• 会員限定
  • 2017/04/19 掲載

ドローンの農業活用メリットはどこにあるのか? ドローン・ジャパン春原久徳氏が解説

  • icon-mail
  • icon-print
  • icon-hatena
  • icon-line
  • icon-close-snsbtns
記事をお気に入りリストに登録することができます。
日本の農業現場では、就農者の高齢化や就農人口の減少が問題となっている。そんな中で、農地面積の増加に伴う効率化や、経験が浅い就農者のための営農伝達の手段が求められている。今後、農業の産業化を推進していくためには、農業の情報化も避けて通れない道だ。その課題を解決するために、最先端のドローンを組み合わせた農業の取り組みが注目を浴びている。しかし、農業のドローン活用に本当にメリットはあるのか。ドローン・ジャパンの会長 春原久徳氏が「ドローン×農業」の現在と未来について解説した。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

photo
ドロ―ン・ジャパン 取締役会長
セキュアドローン協議会 会長
ドローンコミュニティ「ドローンクラスター」主宰
春原 久徳氏

ドローンx農業でできることとは?

関連記事
 国内におけるドローンビジネスの市場規模は、2016年に353億円と推定され、前年比102%増となっている。これが、さらに2017年には533億円になり、2022年までに2000億を超えるものと予測されている(インプレス総合研究所調べ)。このうち、かなりの部分で農業関連のビジネスも伸びていく見込みだ。

 では、今後増加していく農業分野でのドローン活用には、どのようなものがあるのだろうか?

 まず、鳥の目で圃場を観察したり、アグリツーリズムを進めていくことが挙げられるだろう。

「茶の等級は、茶畑で摘む時期によって変わってきます。ドローンで空撮し、農業の知見がある方が、その色合いをみると、どこを摘めばよいのかを判断でき、茶の等級が上がって収入も増える。これはシンプルな見回りの使い方ですが、大変役立つ事例です。またアグリツーリズムは、美しい棚田や田園風景を観光スポットとして扱い、インバウンドの呼び込みに活用できるでしょう」(春原氏)

ドローンは農薬散布コストを下げられるのか?

 ドローンによって種・農薬・肥料を運んで散布することも可能だ。また、空中でのデジタルスキャニングによって、植生のリモートセンシングや精密農業につなげられる。

 空からの農薬散布は、ヤマハの産業用無人ヘリコプターに代表されるように、以前から用いられてきた手段だ。国内の稲作の圃場面積は約150万ha(平成26年度)と言われているが、そのうち50万haは無人ヘリコプターでカバーしている。特に大規模農場が多い北海道や北陸で無人ヘリコプターによる散布が進んでいる。

「無人ヘリコプターは1990年代後半からジャイロを搭載し、安定した飛行も可能になりましたが、価格が1000万円以上と高価だったため、普及に限界がありました。したがって、残りの100万haは、まだ農薬の空中散布が進んでいません。そんな中で、農薬散布用のドローンが注目を浴びています」(春原氏)

 ドローンの場合、従来の無人ヘリコプターと比べて、大規模農場以外での活用や、機体コストの安さ、操作性などでメリットがある。一方で、安全性の強化や、農薬散布時の飛散(ドリフト)をどうするか、といった課題もあった。

「しかし、昨年から農林水産省が農薬散布用ドローンの運行基準やルールを決め、ドローンによる農薬散布が本格的に動き出しています。ルールについては、同省の外郭団体である農林水産航空協会(農水協)が管理し、農薬散布の機体申請・機体登録・オペレータ免許が求められるようになりました」(春原氏)

DJI、エンルートも農業用ドローンを展開

 これを受けて、各メーカーでも、申請を受けた農薬散布用ドローンを続々と市場に投入している。たとえば、国内大手のエンルートは、小型ドローン「Zion AC940」を発売。5Lの農薬タンクを搭載し、低騒音、GPS、容易な操作性などの特徴を有する農薬散布専用ドローンだ。

画像
国内大手のエンルートが販売する「Zion AC940」。国による認可済の農薬散布用ドローンだ。

 また世界的に有名なDJIは、農薬散布用の「Agras MG-1」の日本での販売を3月から開始。コンパクトに折りたためる構造で、10kgの液体を搭載でき、最新のDJI A3フライトコントローラーや飛行中の信頼性を高めるレーダー認識システムにより、cm単位で地形をスキャンできる。現在、国内での販売体制を整備しながら、展開しているところだ。

画像
最大手のDJIも満を持して農業用ドローン分野に参入。「Agras MG-1」は10kgの大容量タンクを搭載。

「これらの機体には自動航行機能も付いているが、まだ国が許可をしていません。位置の誤差が出ると、隣接する圃場に農薬を散布してしまうリスクもあります。そこで慎重に検討してますが、来年ぐらいには自動航行への流れが起きるでしょう。そうなると作業用としてのドローンが、さらにワンステップ進むでしょう」(春原氏)

【次ページ】ドローンの農業活用メリットはどこにあるのか?

関連タグ

関連コンテンツ

あなたの投稿

    PR

    PR

    PR

処理に失敗しました

人気のタグ

投稿したコメントを
削除しますか?

あなたの投稿コメント編集

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

通報

このコメントについて、
問題の詳細をお知らせください。

ビジネス+ITルール違反についてはこちらをご覧ください。

通報

報告が完了しました

コメントを投稿することにより自身の基本情報
本メディアサイトに公開されます

必要な会員情報が不足しています。

必要な会員情報をすべてご登録いただくまでは、以下のサービスがご利用いただけません。

  • 記事閲覧数の制限なし

  • [お気に入り]ボタンでの記事取り置き

  • タグフォロー

  • おすすめコンテンツの表示

詳細情報を入力して
会員限定機能を使いこなしましょう!

詳細はこちら 詳細情報の入力へ進む
報告が完了しました

」さんのブロックを解除しますか?

ブロックを解除するとお互いにフォローすることができるようになります。

ブロック

さんはあなたをフォローしたりあなたのコメントにいいねできなくなります。また、さんからの通知は表示されなくなります。

さんをブロックしますか?

ブロック

ブロックが完了しました

ブロック解除

ブロック解除が完了しました

機能制限のお知らせ

現在、コメントの違反報告があったため一部機能が利用できなくなっています。

そのため、この機能はご利用いただけません。
詳しくはこちらにお問い合わせください。

ユーザーをフォローすることにより自身の基本情報
お相手に公開されます