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- 2017/05/26 掲載
新・満員電車対策? なぜ東急電鉄がシェアオフィス事業「NewWork」を始めたのか
「社内起業家育成制度」でハードルを乗り越え事業化
──東急電鉄とシェアオフィス、一見あまりつながりがなさそうに思えるのですが、事業を思いついたきっかけについて教えてください。永塚氏:私は2006年に中途で入社して以来、不動産事業に携わり、オフィスビルの営業を担当していました。訪問するお客さまの中には会社の成長に伴い、ひんぱんに引っ越しをされていたり、新たな社員を受け入れるために分室を設置するという企業もたくさんありました。
成長のスピードが速い企業にとっては、従来の賃貸オフィスのやり方ではご満足いただけないかもしれないと考えたとき、それがヒントとなり、シェアオフィス事業を思いつきました。そして「シェアオフィスがあれば使いますか」という話をしてみると、「そういうものがあればぜひ!」という反応が多かったのです。そこでさらに肉付けをして、弊社内で新規事業創出を支援する『社内起業家育成制度』に提案しました。
──そして始まった「NewWork」が、社内起業家育成制度の第1号案件だと聞きました。これはどのような制度なのでしょうか?
永塚氏:事業を創造する意欲・能力を有する社員を支援し、広くフロンティア・スピリットを喚起することで新規事業創出のスピードアップを図り、当社グループの持続的成長を果たすために2015年4月に創設された制度です。年齢や職責など問われることなく、社内全員が同制度に応募できます。
東急電鉄が今この事業を進める狙い
──では、具体的に「NewWork」についてお聞きしたいと思います。簡単に言うと、どのようなサービスでしょうか?永塚氏:「NewWork」は、日本全国で利用可能なシェアオフィスネットワークです。サテライトオフィスとシェアオフィスを併せたような形態になるため、「サテライトシェアオフィス」と我々は呼んでいます。完全会員制を採用しており、会員企業の従業員には専用のICカードを配布して、入退室の管理を行いますので、会員以外の部外者が侵入することはありません。
全国に約60か所ある店舗は、いずれも駅近くに位置しています。もちろん、会員の方はすべての店舗を利用可能です。フリーアドレス型の席だけでなく、会議室やテレフォンブースも用意していますので、ある程度機密性の高い仕事もカバーできる形です。各席のコンセントやWi-Fi環境、複合機などビジネスで必要な環境は一通り揃えています。
──シェアオフィスで仕事をするという働き方は、まだあまり一般的ではないと思いますが、東急電鉄が今この事業を進める狙いについて教えてください。
永塚氏:子育てや介護で、毎日会社に来られない人もいますし、またICT環境の発達、モバイルPCやスマートフォンの普及などにより、働き方の多様化も進んでいます。そこで出勤勤務と在宅勤務の間に「中間の働き方」の環境を用意し、日本全国どこでも働けるようにすれば、必ず喜んでいただけると思いました。
そしてもう1つの狙いは、鉄道事業者として弊社が抱える「満員電車を解消したい」という課題も解決できるのでは、という点です。混雑する朝の時間帯は、自宅の最寄り駅にある「NewWork」で仕事をして、11時頃にゆったりと出社する──といった働き方が増えていけば、今よりもずっと緩和されるはずです。
永塚氏:まずは、お客さまを法人に絞っています。第二に、今まで単店で展開していたシェアオフィスと連携し、全国で使えるようにしているところです。「どこでも使える」ことは、このサービスの最大の強みだと思っています。現在、多店舗を運営するシェアオフィスサービスは3社ほどありますが、競合他社も含め、この市場を盛り上げていくことができればと思っています。
──他のシェアオフィスは月額制を採用しているところも多い中で、貴社サービスは月額制(定額制)に加えて従量制も用意していますね。
永塚氏:料金体系は2種類用意していますが、実際には従量制プランを採用している企業がほとんどですね。従量制プランの場合、月額5000円で、月間8時間まで無料で使えます。それを超えると1時間あたり500円課金となります。
──使用する前に、予約は必要でしょうか?
永塚氏:予約は必要ありません。専用のICカードを持って施設にお越しいただくだけで大丈夫です。専用のICカード以外にも、FeliCaが搭載された社員証であれば利用できるようにしています。このようなICカードで入退室をすることで、Web上で入退館履歴を管理することが可能となっています。法人のお客さまにとっては、こうした「働いた記録」がきちんと取れることも重要で、当サービスの特徴です。
【次ページ】 なぜ使われないのか? 利用率を高めるために必要なこと
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