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  • 2016/05/19

「ハロー効果」と「ピーターの法則」で解説、出世した有能な人が無能になるメカニズム

ビジネスパーソンには成果が求められる。そんな当たり前のことを憂いている人は多いのではないだろうか。人事評価に成果主義を採用する企業は多いが、バイアスによる客観性を欠いた評価は、有能な人材を無能にしてしまう危険性がある。なぜ、有能な人材が無能になってしまうのか。そのメカニズムを、「ハロー効果」と「ピーターの法則」で解説。さらに、実際の事例をもとに、専門家のアドバイスを紹介する。

中森 勇人

中森 勇人


中森勇人(なかもりゆうと)
経済ジャーナリスト・作家/ 三重県知事関東地区サポーター。1964年神戸生まれ。大手金属メーカーに勤務の傍らジャーナリストとして出版執筆を行う。独立後は関西商法の研究を重ね、新聞雑誌、TVなどで独自の意見を発信する。
著書に『SEとして生き抜くワザ』(日本能率協会)、『関西商魂』(SBクリエイティブ)、『選客商売』(TWJ)、心が折れそうなビジネスマンが読む本 (ソフトバンク新書)などがある。
TKC「戦略経営者」、日刊ゲンダイ(ビジネス面)、東京スポーツ(サラリーマン特集)などレギュラー連載多数。儲かるビジネスをテーマに全国で講演活動を展開中。近著は「アイデアは∞関西商法に学ぶ商売繁盛のヒント(TKC出版)。

公式サイト  http://www002.upp.so-net.ne.jp/u_nakamori/

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なぜ有能な人は出世すると無能になるのか

客観的な人事評価の難しさ

 少々古いデータだが、平成16年度の厚生労働省の就労条件総合調査によれば、従業員1000人以上の企業のうち83%が人事評価における成果主義の導入について「個人業績を賃金に反映させる」と回答している。企業規模が小さくなるにつれて割合は下がってくるものの、30~99人の企業でも約半数が、全体でも53%がなんらかの成果主義を導入している。10年以上経過した現在は、成果主義を採用する企業はさらに増えているだろう。

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個人業績を賃金に反映させる企業の割合

 そもそも、なぜ人事評価に成果主義が採用されているのか。成果主義のメリットは、定期的な査定が行われることによって労働意欲の向上が見込めること、責任を明確化できることなどが挙げられる。

 一方、成果主義には問題点もある。独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の調査によると、「成果の測定が困難な部署がある」は「そう思う」あるいは「どちらかと言えばそう思う」の合計が約8割と高く、客観的な評価の難しさを露呈している。

 また、「評価者により従業員の評価にばらつき」は7割以上にのぼり、いわゆる評価が上司次第という状況も問題視されている。つまり、査定者である上司の主観が頼りになる傾向が強く、好き嫌いによる「バイアス」が評価を左右しかねない可能性があるのだ。

組織を危険に陥れるハロー効果のバイアス

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 人事評価のエラーを示すものとして、「ハロー効果」と呼ばれる認知バイアスがある。これは、評価対象について別の顕著な特徴が影響して評価がゆがめられるという現象だ。

 例えば、学歴やスポーツに優れている、字がうまい、人格的に優れているという思い込みなど、成果とは別の要素がバイアスとなり、評価対象への成果が上乗せされるのだという。これはポジティブな方向だけでなく、無口や不愛想、付き合いが悪いなどが災いし、ネガティブな効果をもたらすこともある。

 このハロー効果による出世で能力以上の評価を受けてしまい、自らの限界値を思い知ったビジネスパーソンの例を紹介する。

 流通業界で働く40代、Aさんのケースを紹介する。30代のころは小さな支店を任され、自らも第一線で陣頭指揮をとっていたAさんは、数年後には係長に昇進し、40歳になると課長の内示を受け、本社勤務を言い渡される。

 しかしAさんは、「正直喜べませんでした。空調の利いた部屋でパソコンを叩くなんて性に合っていませんから」とため息混じり。しばらくするとAさんの予感は的中。思うように成績が上がらず、本社の生え抜きにはかなわないと精神的にもキツい毎日が続く。そしてある決断に至る。

 「いずれ降格か地方に戻されるのなら自ら希望しよう」と元いた支店への異動願を提出。同時に主任に戻して欲しいと申し入れた。前代未聞のことに周囲は「もったいない」と引き留めたが、全く耳を貸さずに出世レースから降りたのだという。

 支店に戻ったAさんは「やっぱり汗をかくのが性に合っています。何より元気じゃないといい仕事はできませんから」と生き生きした表情。一方、本社ではリーマンショックや震災などの影響で早期退職者の募集を始め、降格人事も当たり前。Aさんの支店には本社の部長経験者が部下として赴任してくる始末。早めに自らの限界値を感じ、行動を起こしたAさんは本社のゴタゴタとは無縁の職場で日々の業務をマイペースでこなしている。途中で気づき、降格を申し出たからよかったものの、そのままの地位に居続けたら過度のストレスから鬱病になるなど、本人だけでなく、企業にとっても不幸な結果になったかもしれない。

有能な人が無能になるメカニズムとは

 現実の社会で起こる成果主義のエラーを説明するもので有名なのが「ピーターの法則」だ。1969年、南カリフォルニア大学教授の教育学者ローレンス・J・ピーターにより提唱されたこの法則は組織構成員の労働に関する社会学の法則で、以下の3点に要約される。

(1)能力主義の階層社会では人は能力の限界まで出世し、有能なスタッフは無能な管理職になる
(2)時が経つにつれ無能な人はその地位に落ち着き、有能な人は無能な管理職の地位に落ち着く。その結果、各階層は無能な人で埋め尽くされる
(3)ゆえに組織の仕事は、出世余地のある無能レベルに達していない人によって遂行される

 限界まで出世することで有能なビジネスパーソンが無能になってしまうというのは、かなり衝撃的な内容だ。しかし、階層社会においては往々にして起こり得ること。「うちの上司ってほんと使えないよね」や「前は優秀だったのに出世をしたらボンクラになった」といった会話が日常茶飯事なのもうなづける。

 そして、すべての組織人は各階層で有能であれば昇進を繰り返すため、昇進後の地位で限界が来ればそれ以上は昇格しない。つまり、「無能レベル」にまで昇進して、やがてそこで地位を留めるということになる。 結果、組織のあらゆる地位は、職務を果たせない無能な人間で占められるということになってしまう。

 人は昇進を続けてやがて「無能」となるが、必ずしも高い地位の仕事がより難しいというわけではない。ただ、要求されるスキルを持ちあわせていないだけのこと。Aさんのケースがまさしくこれに当てはまる。スキルに見合わない地位を維持する人が増えれば、やがて組織は無能化していき機能不全に陥るだろう。

 これらの現象を突き詰めれば組織の仕事を実際に遂行しているのは昇進前の「まだ無能レベルに達していない人」たちということになる。よって昇進を控える人が少なくなればなるほど、組織の仕事の遂行能力が低下すると、ピーターの法則は結論付けている。

【次ページ】成果主義を成功させるには昇進より昇給!

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