点について言えば前期に多額の運用益を出した他の生命保険会社と事情は変わらない。

 ソニーFHDは今期2016年3月期の業績について3.9%の減収、5.6%の経常減益、4.7%の最終増益を見込み、ソニー生命単体では4.6%の減収、5.4%の経常減益を見込んでいる。ソニーも金融事業の業績見通しとして事業収入は2.2%減、営業利益は9.4%減を見込んでいるが、これは運用損益をまったく考慮していない数字なので、来年3月までの株式などの市況の動き次第では増益に変わる可能性は十分にある。

 とはいえ、ソニー生命は同業の生保の一部のように、本業の保険料収入の不振を運用益でカバーするような経営体質ではない。保険料収入もしっかり得て、利益をあげている。

 前期2015年3月期の経常収益は1兆2,238億円、保険料等収入は9,140億円、資産運用収益は2,801億円で、保険料等収入が経常収益に占める割合は74.6%だった。これは前期、保険料等収入が伸びて日本生命を抜き生保業界でトップに立った第一生命の74.9%とほぼ肩を並べ、収益源のバランスが良い。

 一般の事業会社の「売上高経常利益率」に相当する経常利益の経常収益に占める割合で収益性をみると、第一生命の5.6%に対しソニー生命は6.5%で、業界最大手を堂々と上回っている。

 ソニー生命の支払い余力を示すソルベンシー・マージン比率は2555.0%で、第一生命の913.2%、日本生命の930.8%をしのぐ(2015年5月現在)。保険財務力や保険支払能力の格付けは、ムーディーズが「A1」、S&Pが「AA-」、国内機関のJCR(日本格付研究所)、R&I(格付投資情報センター)は「AA」。ちなみに第一生命の格付けはS&PもJCRもR&Iも「A+」で、ソニー生命に及ばない。

 ソニー生命の収益源のバランス、収益性、財務の健全性がこんなに良い理由は、ひとえにそのビジネスモデルに求められる。

【次ページ】保険業界が戦々恐々、改正保険業法とは?

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