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  • 2015/08/14 掲載

アドラー心理学とは何か? 基礎から理解する「人を勇気づける心理学」

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心理学者アルフレッド・アドラー(1870-1937)の学説がビジネスパーソンの間で注目される理由の一つは、それが「人を勇気づける心理学」だということです。過酷なビジネスの世界において敗者の立場に立たされ、人は劣等感を抱くことがあるでしょう。その劣等感こそが人の営みに大切なものである、とアドラー心理学は説いています。ただしそれが、正の方向に働くか、負の方向に働いてしまうのかが重要です。正の方向といっても、具体的には、どう捉えればよいのでしょうか。

作家 中野 明

作家 中野 明

1962年滋賀県生まれ。作家。立命館大学文学部哲学科卒。同志社大学非常勤講師。ビジネス、情報通信、歴史の3分野で精力的に執筆活動を展開。著書に『超図解 勇気の心理学 アルフレッド・アドラーが1時間でわかる本』(学研パブリッシング)、『ポケット図解 ピーター・ドラッカーの「自己実現論」がわかる本』(秀和システム)、『今日から即使える!ドラッカーのマネジメント思考』(朝日新聞出版社)、『悩める人の戦略的人生論』(祥伝社新書)など多数ある。近著は『アドラー 一歩踏み出す勇気』(SB新書)。

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劣等感に注目したアドラー

 アドラー心理学の生みの親であるアルフレッド・アドラーに対する注目が高まっています。アドラーは1870年、和暦で言えば明治3年にオーストリア=ハンガリー帝国で生まれました。のちにアメリカへ移住し、1937(昭和12)年に心臓発作で急逝します。

 アドラー心理学の特徴は「劣等感」に大いに着目した点です。

 そもそも人類は徒党を組みますが、これは他の動物に比較して体力的に劣るため、自分の生命を守るためにそのようにしたのだとアドラーは考えました。つまり肉体的劣等性に起因する劣等感が、人類に徒党を組ませる、言い換えると共同体を形成させる原動力になった、とアドラーは言うわけです。

 また、他人と仲間になるにはコミュニケーションが欠かせません。加えて、共同体を維持するのにもコミュニケーションが不可欠です。こうして人類はコミュニケーション・ツールとしての言語を開発しました。ですから、言語も人間の劣等性に起因する、言い換えると劣等感を補償するために作られたものと言えるわけです。

 それから、いつかは死ぬことを悟った人類は、「永遠」に対立する「死」から派生する劣等感を補償するために、宗教や哲学を生みます。音楽や芸術といった美を追求する活動も、不完全な人間存在に対する補償活動と考えることもできるでしょう。

 さらに、人間の共同生活によって成立する共同体は、やがてその規模が大きくなります。現代の我々はこの共同体のことを社会と呼んでいます。よって、この社会自体も人間の劣等感が作り出した産物(!)ということになります。

劣等感パワーの向かう方向

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 このようにアドラーは、人間のあらゆる営みの背景に劣等感が横たわっていると考えました。実際アドラーは「人間であることは劣等感を持つことである」と述べたほどです。だからアドラー心理学は「劣等感の心理学」とも呼ばれるわけです。

 ただ、人間活動の原動力とも言えるこの劣等感が持つ強力なパワーを、我々は正の方向ではなく負の方向に向ける場合がよくあります。たとえば、腕力に自信がない人が集団を組んで暴力行為を働くのは、劣等感が負の方向に働いた典型です。あるいは他人から重要人物と見られたい人は、大きな借金をしてでも高級な自動車に乗るかもしれません。これも劣等感が負の方向に働いた典型です。

 では、劣等感のパワーを注入すべき正の方向とは──?

【次ページ】 答えはシンプル、正の方向とはつまり

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